プラスチック解体高校(日本橋ヨヲコ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『プラスチック解体高校』とは、日本橋ヨヲコによる漫画作品。『週刊ヤングマガジン』にて、1997年第39号から1998年第19号まで連載された。全2巻。
名門進学校・大段高校の特別進学クラスに入学した主人公とその仲間たちが、担任の教師や生徒会との対立、人間関係の難しさなどに悩む青春ストーリー。
作者初の連載作品だった。

『プラスチック解体高校』の概要

作者は日本橋ヨヲコ。
『週刊ヤングマガジン』にて、1997年第39号から1998年第19号まで連載された。
単行本は全2巻で、新装版も発刊されている。
主人公・蔵田三成が入学した名門進学校・大段高校にて、兄の一誠との確執や、生徒会との対立、仲間の大切さなど気づく様子を描いた青春学園もの。
作者初の連載作品だったが、打ち切りとなった作品でもある。
日本橋ヨヲコ作品ではおなじみとなっているスターシステム(別作品のキャラが登場すること)を使用しており、デビュー作であった短編作品『noice canceler(ノイズ・キャンセラー)』で主人公だった板橋が、特別進学クラスの副担任として登場する。

『プラスチック解体高校』のあらすじ・ストーリー

蔵田三成(くらたみつなり)は、名門進学校である大段高校特別進学クラスに入学することになった。
一度学校を見ておこうと入学式の前日高校を訪ねると、そこには古屋直視(ふるやなおみ)がいた。
直視に一目惚れしてしまった三成。
入学式では主婦雑誌などを読む変わり者の志度鉄甲(しどてっこう)と出会い、幼馴染だった坂本良治(さかもとりょうじ)と再会する。
しかし特別進学クラスの女子を「ブス」と発言してしまったことから不評を買い、入学早々肩身の狭い思いをする。
一方、古屋直視は変装して「高校デビュー」をしようとしていた。
直視の親友の高砂サキ(たかさごさき)とバレるかバレないかという話をしてクラスへ到着すると、三成にすぐ変装を見破られてしまう。
三成たちが盛り上がっていると、クラスメイトたちは「学校に遊びにきてるんじゃない」などと陰口を言う。
それにイラっとした直視は、三成に突然キスをする。
それをみてクラスメイトたちはあっけに取られるが、「女なら男を勃たせてなんぼだ」という強引な持論を展開。
初日から変人としてクラスから浮いてしまう。
三成はこのエキセントリックな行動でより一層直視に惚れ込んでしまう。
担任であり、三成の兄である蔵田一誠(くらたいっせい)にキス事件のことで呼び出された三成と直視だが、三成は先に部屋にいた一誠と直視がキスをしているのを見てしまう。
さらに直視が「三成と違って上手だ」と一誠をほめたことにより、三成のコンプレックスが刺激される。
三成は今まで勉強でも恋愛でも何一つ兄に勝てたことがなく、それがずっと彼のコンプレックスだった。
五色台寮へ帰ると、鉄甲が食事の支度をしていた。
そこに良治も帰ってきて、五色台寮では三人で暮らすことが発覚する。
直視はそこにプリントを持って訪ねてくる。
プリントを渡して帰ろうとする直視に三成は追いすがり、「もっとキスがうまくできるようになる」と宣言する。
直視は「朝よりずっといい男になった」と三成を褒める。

直視が大段高校に入学しようと思ったのは、三成の兄・一誠がいたからだった。
中学時代、直視は担任の田岡(たおか)からセクハラを受けており、同級生から「担任と寝ている」と噂を立てられたりして不登校気味だった。
その頃一誠と出会い、一誠は精神安定剤を直視に分けてくれる。
そして一誠は直視の状況を知り、部屋を一室用意すると「ここで勉強して大段高校に入学しろ」と言う。
さらに田岡の素行調査をし、直視が高校に入学を決めると同時に田岡を失職させた。

その後「キス事件」は生徒会の耳にも入り、三成と直視は会長の志度アルミ(しどあるみ)に目をつけられる。
登校途中だった三成はサボる気の直視を止めようとしていたが、ホームで落し物をしてレールに飛び込もうとしている同じ制服を着ている女子を助ける。
その女子は町田都(まちだみやこ)といい、まだ一度も登校していないクラスメイトだった。
都は受験を合格させてくれた鉛筆の持ち主を探しており、それは鉄甲であると判明する。
都は、学校に受かると勉強がハードになる、落ちるといじめっ子たちと同じ学校になる、と試験前に悩んでいた。
ゴミがゴミ箱に入ったら受かる、という願掛けをすると、落ちてしまったゴミを鉄甲が拾ってゴミ箱に入れる。
そして鉄甲は「試験はやっぱり鉛筆でしょう」と都に鉛筆を渡し、都はそれを使って試験を受けた。
都は鉄甲のおかげで合格できたと思っていたのだった。
三人は学校をサボってガチャガチャなどをするが、資金が乏しくなり、直視の発案で都に似顔絵を描かせ1枚500円で売ることにする。
その途中、都を中学時代いじめていた連中と出くわすが、「こいつ絵しか取り柄がない」という発言に、直視は「あんたたちは何ができるの?私は好きな男の子供が産める!」という持ち前の強引な持論でいじめっ子たちを論破した。
都は直視に友情を感じるようになる。
次の日生徒会は「アルバイト禁止」の学則を元に三人を呼び出す。
アルミは罰を受けさせる代わりに、都に自分の似顔絵を描かせる。
しかしその際に都に「難しかった?」と聞いたところ「簡単だった、綺麗なだけだったから」と返答され、三人が退室した後その絵を握りつぶす。

写真部はアルミを学園のアイドルとして裏で写真を売買したりしていたが、新しいアイドルとして直視に目をつけていた。
身体測定の時、直視はノーブラで登校してきてしまうが、測定中人体模型の中にカメラが仕込まれているのを発見。
犯人を追いかけて上半身裸で校内を走り回ってしまい、生活指導の教師に呼び出される。
サキは、盗撮された写真の中に自分の裸があるのではないかと落ち込んでいた。
坂本がフォローしようとするも撃沈。女心の難しさを実感する。
この騒動をアルミは利用しようと、写真部がとった写真を中庭にばらまき、直視に非難を集中させる。
直視は盗撮写真を使ったポスターを貼り出されており、それには学園の新アイドルとしての賛美が書かれていた。
直視のせいで盗撮騒動に巻き込まれた、と女子を中心に非難が上がるのも無理はなく、特別進学クラスの雰囲気は険悪になる。
しかし直視は自らのヌードを都に描かせてばらまき、「どうせならこのぐらい綺麗に撮れ」と、被害者である自分が全く凹んでいないことを示す。

三成はクラスメイトから「縁故で入ったのではないか」と嫌味を言われたり、英語教師から「担任が兄貴だと態度がでかくなれていいな」と言われたりすることが続く。
その後アルミから「お兄さんと似てないのね」と言われた時に、嬉しくなかった自分に気づく。
ずっと兄にコンプレックスを抱いて離れようとしていたと自分では思っていたが、実際には自分自身が兄をどう思っているのかがわからなくなる。
三成はテスト中、この先ずっと兄を追い続けなければならないのか考えてしまい、過呼吸を起こして倒れる。
特別進学クラスは一時パニックになり、クラスのテストの平均点が落ちてしまい、クラス全員で再テストを受けることになる。
平均で84点以上とらなければ普通クラスに落とす、という処置を発表した一誠は、三成に「蔵田三成は90点以上とること」と告げる。
しかし一誠は「90点以上とること」とは言ったが、とらなければ普通クラスに落とすなどとは発言しておらず、直視はそれを「ずるい」と笑う。
三成は「90点以上とること」と言われて、そうしなければ自分は普通クラスに落ちると思っていたし、クラスの人間もそう思っていたが、実際には84点以上とれば十分なのであった。

三成、鉄甲、坂本、直視、サキ、都たちは放課後自分たちの得意な科目を教えあう会を開く。
初めは仲間のみの参加だったが、だんだんと参加者が増え、賑わいを見せる。
直視はテストの後、打ち上げに向かう前にシャワーを自宅で浴びていた。
そこに中学の担任だった田岡が現れ、直視を力ずくでやり込めようとする。
直視は「こんな奴に謝罪するぐらいだったら死んだ方がましだ」と死を覚悟したが、そこに到着が遅いのを気にした三成がやってきて助けられる。
直視は兄弟揃って助けられたといい、三成は直視へ感じている思いをぶつける。
三成は直視に好意だけではなく母性も感じており、それを受けた直視は戸惑いながらも三成を好ましく思うようになる。

再テストではクラス全員が普通クラスに落ちることなく84点以上獲得した。
三成は一誠の担当教科である数学で満点を取る。
車のタイヤがパンクして、電車出勤になった一誠は、三成と並んでホームにいた。
三成は初めて勉強が楽しいと思ったということを一誠に告げるが、一誠は「お前は俺の弟だ、できないわけがないだろう」と三成を肯定する。
三成は一誠と直視の関係を問いただそうとするが、一誠は誰かに突き落とされて電車に轢かれ死亡する。
タイヤをパンクさせたり一誠を突き落としたりしたのは、田岡だった。

三成は一誠の死を伝える全校集会でマイクを奪うと、「本日を持って退学する」と宣言。
三成の感じていたコンプレックスは実は兄に追いつけないことではなく、兄に認めてもらえないことだったとすでに彼は気づいていた。
一誠は死の間際、「数学満点取れると思ってなかった」と三成が言ったのに対して、「お前は俺の弟だ、できないわけがないだろう」と三成を認める言葉をかけていた。
そのため、三成は清々しい気持ちで退学することに決めたのだった。
直視は「今度は私のためにここにいてよ」と追うが、三成に「まだ兄貴の代わりはできない」と言われてしまう。
またひとりぼっちになってしまう、と泣く直視に、サキは「あんたもうひとりじゃないよ」とクラスのみんなを連れて励ます。

その後直視は教師となり、大段高校で働いていた。
サキはキャリアウーマンとしてバリバリ働きながら良治と付き合い、都は漫画家デビューが決まる。
直視が感慨深く高校を歩いていると、そこに現れた男性は三成だった。
突然三成は直視にキスをし、うまくなったかを尋ねる。
都の描くデビュー作のタイトルは「プラスチック解体高校」となっていた。

『プラスチック解体高校』の登場人物・キャラクター

蔵田三成(くらたみつなり)

兄・一誠に強いコンプレックスを持っている優等生。
姉に二葉がいたが、物語のスタート時点ですでに死亡している。
一誠の担任する大段高校特別進学クラスに入学。
志度、坂本とともに寮生活をしている。
ずっと「兄には勝てない」と周囲からも兄本人からも見下されていると感じていたが、古屋直視を通して兄を見て、兄との関係を見直す。

古屋直視(ふるやなおみ)

中学時代に「担任と寝ている」という噂を立てられ、それが原因で不登校になったり同級生を殴ったりした問題児。
蔵田一誠に出会い、大段高校を受けることになる。
一誠に惚れているが、一誠と付き合っている訳ではない。
変わった行動をとることがあり変人扱いされているが、芯の通った女である。
三成の姉・二葉に雰囲気が似ている。

志度鉄甲(しどてっこう)

五色台寮の食事を支度している三成の同級生。
勉強が趣味であると言い切る変わり者だが、カメラなどにも通じている博識者。
姉のアルミと二人で暮らしてきたが、その中でアルミから誘われ男女関係になる。
町田都の合格した要因の鉛筆を渡した本人で、卒業後も都と付き合いがある。

町田都(まちだみやこ)

中学時代いじめられ、いじめっ子たちと決別するために大段高校に進学した絵の上手な少女。
不登校気味だったが、直視たちと出会ったことから、学校にきちんと通うようになる。
卒業後は漫画家となる。

高砂サキ(たかさごさき)

直視の中学時代の同級生で、大柄な体に三白眼のせいでよく誤解される女性。
下級生の女子から告白されたり、女と思われないような発言をされたりして傷ついてきた。
実際は傷つきやすく繊細な心を持っている。

坂本良治(さかもとりょうじ)

四人兄弟で、長男。
寮に入れば生活費が浮くことから大段高校に進学、五色台寮へと入る。
アルバイトをして兄弟を食わすために実家に送金している。
三成とは幼馴染。

蔵田一誠(くらたいっせい)

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