ブラック・エンジェルズ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ブラック・エンジェルズ』とは、1981年から5年間『週刊少年ジャンプ』で連載された、平松伸二原作のコミックスで、販売部数累計は800万部。連載前半は、雪藤洋士を中心とするブラックエンジェルが、法で裁けない悪人を抹殺する物語であったが、後半は、超人的能力が多く登場するバトル漫画となった。
連載終了後も多くの関連作が描かれており、『マーダーライセンス牙』とのコラボ作品『マーダーライセンス牙&ブラック・エンジェルズ』や、松田鏡二を主人公とした『ザ・松田 ブラックエンジェルズ』などが連載された。

『ブラック・エンジェルズ』の概要

『ブラック・エンジェルズ』とは、1981年から1985年まで、集英社の『週刊少年ジャンプ』で連載された平松伸二原作のコミックスで、販売部数累計は800万部。主人公・雪藤洋士をはじめとするブラックエンジェルのメンバーたちが、虐げられた弱者のかわりに、法律では裁くことができないド外道を、人知れず葬ってゆくバイオレンス・アクション。 決して弱者を見捨てず、報酬を一切受け取らずに悪人を抹殺する。暗殺対象は法で裁けない外道に限られており、勧善懲悪のストーリーとなっている。
本作の執筆以前、平松は武論尊による原作の『ドーベルマン刑事』を描いており、発行部数500万部以上を記録していたが、編集者から「作画だけでは漫画家として認めない」と言われていた事に対して、「いつかオリジナルでヒットを出して見返してやろう」という平松の思いから描かれたオリジナル作品である。
連載前半は、眼鏡をかけた冴えない青年のふりをし、標的の近くに潜入した主人公の雪藤洋士が、悪党の首筋や脳天に、自転車のスポークを突き刺して「地獄に落ちろ」と宣言し、外道たちを抹殺して弱者を救う現代版の必殺シリーズのような勧善懲悪の物語であったが、中盤からは世界観が一変し、世界の秩序が崩壊して暴力が支配する世界が舞台となり、竜牙会やホワイトエンジェル、ラスボス勇気との戦いが進むと、主人公側も敵側も超人的能力の持ち主が多く登場する週刊少年ジャンプらしいバトル漫画となった。「地獄へ落ちろ」「いんだよ、細けえことは」「恨みはらします」などの名フレーズを生んだことでも有名。また、漫画ではよく悪役が最終的には改心して仲間になったり、お互いの生き方を認めあうという展開があるが、まったくそういう面がなく、悪役はどこまでも鬼畜であり、外道で心を入れ替える事がないのも本作の特徴。
連載終了後も多くの関連作品が描かれており、1998年には、平松がかつて『スーパージャンプ』に連載していた別作品『マーダーライセンス牙』とのクロスオーバー作品『マーダーライセンス牙&ブラックエンジェルズ』の連載が開始され、雪藤が主人公として登場した。また2010年には日本文芸社『別冊漫画ゴラク』にて、松田鏡二を主人公としたスピンオフ作品『ザ・松田 ブラックエンジェルズ』の連載が開始され、その後、『ザ・松田 超人最強伝説』などが連載されている。

『ブラック・エンジェルズ』のあらすじ・ストーリー

黒い天使が舞い降りた

黒い天使となって蛭川を成敗する雪藤

アルバイトをしながら自転車で日本一周の旅をしているごく普通の青年、雪藤洋士。その正体は、社会に潜む悪を憎み、闇に紛れて法で捌けない外道に制裁を下す黒い天使である。
雪藤はラーメン屋でアルバイトをしていた。ある日、そのラーメン屋の一家の兄が、蛭川という悪徳刑事に、近所で起こった殺人事件の重要参考人として警察に連行されてしまう。実はその兄は、チンピラと喧嘩して、はずみで死なせてしまった過去があり、半年前まで刑務所に入っていたのだが、それ以来、蛭川は彼の事を付け回し、自分の手柄とするためになんとか兄を刑務所にぶち込もうと、近隣で事件があるたびに彼に嫌疑をかけて、しつこく絡んで嫌がらせをしてくるのであった。
兄は既に刑期を終えて出所して、ラーメン屋で真面目に働きながら更生の道を歩んでいたが、何か事件があるたびに容疑者扱いしてくる蛭川のせいで、街の住民からも白い目で見られている。しかし実際には兄は犯罪を行なっているわけではなく、毎回取り調べを受けても無罪放免となっているのであった。
どうしても兄を犯罪者に仕立て上げたい蛭川は、ある日妹を夜道で襲い暴行する。蛭川に襲われ、虚な目で帰宅した妹を見た兄は、蛭川の卑劣な行為に怒り心頭に達し、蛭川が酒を飲んでいるバーへ怒鳴り込んで、ナイフを持って襲いかかる。妹を襲えば自分の所に仕返しに来るとふんでいた蛭川は、正当防衛として兄を拳銃で撃ち殺してしまう。突然の兄の死に、悲しみに暮れる妹とラーメン屋の一家を見て、雪藤は黒い天使となって蛭川を成敗することを決めるのであった。
ある夜、雪藤は黒いスーツに身を纏うと、武器であるスポークを一本、自転車から取り外す。再びバーで酒を飲んでいた蛭川が、トイレで用を足していると、背後からスッと忍び寄る黒い影。雪藤の「地獄へ落ちろ!」の声と共に、スポークが蛭川の首を横から貫いて殺害し、雪藤はまた音もなくすぐに消えるのであった。
こうして誰にも知られることなく兄の仇を取った雪藤は、この後もこのラーメン屋に留まって欲しいと妹に懇願されるが、雪藤は別れを告げ、自転車でまた次の街へと去っていくのであった。
雪藤はこうして正体を明かすこともなく、次の外道を探して旅をする。

2人目のブラックエンジェル誕生

ブラックエンジェルとなった松田鏡二

雪藤のブラックエンジェルとしての正体に薄々感付き始めていた元刑事の松田は、その正体を見破ろうと自転車で走る雪藤をバイクでつけ回していた。
ある日、松田が雪藤に路上でその正体について問い詰めていると、公道を我が物顔で暴走するスティングレーが、道端の老婆を轢き殺した挙句逃走し、大きな屋敷に逃げ込むのを目撃する。早速車を追って屋敷に乗り込んでいく松田。屋敷の中で犯人を探していると、その屋敷の執事が本当のひき逃げ犯であるドラ息子の身代わりとして自首をしてきた。ドラ息子を庇うため、自首するように主人に言われて罪を被らされたのである。一緒にその屋敷に住み込んでいる執事の娘は、父がそんなことをするはずがないと叫ぶ。しかし逮捕され連行されてしまう執事。
その夜、ドラ息子は罪の意識もなく、父親の居なくなったその娘を屋敷のベッドで襲いかかる。失意の中、警察に全てを打ち明けるため、警察署に入ろうとする娘を、ドラ息子は車で追いかけると、その娘までも轢き殺して証拠隠滅を図る。その轢き逃げを目撃して、松田が近づくと、娘はドラ息子の悪行全てを打ち明けて息絶えてしまう。ドラ息子の罪を知った松田は、怒りと共に逃げたそのドラ息子をバイクで追跡するが、逆に車に体当たりされ、轢き殺されそうになる。
その瞬間自転車に乗った雪藤が音もなくあらわれ、逆に車のフロントガラスに体当たり。ハンドル操作を失ったドラ息子は車ごと崖から落ちそうになる。松田に命乞いをするドラ息子。自分の罪を省みず、金ならいくらでも出すから助けてくれ、というセリフにブチ切れた松田は、「地獄へ落ちろ!」というセリフと同時にドラ息子に怒りのキックを一発、ドラ息子は車ごと崖下に転落した。
こうして松田は法で捌けない外道を抹殺し、弱者の仇を打った。この瞬間、雪藤に続く新たなブラックエンジェルが誕生したのであった。

切人との決戦

竜牙会壊滅のために東京へ赴く事を決意する雪藤

竜牙界のトップである切人との最終決戦に臨んだ雪藤とブラックエンジェルたち。その決戦の場はゴルフ場となった。ジュディを人質に取った切人に雪藤が挑む。切人は自身の護衛として、巨漢卍と、大勢の手下を配置していた。鷹沢神父、羽死夢、麗羅、エルスは大勢の切人の手下を1人ずつなぎ倒して、雪藤と松田に切人との決戦を託す。
卍には松田が挑む。得意の空手殺法で卍にパンチを何発も打ち込むが、巨漢卍の前には、蚊が刺す程度のダメージしか与える事ができない。逆に卍の圧倒的なパワー殺法の前に、身につけているアメフトのプロテクターも破られ、全く歯が立たずに劣勢に立ってしまう。最後の手段として、松田はバイクに跨ると、そのエンジン音と共にバイクごと全速力で卍へ突撃。怯んだところに「地獄へ落ちろー!」の叫びと共に、松田の渾身の手刀を頭頂部に振り下ろすと、卍の頭蓋骨を破壊し、勝利をもぎ取った。
一方、切人に挑む雪藤。日本刀の達人である切人と、スポークを操る雪藤の戦いはほぼ互角。しかし戦いの中で切人の心のスキを見つけ出した雪藤は、心を無にすると、「我が心空なり。空なる故に無。」の言葉とともに、ヒラリと切人の日本刀の上に乗る。そのまま切人に近づくとスポークをその頭に突き立て、抹殺する。しかし死ぬ間際、切人は、自分は偽物であり、本物の切人は別におり、自分を殺しても竜牙会は揺らがない、と雪藤に言い残して死んでしまう。切人を倒してジュディを救い出すと、雪藤たちブラックエンジェルは、竜牙会壊滅のため、その本拠地である東京に赴く事を決意するのであった。

狙撃された鷹沢神父

高度経済成長に突入した時期に、財閥の息子、政府の高級官僚、社会評論家、自衛隊幹部などから成る8人が発足した竜牙会。鷹沢もその発起人の1人であった。自由と平等を主義とし、大国に頼らない独立した国家を作ることを理想とし、自分たちが主導権を握り、ムチを打っていかないと国家が滅びるという思想を持っている。竜牙会幹部が理想国家を作る究極の方法として考案した計画は、M計画と呼ばれ、富士山の地下で核爆発を起こすことで東京に大地震を引き起こし、その混乱に乗じて竜牙会の反対勢力を粛清、首都を廃して遷都することで自分たちの理想の都を作るというものであった。
しかしM計画提唱から10数年後、計画は成功する段階まで来ているにもかかわらず、未だに実行されないことに業を煮やした発足メンバーの6人の子供たちは、無能な親たちに代わり自分たちの手でM計画を実行し理想の国家を作ろうと企む。発起人である親たちを次々に殺害すると、ニューリーダーである切人の命の元、新世代メンバーとして竜牙会を乗っ取って、M計画を実行しようとする。
まず日本興業の小野沢英夫が、自動車での移動中、突然トラックが突っ込んできて死亡。金森財閥の当主である金森要造は、食事に毒が混入しており、それを食べて死亡。与党幹事長の浅沼喜一は、車に仕掛けられた爆弾に巻き込まれて死亡。そして鷹沢神父は、不用意に窓に近づいたところを、外から何者かに狙撃され、頭を撃ち抜かれて死亡。その他の発起人も次々と殺害され、M計画の実行者である沖田を除いた竜牙会の発起人たちは、その子供の世代に全員殺害され、竜牙会は、切人をリーダーとして新たに生まれ変わり、M計画は実行への道を進んでいくのであった。

M計画と関東壊滅

崩壊した関東を歩く雪藤

日本を裏から操ろうと企む巨大組織、竜牙会。雪藤たちブラックエンジェルのリーダーである神父の鷹沢は、その竜牙会の発足メンバーであったが、考えの違いから脱退していた。そんな鷹沢の元に、同じく竜牙会発足メンバーの1人である大友があらわれる。大友は、日本支配のために必要なM計画を鷹沢の住む町で実行することを告げる。
M計画とは、富士山で核爆発を起こして東京を大地震で壊滅させ、竜牙会が新しい日本社会を作るという計画のことである。
鷹沢神父は、M計画を阻止するために、ブラックエンジェルを組織し、外道を暗殺しながら弱者を助ける雪藤、シスターの亜里沙、使用人である羽死夢、元刑事の松田、元竜牙会の殺し屋である麗羅と水鵬、高校生の少女ジュディたちがそれに加わった。竜牙会や竜牙会が送り込む殺し屋たちとの戦いは激化していき、戦いの中で無我の境地に至った雪藤は、身につけた超能力で死闘を繰り広げる。
組織が送りこんできた暗殺者達を退ける雪藤らブラックエンジェルであったが、一方の竜牙会では組織の若返りのために内部クーデターが起こり、新しいリーダーは切人という人物となった。
M計画提唱から10数年後、計画は成功する段階まで来ているにもかかわらず、未だに実行されないことに業を煮やした発足メンバーの6人の子供らは、ニューリーダー切人の命令の下、無能な親たちに代わり自分たちの手でM計画を実行し理想の国家を作ろうと企んだのであった。
実は竜牙会の新リーダー切人の正体は、神のお告げにより東京が大地震で壊滅することを予知していた鷹沢であった。神は正義であり、天災による神の名誉が傷つくことを恐れた鷹沢は、人為的な壊滅ならば神の名誉は守られると信じて、富士山で核爆発を起こし、東京を大地震で壊滅させて竜牙会が新しい社会を作る M計画を実施することを決めたのであった。しかし一方で、心のどこかではM計画に反対している自分がいた。そんな反対の自分が作った組織がブラックエンジェルだったのである。
竜牙会との死闘の末、核爆弾は雪藤と松田によって停止させられ、鷹沢は死亡したが、鷹沢の受けた神の啓示通り、大地震によって関東全体が崩壊してしまったのであった。

ホワイトエンジェルの登場

ホワイトエンジェルのリーダー神霊士

雪藤たちブラックエンジェルの前に突然白装束の男が現れた。雪藤たちが持つ金貨を奪おうとする長髪の男。自らを、神の使い「ホワイトエンジェル」と名乗る。その男を倒そうと、飛鳥が得意のトランプを投げつけて攻撃するが、何故かそのトランプが空中で停止して落下してしまい、飛鳥の攻撃が全く通用しない。次は牙が空手殺法で襲いかかろうとするが、突然その男の周りが真空状態になり、牙の攻撃もその男に全く届かない。最後は雪藤がスポークで攻撃を試みるが、これもまた全く通用しない。その男が強力な超能力を操っており、全ての攻撃は無効化されてしまうのであった。
すると突然雪藤の胸の十字架が光り、稲妻がブラックエンジェルたちの頭上に落ちると、雪藤たちブラックエンジェルは、その男の前から姿を消した。神がブラックエンジェルたちの危機を察し、その男の前から姿を消させたのである。ブラックエンジェルも、神の加護を受けている事に驚くその男。
このホワイトエンジェルの男こそが、自らを神に選ばれた存在と呼び、新政府の内閣最高顧問を務め、自分の超能力を神から与えられた力として国家支配を目論んでいる神霊士であった。
元々は超能力者の集団は、明治時代から権力者の相談役として仕え、国家を左右する重要な決定を未来感知能力を用いて総理大臣に進言してきた影の存在であったが、霊士は自らを神に選ばれた存在として、陰の存在に終わることを嫌い、自ら権力を手中に収めようとホワイトエンジェルを組織したのであった。
こうしてホワイトブラックエンジェルは初めて出会うこととなり、その後勇気を巻き込んだ、大きな対決へと進んでいくのであった。

勇気との最終決戦

最強の敵である勇気を地獄へ落とす雪藤

明治時代から、時の権力者の相談役として、国家を左右する重要な決定を未来感知能力を用いて総理大臣に進言してきた影の存在であった超能力者たち。その超能力集団の1人で、日陰の存在から権力を手中に収めようとホワイトエンジェルを組織したのが霊士であった。一方、元々は正義感の強い両親に育てられた気の弱い少年だった勇気。霊士は勇気の超能力の潜在的な強さに気づき、それを利用する事を企み、策略によって邪悪そのものの存在に変貌させていく。そうして邪悪な存在となった勇気は、ホワイトエンジェルズをも配下にして日本を支配する存在となっていた。その顔も悪魔のように、眉と目が吊りあがり、超能力もさらに強力になっていた。勇気が頂点となった新政府と、それを阻止しようとする雪藤を中心としたブラックエンジェルズの最終決戦。
対峙する勇気と雪藤。日本を支配した勇気はパワーアップした超能力を使い、その舞台を雪藤に相応しい死に場所、キリストが十字架に磔にされたゴルゴダの丘の景色を再現する。一方の雪藤は、牙亮、ジュディ、紅林雄、嵐兄妹らブラックエンジェルの宿命づけられた十字架を一つにまとめあげ、自らの背中に焼き付けて、勇気との最終決戦に臨む。
地上で唯一の黒い天使となった雪藤は、勇気との一騎打ちに挑み、勇気が作り上げた幻の階段を一歩一歩、鬼の形相で登っていくと、その怯まない雪藤の態度に憤慨する勇気。
日本の頂点に立った自分と同じ次元に雪藤が登ってこられるはずはないと、絶対零度、超念波など、最強の超能力を繰り出して行く手を遮ろうとする。しかし、これまで死んでいった松田や麗羅、水鵬たちブラックエンジェル全員の宿命も背負いながら、十字架の力が集約された雪藤の歩みは止まらない。雪藤に戦慄を覚える勇気。超能力が全く通用しないのは、すでに雪藤の心臓は停止し、死んだ状態となっているからだと気づくと、そんな相手が自分を殺そうとしている現実に耐えきれず、亜空間へと逃げ込む。しかし、その瞬間勇気は今は亡き黒い天使たちに取り囲まれてしまう。行く手を阻まれた勇気に「黒い天使とは悪に対する怒り…その怒りがある限りたとえ体は滅しても魂だけは生きつづける!」と、雪藤はとどめのスポークを勇気の脳天に突き立てる。絶命する勇気を見やりながら、大仕事を片付けたように雪藤の体は塵となってどこかへ消え去っていく。勇気が作り出した幻影は消え、そこには雪藤の姿もなく、形見となった1本のスポークだけが落ちていた。
それを拾い上げたジュディは、雪藤が生きていることを信じて天を見上げるのであった。

『ブラック・エンジェルズ』の登場人物・キャラクター

keeper
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