ハケンアニメ!

ハケンアニメ!のレビュー・評価・感想

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ハケンアニメ!
8

アニメの新人監督の奮闘と成長の物語

辻村深月さんの小説、『ハケンアニメ!』を映画化した作品。
アニメは春夏秋冬の4クールに別れており、1クールの中で覇権を取ったものをハケンアニメと呼ぶ。
主人公の斎藤瞳は覇権を目指し、『サウンドバック』という作品の監督をつとめることになる。瞳はプロデューサーの行城を筆頭に声優、作画監督、脚本家などの制作陣との軋轢を抱えながらも、制作を続ける。
さらに、同じクールには瞳がアニメ業界を目指すきっかけとなったアニメ、『光のヨスガ』の監督をつとめ、天才監督と呼ばれる王子千晴の『運命戦線リデルライト』が制作される。
瞳は内部では制作陣との軋轢、外部では天才監督との対決を抱え、思うようにいかない監督という立場に悩みながらもアニメ制作を進めていく。
そんな瞳は思うようにいかない中で、とあることをきっかけに監督の作品への産みの苦しみや、制作陣にも苦悩があることを知る。そこで瞳は『サウンドバック』をどのようなアニメにし、視聴者にどのような感情を抱いて欲しいかを過去の自分に重ねて思い出す。そして瞳は1つの大きな決断を下す。

果たしてその決断とは何なのか、瞳が下した決断の結末はどうなるのか。『サウンドバック』と『運命戦線リデルライト』はどちらが覇権を取れるのか。そして、大きな決断を下した瞳はどうなるのか。
一見の価値がある映画である。
そして、見た後にエクレアが食べたくなるのだが、その理由も見てのお楽しみだ。

ハケンアニメ!
10

アニメ業界の内情

映画「ハケンアニメ!」を見ました。アニメ業界をテーマにした映画は幾つか見たことがあるのですが、今回の作品は今まで見た中で一番内容が深くて面白く、アニメーションを作るのはこんなに命を削って多くの方達が作っているんだなと知りました。登場人物として二人の監督が出てきます。一人は吉岡里帆さん演じる新人監督「斎藤 瞳」、もう一人は伝説の天才アニメ監督として名を馳せている中村倫也さん演じる「王子 千晴」。まず監督二人の作品に対する情熱、最高の作品を作る、最高の作品を超えるという覚悟に心を打たれました。映画のエンドクレジットでよく流れている多くの方々の名前、皆さんそれぞれの技術はもちろん、作品に対する情熱をもって取り組んでいます。ですが良い作品を作りたいという想いは一緒でも監督と現場スタッフの魂のぶつかり合いが物凄く見ごたえがありました。
新人には天才を超えたいという想い、天才は天才というある種、呪いのような言葉を常にプレッシャーに感じながら0のものから1を生み出すという葛藤との闘い。そしてそんな現場スタッフたちの気持ちを分かろうとしない利益だけを追求する経営側。それでも自分の本当に作りたい物を追求して妥協せず突き進んでいく二人の姿は、私自身のアニメの価値観を変えてしまうぐらい影響がありました。
特に印象に残っているのはトウケイ動画のチーフプロデューサー「行城 理」でした。柄本 佑さんが演じているのですがとてもクールで物事に対してドライな考え方で無理な案件を次々と瞳に指示して対立が激化していきます。しかし物語が進んでいくうちに行城の思いが明らかになった時、心がとても温かくなりました。年間、春夏秋冬と季節ごとに50作品以上がリアルの世界でも発表されている訳ですが、この映画を見てアニメへの向き合い方が変わりました。個人的な意見ですが、アニメ好きの方は「ハケンアニメ!」をお勧めできると思います。とても素晴らしい作品でした。