Helck(ヘルク)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『Helck』(ヘルク)とは、明るい笑顔と共に「人類殲滅」を唱える勇者と、それを不審に思って見張り続ける魔王軍の幹部のハチャメチャで壮大な旅路を描いた七尾ナナキの漫画作品。アマチュアで活躍していた七尾のプロデビュー作品であり、様々な漫画賞を獲得している。
魔王トールが勇者に倒され、再編を急ぐ魔王軍は、次なる魔王を決めるための大会を開催。ここに人間の勇者ヘルクが現れたことで、大会責任者のヴァミリオは仰天する。ヘルクは大会予選を余裕で突破しつつ「人間が憎い」と語り、警戒するヴァミリオを困惑させる。

かくして魔界にやってきたヘルクは、行き倒れ寸前だったところを魔族の青年に助けられ、気力と体力を回復。勇者化した人間たちが魔界に侵攻してくることを見越して、それに備えるためにアズドラに会おう、それだけの立場を手に入れようと次期魔王を決めるための大会に参加したのだった。
全てを聞き終えたヴァミリオは、ヘルクが仲間や母国だけでなく魔界の民をも守ろうとしていることに気付き、自身もまた彼の力になりたいと感じていることを知る。頼まれた通りに勇者殺しの剣を受け取る一方、ヴァミリオは自身の正体も明かし、「死ぬために戦うな、生きるために戦え」とヘルクに要求。ヘルクはこれを承諾し、ピウイも交えて2人と1匹はようやくにして真の仲間となる。

そんな折、アズドラの放った使者が一行の下へと来訪。「人間の王を討つ」と決意したアズドラは、「自身の率いる魔族の本隊はこのまま魔界で勇者兵を迎え撃ち、これを陽動として人間たちの世界にいるヘルクとヴァミリオによる奇襲によって事を成す」との策を立てていた。

ミカロスの正体

魔界に人間たちの軍を誘い込み、ここでしぶとく防衛線を展開しつつ、これ自体を囮としてヘルクとヴァミリオに王を倒させる。これがアズドラの策だった。少しでも作戦を有利に進めるため、アズドラは人間界にも密偵を放っており、その1人であるアスタが王城内部に潜入。そこで囚われていたシャルアミと出会い、「どうしてこの子だけ勇者化していないのか」と首を傾げる。
一方、魔界の戦況は少しずつ魔族側が押されつつあった。何度倒されても蘇り、そのたびに強くなっていく翼ある兵士たちの力が、魔族に迫り始めたのである。この機に乗じて攻め込んできたミカロスを討ち取るべく、アズドラは自ら彼を迎撃。「この男こそが一連の事件の首謀者か、あるいはそれに近い立ち位置にいる」とのアズドラの見立ては正しく、ミカロスは己の過去を語り始める。

ミカロスは1500年以上前に魔界に攻め込んだ人間の軍勢の兵士で、当時のアズドラによって部隊が壊滅される中、死んだふりをしてひたすら生き延びた男だった。この際ミカロスは魔界の毒に侵され、奇跡的にこれに順応して超常の力を得たのである。かつて味わわされた屈辱を返す好機と言い放ち、ミカロスはアズドラに襲い掛かる。
2人の戦いはアズドラが優位に展開するが、これ自体がミカロスの罠だった。魔族側の指揮官であるアズドラの注意を自分に集めたところで、ミカロスは翼の兵士たちを一気に暴走させ、新世界生物に匹敵する怪物を量産。翼の兵士たちの中には自我を取り戻しつつある者もいたが、この事態を予期していたミカロスに精神を破壊されて傀儡と化す。友軍をこうまであっさり使い捨てにするとまでは読めなかったアズドラは、「このままでは負ける」と判断して魔族たちを逃がすために単身戦場に残り、ついには倒れる。

ラファエドとの対決

アズドラが倒れたことで、魔族と人間の戦いは後者が一気に攻勢を強めていた。魔族たちの前線拠点の1つも襲撃され、大きな被害が出る。この近くにいたヘルクとヴァミリオは、ピウイを残して救援に駆け付ける。
しかし、実はこの襲撃はヘルクを誘い出すためのラファエドの罠だった。ラファエドは「仲間の人間たちを失ったヘルクは再起できないだろう」と考えていたが、彼が魔界で新たな仲間を得て再び立ち向かってきたことに驚き、最大の脅威である彼を今度こそ排除しようとしていた。ヘルク自体を倒すことは難しいが、彼が信頼を寄せるヴァミリオを殺せば今度こそ暴走して自滅するというのがラファエドの見立てだった。

ヴァミリオは「私はお前ごときにやられるほど弱くない」と奮起し、ラファエドを相手に優位に立ち回る。ならばとラファエドはプランBを発動、かつてアリシアだった翼の兵士にヘルクを急襲させる。「ヘルクにアリシアを殺させて、その悲しみと絶望で彼を暴走させるのがラファエドの狙いだ」とヴァミリオは気付くが、彼女を殺す決意を固めているヘルクを見て己の失策に気付く。ヘルクは今も心の奥底で仲間たちを救うことを諦め切れておらず、戦友として彼と共に戦うのであれば、「人間を倒そう」ではなく「人間を救おう」と声をかけるべきだったのだ。
「今からでもそれは遅くない」と考えたヴァミリオは、ヘルクやラファエドの前で堂々と「人間を救う」と宣言。自身の成すべきことを見付けて吹っ切れ、大暴れしてラファエドたちを退ける。その後一行は魔族側の拠点へと移動し、しぶとく生き延びていたアズドラや次期魔王決定戦で力を競った面々と再会。人間たちを救うための反転攻勢の準備を整える。

『Helck』(ヘルク)の登場人物・キャラクター

主要人物

ヘルク

CV:小西克幸

人間の勇者。筋骨隆々の偉丈夫で、どのような困難も力業で突破する高潔で誇り高い人物。戦闘レベルは99で、「人間の寿命でそのレベルに達するとは」とヴァミリオを驚かせている。
「人間が憎い、人間を滅ぼそう」と語りながら次期魔王を決める大会に参加し、責任者であるヴァミリオを大いに困惑させる。

ヴァミリオ/アン

CV:小松未可子

魔族の帝国の四天王の1人。次期魔王を決める大会の責任者でもあり、「人間の勇者であるヘルクが参加した」と聞いて仰天。あの手この手でヘルクを脱落させようとする一方、彼の目的と正体を探る。その流れで素性を隠してヘルクに同行することとなり、彼に対しては本名の“ヴァミリオ”を隠したまま「自分は大会運営の“アン”だ」と名乗る。
戦闘レベルは78で、強力な炎を操る力を持つ。本人にその意識は薄いがツッコミの名手で、怒りが頂点に達すると周囲に爆炎を撒き散らす。「ちゃん」付けで呼ばれることを嫌う。柑橘系のジュースが好きで、普段はこればかり飲んでいる。

ピウイ

CV:井澤詩織

ヘルクとヴァミリオが転移して辿り着いた絶海の孤島で暮らす鳥のような生き物。純粋で好奇心旺盛、失言することもあるが物事を深く考えないだけで悪意はない。
島で暮らす魔女の手伝いをしており、「島の外を見てみたい」との想いから人間の国のある大陸への帰還を目指すヘルクたちに勝手に同行する。

魔族

アズドラ

CV:松岡禎丞

魔族の帝国四天王の1人。戦闘レベルは73で、魔法の知識に長ける。見た目の幼いヴァミリオのことをかわいがっているが、彼女からは嫌われている。
本来は彼が次期魔王を決める大会の責任者だったが、直前に瀕死の重傷を負ったためヴァミリオにその役目を任せることとなった。

ケンロス

CV:吉野裕行

帝国最速を自称する魔族の青年。戦闘レベル38。魔次期魔王を決める大会に参加し、優秀な成績を収める一方、優勝候補のヘルクと親しく交流する。
実はヘルクが魔族の世界に来た時に最初に出会った人物で、大会で顔を合わせる以前から交流があった。

ヒュラ

YAMAKUZIRA
YAMAKUZIRA
@YAMAKUZIRA

目次 - Contents