タイトル、発想、並じゃない万城目学作品

『鹿男あをによし』でこの人を知り、今に至ります。毎回タイトルと言い、内容と言い、かなりのセンスですよね…。

『鹿男あをによし』

「俺」こと語り手の高校教師が、ある日突然、鹿に呼び止められて「鹿の使い番」にされる、という話。何のため、選ばれたのか?日本を救うためです。

大阪のネズミ、京都のキツネ、そして奈良の鹿が60年に一度交代制で、日本を滅ぼしかねない大災害を起こす「なまずのしっぽ」を抑え込むための儀式をしなくてはならない。そして、そのための使い番と運び番が必要…ということで俺氏が選ばれたわけです。儀式に必要なのは「サンカク」と呼ばれる「目」。俺氏はその「目」を運ぶ運び番に選ばれるのですが…?

2008年にはドラマ化されました。鹿やネズミの声も含め、キャストが結構ゴージャスです。鹿たちは卑弥呼からこの大事な役目を仰せつかったのですが、その辺の歴史も踏まえ、結構勉強になります。「目」の正体についても。

『プリンセス・トヨトミ』

突如、大阪が営業や商業といった活動を停止しました。その一方で、セーラー服姿で登校し、いじめを受ける少年や彼を守る同級生の少女、東京から派遣された調査員…そして明らかになる、壮大な秘密。大阪は、「大阪国」という国であり、関係者以外にそのことを知られてはならないという決まりのほか、もう一つの決まり(というか習慣)がありました。

映画版しか見てないんですが、大阪国の「もう一つの決まり」、大阪国民が「立ち上がる」シーンは圧巻の一言でした。冒頭の戦国時代のシーンも含め、記録に残されることのなかった歴史を感じさせます。

『とっぴんぱっりの風太郎』

「ニートの忍者」が面白いんじゃないか、ということもあって書かれた作品。時は既に江戸時代、とはいえ豊臣家が健在だった、初期も初期のころ。忍者の養成所のようなところで少年期を過ごしたものの、火災で焼け出されたり、不運に見舞われながらもなんとか生きていました。そんな彼のもとに、「因心居士」を名乗る奇妙な存在が。そして、「ひょうたんづくり」のバイトをする羽目になり、かつての忍者仲間から「さる貴人のお供」を仰せつかったり…何だかバラバラに思える出来事すべてが一つにつながった時、あとはクライマックスに向けひた走るのみです。

忍者独特の言葉など、「ニート」してはいますが、結構忍者としての実力はあります、風太郎。ちなみに「ぷうたろう」と読みます。一時期「ニート」というか無職の人を「プータロー」と呼んでいたので、それにひっかけたんでしょう。

この独特のイラストもまた味がありました。

よく思いつき、それを作品にまとめ上げるものです。何れも背景に「歴史」の重みがあり、それぞれの使命があるように思われます。重みの使命が人物を輝かせる。だから「ウケる」んでしょうね。

えどまち
えどまち
@edono78

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