隣のあたし(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『隣のあたし』とは『別冊フレンド』(講談社)で連載された南波あつこの漫画。幼馴染同士の恋愛模様を描いた青春ラブストーリーである。中学3年生の上村仁菜は、隣に住む1つ年上の橘京介に憧れを持っており「いつか彼女になりたい」と夢見ている。互いの想いがすれ違いながらも、嫉妬や葛藤を繰り返しそれぞれが恋をしていく。感情を抑えられない登場人物の真っ直ぐな姿に好感を持つ読者が多い。また、最後の最後まで結末が分からない展開が人気を呼んでいる。

『隣のあたし』の概要

『隣のあたし』とは、『別冊フレンド』(講談社)で、2009年1月号から2012年3月号まで連載された南波あつこの作品。単行本は全10巻で完結している。南波あつこは、『バランス』で第16回BF新人まんが大賞佳作を受賞し、『太陽は君に輝く』で初連載デビューを果たした。その後は映画化やドラマ化もされた『先輩と彼女』『スプラウト』『表参道高校合唱部!』『青夏 Ao-Natsu』など数多くの名作を残しており、愛嬌あるイラストで人気が高い。
中学3年生の上村仁菜(うえむらにな)は、隣に住む幼馴染で1つ年上の橘京介(たちばなきょうすけ)に憧れを抱いており、彼女になる日を夢見ている。しかし、京介は別の女性と付き合うことになった。仁菜は「兄弟みたいなやつなんで」と言われたことで、振られてしまったと悲しくなる。そんな中で、仁菜のことを想い「好き」と伝えてくれた同級生の三宅瞬(みやけしゅん)の優しさに心を動かされていく。京介のことを忘れられない仁菜だが、三宅の真っ直ぐに自分と向き合ってくれる優しさから付き合うこととなる。そんな仁菜の幸せそうな姿を見て、自分のことを想ってくれていた可愛い幼馴染がどんどん離れていく寂しさと嫉妬を感じる京介。次第に仁菜のことが気になり始める。お互いすれ違っている気持ちが同じ方に向いていくのか、先の気になる展開は多くの読者の心を掴んだ。

『隣のあたし』のあらすじ・ストーリー

仁菜の失恋と三宅からの告白

中学3年生の主人公である上村仁菜(うえむらにな)は隣に住む1つ年上の橘京介(たちばなきょうすけ)に恋をしている。学校まで一緒に行くなど、仲の良い2人であり、仁菜は京介の彼女になることを夢見ている。そんな中で、京介は高校に進学し、野球部に入る。野球部の仲間と仲良くなる中で、次第にマネージャーの麻生結衣子(あそうゆいこ)が特別な存在となり、付き合うようになった。京介が結衣子を見送りに行っている時に、2人がキスしている姿を仁菜は見てしまう。落ち込む仁菜は、気持ちを切り替えることが出来ずにいた。そして、思い切って京介に想いを伝えることを決意したが、「そういう対象に見れない」と振られてしまう。振られた後も、京介は優しく接してくれるので諦めきれない仁菜である。彼女である結衣子は、そんな京介の姿に嫉妬と苛立ちを隠せない。ある時結衣子は、仁菜が同級生の三宅瞬(みやけしゅん)と仲良く歩いている姿を見る。仁菜と三宅が仲良く過ごしている姿を見たら、仁菜に優しくすることを控えるだろうと考え、京介を連れ出した。結衣子が京介を仁菜と三宅の前に連れてきて話をしていると、突然、三宅が「俺、上村のこと好きなんだけど」と仁菜に告白した。そこから三宅を意識しだす仁菜。同じクラスということもあり、接し方が分からない様子であったが、三宅に誘われクラスの仲間と共に高校の文化祭に行くこととなる。クラスの仲間は三宅の想いを知っているため、2人を残して先に帰ってしまった。その帰りに、三宅は再度「俺と付き合ってください」と告白するが、京介のことが忘れられない仁菜は断る。しかし、「最初で最後でいいから一緒に遊びに行きたい」という三宅の希望だけは受け入れることとなった。

三宅と仁菜の交際スタート

三宅のノートを持って帰ってしまった仁菜は、そのノートに「元気ない」という言葉と共に描かれていた自分の後ろ姿を見つけた。ずっと自分のことを気にしてくれた三宅に対して特別な想いを抱くようになる。そして二人は、色々なスポーツが楽しめる場所へ初めてのデートに訪れた。球技大会の時、仁菜はソフトを選んで京介に教えてもらっていたが、それを見て「バスケを選んでたら自分が教えられてたのに」と三宅が悔しがっていたのだ。そのことを知った仁菜は三宅のことを愛しく想い、デートでバスケをすることを提案した。三宅への想いは強くなり、最初で最後のデートという約束は、仁菜が自ら断ち切った。京介のことを忘れた訳ではないが、三宅を離したくないと感じた仁菜はストレートにこの想いを伝える。三宅は、「今すぐに吹っ切れなくてもいいから俺といてほしい」と伝え、交際がスタートする。仁菜が三宅を家に招いた帰りに、2人は初めてキスをする。その後、顔を赤らめている仁菜の姿を見た京介は、いつも隣にいた存在が無くなっていくと感じる。彼女の結衣子が家に来るが、京介の頭の中は仁菜でいっぱいのため、誘いを拒否する。京介の気持ちが、結衣子から仁菜に移っていたのだ。それとは逆に、京介のことを想いながらも三宅の優しさにどんどん惹かれていく仁菜。三宅の気持ちに寄り添うために、京介には自分から会いに行かないことを伝える。

クリスマスの夜

クリスマスの夜は、三宅から「家に来てほしい」と誘われている仁菜。プレゼント選びをして、楽しみにしていた。そんな姿を知った京介は、平穏ではいられなくなり、彼女の結衣子に対しても動揺を隠せずにいた。ついに、結衣子には仁菜が好きなことを伝え、別れ話をする。クリスマスの日、仁菜は三宅の家に行く前に、京介が高熱で倒れているのを発見する。結衣子に助けを求めるが、2人の関係はすでに終わっていたため、断られてしまう。高熱の京介をほっておけない仁菜は、三宅に京介の看病をしないといけないことを伝えた。「行っといで」と三宅は送り出すが、複雑な心境である。クリスマスの翌日には、すっかり熱が下がり、京介は看病してくれた仁菜を思い切り抱きしめる。

三宅との別れ

クリスマスが一緒に出来なくて、再度やり直しを提案する三宅。仁菜と以前初デートで行ったアミューズメントパークに彼女を誘う。楽しい時間を過ごすが、三宅は仁菜を抱きしめながら別れを告げる。別れを告げたのは、仁菜の気持ちが京介の方に傾いていることを感じたからである。京介に惹かれる仁菜を見るのは辛すぎて、大好きな仁菜との別れを決意するのである。仁菜は悲しみを隠しきれずに、三宅を傷つけていたことを後悔して泣く。そんな仁菜に想いを伝えようとする京介だが、仁菜が言葉を遮り告白は出来なかった。

仁菜の決意とその後

受験シーズンとなり、京介と同じ高校を受けることを決めた仁菜。京介に勉強を教えてもらいながら日々努力していたが、三宅との関係はギクシャクしたままで、やるせない気持ちを抱えていた。ある日、初詣で行った神社の絵馬に仁菜のイラスト付きで「ずっと笑っていますように」と三宅が書いたものを発見した。それを見た仁菜は、涙を浮かべる。京介との関係を断ち切って、三宅に行くことを決意する。京介にその想いを伝えると、笑って「ずっと好きだった」と優しく抱きしめ、京介とは、再び「兄弟みたいな関係」に戻ることとなった。そして、終業式に三宅を追いかけて「こんな私を笑わせてくれたのも三宅君だった」と全力で今の気持ちを伝える。「もう1回つきあってほしい」と懇願し、それを聞いた三宅は、「俺に笑ってくれるのが一番いい」と仁菜への想いは変わらず再び付き合う。三宅は仁菜とは、別々の高校に進学するが、「瞬くん」「仁菜」と名前で呼び合いながら、いつまでも2人は隣にいるのである。

『隣のあたし』の登場人物・キャラクター

主要人物

上村仁菜(うえむらにな)

本作の主人公で中学3年生の一人っ子。感情を全面に出す、元気で明るい愛されるキャラクターである。隣に住む京介のことが大好きで「いつか彼女になりたい」と夢見ているほどである。家族同士も仲が良く、一緒にご飯を食べることもある。京介の弟の橘圭介(たちばなけいすけ)とも仲が良く、小学生ながらも可愛い彼女がいるので、「師匠」と呼んで恋愛について教えてもらっている。京介のことが大好きで告白したが、振られてしまう。その時に、同級生の三宅が元気がない仁菜に優しくし、励ましてくれたことから次第に三宅に心を惹かれ、付き合うこととなる。京介を忘れられないまま三宅と付き合った仁菜は、二人の間で気持ちが激しく揺れる。そんな中で、最後は三宅を選び、高校生になって「瞬」と呼び合うほど仲の良い関係となっている。

三宅瞬(みやけしゅん)

仁菜のことが大好きで、京介に片想い中でも側で励ましたり、応援している。京介の前で堂々と告白する度胸もある。周囲の人たちを気遣うことができる性格で、人望が厚く友達も多い。バスケ部に所属しており、京介に対戦を挑むほどの負けず嫌いである。野球部で運動神経抜群の京介にバスケで対戦を挑むシーンでは、バスケでは何としても勝ちたいという想いと、仁菜を渡したくないという三宅の強い気持ちが現れている。仁菜と付き合うようになったが、京介に気持ちが傾いていることで通じ合えないと感じ、一度別れてしまう。その後、仁菜が「京介より三宅が好き」という気持ちをはっきりさせたことで、2人は再び付き合うようになる。

橘京介(たちばなきょうすけ)

仁菜のマンションの隣に住んでいる一つ年上の幼馴染み。弟の圭介とは仲が良く、学校でもモテる。野球部でレギュラーとして活躍しており、県大会の決勝まで進んでいる。ポジションはセンター。マネージャーである結衣子が、元野球部の先輩である久米川瑛児(くめかわえいじ)に冷たくされて、傷ついている姿を無視することができず、相談に乗っているうちに、だんだんと惹かれていった。しかし、三宅と付き合い始めた仁菜の見たことない姿を見るたびに、想いを膨らませていき、仁菜に告白するも最後は振られてしまう。仁菜が自分の想いを伝えられるようにするため、自転車で三宅の元へ連れていくという男気溢れる場面も見られる。仁菜とはその後、「隣に住む仲の良い女の子」として関係を続けていくこととなる。

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