コタローは1人暮らしとは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『コタローは1人暮らし』とは、アパートで1人暮らしを始めた4歳の少年さとうコタローとその周囲の人々の交流を描いた作品。津村マミによる漫画を原作に、ドラマやアニメなどメディアミックスを果たしている。
マンガ家の狩野進が暮らすアパートに、ある日さとうコタローという4歳の男の子が引っ越してくる。コタローが1人暮らしをしていることに気付いた狩野は、さすがに放っておけずにそれとなく彼を見守るようになっていく。アパートの住人たちもここに加わり、コタローを中心とした人々の奇妙で暖かい日常は続いていく。

小林綾乃(こばやし あやの)

CV:花守ゆみり
演:百田夏菜子

「アパートの清水」から程近い弁護士事務所で働く、真面目な新人弁護士。マンガ版、アニメ版では27歳だが、ドラマ版では28歳。
先輩の弁護士から「コタローに毎週"優しい人の寄付"を届ける仕事」を押し付けられて当初は面食らうも、コタローの事情を知るや一転して同情的になる。以降は単にコタローに母親の保険金の一部を"優しい人の寄付"として届けるだけでなく、そのまま彼の部屋に上がって話し相手になったり困ったことがないか確認したり、親身になって世話を焼くようになる。

酒に弱い上に酒癖が悪く、一度酔うと別人のように陽気になる。その際は腹踊りを披露するのが常で、コタローの部屋でも構わずに引っ繰り返って寝てしまうこともしばしば。このためコタローからは「親切だけど手間のかかる人」だと思われている。

『コタローは1人暮らし』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

コタローの写真嫌い

狩野や美月とピクニックに来たコタロー。楽しい時間が流れる中、美月は今日の思い出にとスマホで画像を撮ろうとするが、それを見たコタローは素早く死角に移動して自分の姿が画像に残らないようにしてしまう。あまりに唐突、あまりに奇妙なコタローの振る舞いに狩野も首を傾げ、自身もスマホを取り出して構えてみせるが、コタローはそのカメラからも慌てて身を隠すのだった。
一時期養護施設に預けられていたコタローは、わずかな写真から「ここに息子がいる」と突き止めた父親から突然の来訪を受けたことがあった。「息子を返せ」と怒鳴りながら戸を叩き、所員たちが必死にそれを追い返そうとする中、コタローは1人机の下で震えていた。その時の恐怖が、コタローに「自分の姿が写真や画像に残れば、また父親が押しかけてくる」という思いを植え付けてしまったのだ。

本作は現代日本を舞台としながら、「4歳児がアパートを借りて1人暮らしする」という、あまりにもフィクションじみた設定で描かれる日常コメディである。しかし非日常的存在であるはずのコタローは、実は子供にはどうしようもない大きな問題を抱えて1人暮らしを強いられるに至っており、このシーンではそのぞっとするようなおぞましい片鱗が見え隠れする。
非日常の塊であるように見える"1人暮らしする4歳児"に、実は現実から地続きの残酷な過去があることを突きつけられた時、読者はこの物語から目が離せなくなる。ピクニックという平和そのもののシーンとのギャップがすさまじい、衝撃的な場面である。

コタロー「たとえ裏切られても、わらわは祐殿を信じるのである。いや、信じたいぞよ」

コタローが過ごした養護施設にいた年上の少年・祐(たすく)は、独り立ちした後にホスト崩れになり、借金で首が回らなくなってしまう。養護施設の仲間たちからの情報で、コタローが定期的に一定の生活費を受け取っていることを知った祐は、言葉巧みに彼を騙してそれを巻き上げることを目論む。
狩野や小林から怪しまれ、なんとか誤魔化そうとする祐だったが、実はコタローは祐が自分に嘘を言って金を巻き上げていることをすでに理解していた。どうしてそれが分かっていてなお金を渡してくれたのかと尋ねる祐に、コタローは彼が養護施設時代に自分を冤罪から守ろうとしてくれたことを持ち出し、見出しの言葉を口にする。

4歳児にしてはあまりにもしっかりとした性格のコタローだが、これまでの短い人生で経験した悲しい出来事や、それに負けまいと己を奮い立たせてきた経験がその土台となっている。タスクに対しても「祐になら騙されても構わない」とまで言い切っており、彼の心の強さと優しさが垣間見えるセリフである。
コタローが自分に寄せる強い信頼を知り、祐は己の行いを恥じ、ホストをやめて再出発を図る。そんなラストシーンも含めて実に清々しいエピソードである。

狩野「会えるよ」

コタローと一緒に母親の一族の墓に出向いた狩野は、そこに彼の母親の名が彫られていることに気付いてしまう。そうとは知らずご先祖たちに近況報告を済ませ、「今はつらくとも、こうやってがんばっていれば、いつか母親とまた会うことができるだろうか」と不安そうに尋ねるコタローを見て、狩野はいつか真実を知った彼から恨まれるだろうことを承知の上で、残酷で優しい大人の嘘を口にする。
「狩野は嘘はつかない、狩野がそう言うのならきっとそうだ」と無邪気に感動するコタローを前に、母親の名前が彫られている墓石側面を見られないようその場にただ立ち尽くす狩野の姿がどこまでも切なく、悲しいほどに尊い。

両親に振り回され、幼いながら必死に生きているコタローの姿を瑞々しく描いたアニメ版のラストエピソード。コタローのために嘘つきとなる狩野の姿は、大人らしい卑劣さと優しさに満ちている。
いつかコタローが真実を知った時、どうか2人の友情は変わらぬままであってほしい。そう願わずにはいられない名シーンである。

『コタローは1人暮らし』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

毎週別のものになるアニメ版ED画像

アニメ版のEDは、毎週違うイラストが描きおろしになるという凝った仕様になっている。
その回の中であったエピソードを中心にまとめた内容になっているので、「本編だけ見ればいい」とは思わずにゆっくり視聴すると様々な発見がある。ファンなら見逃せない点である。

『コタローは1人暮らし』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):KOCHO『星のランウェイ』

ED(エンディング):コトリンゴ『小さな手のひら』

挿入歌:山田エンリ『とのさまんのうた』

YAMAKUZIRA
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@YAMAKUZIRA

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