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azuma1664t9のレビュー・評価・感想

中島みゆき
8

中島みゆき アルバム『大銀幕』

1975年のデビュー曲「アザミ嬢のララバイ」がヒットし、現在まで数々のヒット曲を出しているシンガーソングライターの中島みゆき。2枚目のシングル『時代』も大ヒットしました。
ご紹介するアルバム『大銀幕』は、1998年に発売されたアルバムの再リリース版です。映画やTVドラマに彼女が提供した楽曲の中から、選りすぐりの10曲を収めた中島みゆきのベストヒットアルバムです。
大ヒットした「糸」「たかが愛」など聞き覚えのある楽曲が、再リリースでどんな風になったのか、中島みゆきファンにはとても気になる作品です。

中島みゆきのヒット曲には「地上の星」のように力強く惹きつけられる曲や、「糸」のように心の奥底にまでしみ込んでいく曲など、曲調も違ったものが多数あります。
中でも1983年のアルバムの中に収められていた「ファイト」は、発売当初は人気がないどころか酷評された楽曲であったことを、2010年に雑誌の対談の中で彼女自身が明かしています。
この曲がヒットして世の注目を浴びるきっかけになったのは、1994年にCM起用された事でした。住友生命のCMで流された「ファイト!」の楽曲、その中のワンフレーズである「ファイト!」が凄くCMとマッチしていました。
中島みゆきの力強い「ファイト!」、タイトルから読み取れば応援ソングかなと思われますが実はそうでもないのです。中島みゆきのアルバムから「ファイト」に込められた歌詞の意味を是非読み取って下さい。

パサジェルカ
8

アウシュヴィッツ強制収容所の一端を映像化した、アンジェイ・ムンク監督の遺作『パサジェルカ』

『パサジェルカ』は1963年公開のポーランド映画で、監督はアンジェイ・ムンク、ヴィトルト・レシエビッチで、強制収容所アウシュヴィッツとラベンスブリュックに収容された経験のあるゾフィア・ポスミッツの体験に基づく脚本を素材にしました。この映画は未完の作品です。その理由は監督が交通事故で亡くなったからなのですが、ナチスドイツの絶滅収容所の恐ろしく冷徹な真実と、通常人が拷問者に変わっていく過程を描いた作品としては見事に仕上がっています。
ドイツ人女性リザは大西洋を横断する客船の中で、死んでしまったと思っていた女性(アウシュヴィッツ収容所の元・囚人)に遭遇する。リザは彼女の過去を全く知らない米国人の夫ウォルターにアウシュビッツのこと、また自身が親衛隊の看守であったことは全く明かしていません。リザは自分の姿勢を正当化していますが、徐々に明らかになる真実は彼女が思い描いているものとは隔たっていました。リザは、政治的な犯罪ゆえに逮捕されたポーランド女マルタがいかに彼女を拒絶したかを映画の中でモノローグで語り続けます。作品では、大西洋横断の旅という贅沢な静けさとアウシュヴィッツの場面のフラッシュバックが対照を形成しています。アウシュヴィッツの情景では迫害者が自己正当化するナレーションが重なります。収容所ではすべての作業が死の産業の精確さで遂行され、拷問された囚人たちの全裸の死体や焼却炉から立ち上る黒煙は、全く感情を欠いたシーンです。
この映画が人間の記憶を巡る偉大な作品に仕上がる以前に監督は1961年に事故死してしまいます。監督ヴィトルト・レシエビッチが未完の箇所をそのまま残しながら映像を入念に編集して作品を完成させました。未完のタッチが見終わった後に不思議な力を観客に及ぼします。