刑務所のルールブック（韓国ドラマ）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『刑務所のルールブック』の概要

『刑務所のルールブック』とは、2017年11月22日から2018年1月18日まで韓国のケーブルテレビtvNで放送された全16話のテレビドラマである。野球のスター選手ジェヒョクは、メジャーリーグに挑戦するため渡米する直前に、妹を守るため男に重傷を負わせてしまい刑務所に収監される。裁判で正当防衛が認められると思いきや、ジェヒョクに実刑判決が下る。そんな人気野球選手から囚人となってしまったジェヒョクのまわりで巻き起こる事件や、ジェヒョクと囚人たちの交流を描いたヒューマンドラマである。刑務所が舞台でありながら、そこで暮らす囚人や看守たちの心温まるエピソードを描き、話題となった。

平均視聴率は7％で、13話以降は視聴率が10％を超え、ケーブルテレビにもかかわらず、民放で放送されている同時間帯のテレビドラマより高視聴率を記録した。韓国で大ヒットしたテレビドラマ「応答せよ」シリーズを手がけたシン・ウォンホが監督とイ・ウジョンが脚本を担当している。原題は「賢い監房生活」であり、2020年に放送された「賢い医師生活」とあわせて、「賢いシリーズ」と呼ばれる。

主人公ジェヒョクを『イカゲーム』で世界的に有名となったパク・ヘスが演じた。その他に、ジェヒョクの元彼女をクリスタル、ジェヒョクの友人で看守のジュノを『賢い医師生活』にも出演しているチョン・ギョンホが演じている。また『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』に出演し、韓国では「国民的年下男子」と呼ばれるチョン・へインも出演した。

『刑務所のルールブック』のあらすじ・ストーリー

監獄生活の始まり

プロ野球選手のキム・ジェヒョクは韓国を代表する人気野球選手。メジャーリーグ進出が決まり、すべてが順風満帆に思えたある日、妹のジェヒが男に乱暴されている現場に遭遇する。男を捕まえようとしたジュヒョクは男に重傷を負わせてしまう。裁判では正当防衛が認められると思ったが、判決は1年の実刑だった。こうしてジェヒョクの監獄生活が始まる。

ジェヒョクが収監されたのは西部拘置所だ。ジェヒョクは控訴を決め、二審に向けて準備を進める。西部拘置所には、暴力団幹部のカルメギも収監されていた。ひょんなことからカルメギの怒りを買ったジェヒョクは、目をつけられてしまう。それ以来、カルメギはジュヒョクを痛めつける機会をうかがうようになる。

一方、ジェヒョクの元には、母親や元恋人のジホが訪れる。母親には強がってみせるジェヒョクだったが、ジホには監生活のつらさを吐露する。劣悪な環境に心が折れかかっていたジェヒョクだったが、ある人物との再会で救われる。その人物とは高校時代の友人イ・ジュノだ。刑務官として働くジュノはジェヒョクの生活をサポートするようになった。

そうしているうちにジェヒョクは二審の日を迎えた。弁護士に二審では勝てると言われていたが、裁判中に被害者が脳死状態であるという情報が入り、二審でも懲役1年の判決が下る。妹のジェヒは自分のせいで兄がメジャーリーグの夢を絶たれてしまったことに涙を流す。残念がる周囲の人々に対し、ジュヒョクは気丈に振る舞うが、内心はひどく落ち込んでいた。さらに、ジェヒョクを襲う機会を狙っていたカルメギの手下トルマニにカッターで肩を刺されてしまう。思わぬ不幸に見舞われたジェヒョクだったが、幸い大事には至らなかった。

西部刑務所での生活

実刑が確定したジェヒョクは西部刑務所に移送される。拘置所で出会ったユ・ハニャンや法律に詳しいコ・パクサなどと同房となり、拘置所での生活とは言えどもにぎやかな毎日を送っていた。ジェヒョクが木工所で作業するようになると、ゲイであるヨム班長に気に入られる。ある日、ヨム班長に襲われそうになったところ、ジュノに助けられる。ジュノはジェヒョクをサポートするために、西部刑務所に異動を願い出たのだ。異動願いが受理され、ジュノは西部刑務所で勤務することとなった。

ジュノも異動してきて安心したのも束の間、拘置所で刺された影響で腕がなかなか思うように動かせない。外部の病院で治療を受けることを願い出るか受け入れてもらえない。しびれをきらしたジュヒョクは木工所での作業の後、班長に絡んでわざと自分を殴るように仕向ける。頭を怪我したジュヒョクは救急車で外部の病院に搬送されることになった。頭の怪我とあわせて肩の検査も受けられることになった。頭の怪我は大したことはないが、肩の怪我はリハビリをしても回復に3年はかかると言われてしまう。さらにはジェヒョクがいないところで、医師が「野球選手として復帰するのは難しいだろう」と話しているのを聞いてしまう。これを受けて、ジェヒョクはテレビのインタビューで引退を宣言する。

ジェヒョクの引退を知って妹のジェヒはショックを受ける。ジュヒョクから伝言を頼まれたジュノはジェヒの元を訪れ、「自分を責めるな」というジェヒョクの伝言を伝える。一方、ジェヒョクの大ファンであるジュノの弟ジュンドルは、ジュヒョクの引退を知って署名を集め始める。刑務官たちも署名に参加するが、引退するつもりのジェヒョクはその様子を見て困惑する。新しく打ち込めることがなかなか見つからずもやもやしていたある日、暴行した男が死亡したニュースが流れ、ジェヒョクはショックを受ける。そんなタイミングで刑務所の所長にジェヒョクのために野球の練習場を用意したと言われ、温室に作った練習場をプレゼントされる。何かの糸が切れたジェヒョクは、実は以前怪我をした際に胃がんが見つかり手術をしたことを告白した。自分には野球しかなかったから引退しなかったが、もう疲れたと思いをぶちまける。

野球練習の再開

ジェヒョクが野球を辞めたことに納得できないジホとジュノはある作戦を考える。それは夢で亡くなったお父さんに野球を続けるように言ってもらうというものだ。ジホの発案に、そんなことで野球を再開するのかと訝しがるジュノだったが、ジェヒョクの監房のメンバーも巻き込んで、ジェヒョクが寝ているときに野球を続けるよう言う演出を実行する。すると翌朝目覚めたジェヒョクは野球練習場に向かい、野球の練習を再開する。ジュノがなぜ再開したのか尋ねると、ジェヒョクは夢で言われたからと答えた。

ある日、ジェヒョクの監房に新しくユ大尉が入ってきた。ユ大尉は軍隊で日常的に部下に暴力を振るっていた罪で有罪となっており、無口で目つきも悪いユ大尉のことをジェヒョクの監房のメンバーは恐れていた。ユ大尉は刑務官に連れられ個室に入る。監視カメラでその部屋の様子を確認すると、ユ大尉が刑務官に馬乗りになり暴力を振るっており、ユ大尉は独房に入れられる。しかし、刑務官のペン部長が監視カメラの様子を遡って確認すると心筋梗塞を起こした刑務官をユ大尉が助けようとしていたことが分かった。独房から出されたユ大尉は、ペン部長になぜ言わなかったのかと問われると、「言えば信じてもらえたか？」と答える。実はユ大尉は軍で暴力は振るっておらず冤罪であり、実直な人物だった。

ジホはジェヒョクを気にかけてしばしば刑務所に面会に来るが、ジホの将来を案じたジェヒョクはジホにもう来ないでほしいと伝えてしまう。正式にはすでに別れた2人だったが、お互いまだ想いあっていた。ジホを想うあまりジェヒョクは素直になれずに、ジホを突き放してしまう。

トルマ二との再会

練習を再開したジェヒョクはなかなか調子が戻らず悶々とした日々を過ごしていたが、ある日140kmの球を投げることに成功し、嬉しくて思わずジホに電話してしまう。ジホが出て慌てて電話を切るジェヒョクだったが、それまで頑なに復縁を拒んでいたものの、野球界復活に向けて明るい兆しが見え、ジェヒョクの頑なな心も溶けてきた。

一方、拘置所でジェヒョクを襲ったトルマニが西部刑務所に輸送され、ジェヒョクと同じ監房になる。いきさつを知っている監房のメンバーたちはトルマニを警戒している。トルマニは相変わらずジェヒョクを襲う機会を狙っていた。ジェヒョクが来ていた上着を着た人物を見つけたトルマニは、ジェヒョクと間違えその人が入った焼却炉に火をつける。あわや大惨事になるところだったが、事前に食い止められ、ジェヒョクの上着を着ていたおじいさんは無事だった。それまで我慢していたジェヒョクはトルマニを殴る。怒りに任せてトルマニを殴るジェヒョクを見つけたジュノは止めに入る。

ジェヒョクは弁護士を通して、釈放後、契約してくれる球団探しを始めていた。ジェヒョクの復帰を知ったすべての球団が契約したいと申し出た。ホッとしたジェヒョクは嬉しくてまたジホに電話してしまうが、ジホには冷たくあしらわれてしまう。ジェヒョクは契約を申し出た球団に対し、ある条件を出す。それはマスコミをきちんと統制することだ。自分のことはどのように書かれても良いが妹についてマスコミが書きたてないことを条件としたのだ。その条件をすぐに飲んでくれたのは、元々所属していたヒーローズだった。

旅立ち

所属する球団も決まり、ジェヒョクは面倒なことをなくしたい思っていた。トルメニのことをなんとかしようとしていた。そこでジェヒョクは自分の練習に付き合うようにトルメニに声をかける。これまで悪い人に従うことで自分の居場所を見つけてきたトルメニだったが、ジェヒョクが新たな居場所を作ってくれようとしていることに感銘を受ける。そしてジェヒョクを始め、同じ監房のメンバーに少しずつ心を開くようになる。

出所の要件を満たした同じ監房のメンバーが出所していく中、ジェヒョクもまた出所の日を迎える。トルマニは人に優しくされたのは初めてだったとジェヒョクにお礼を言う。出所すると外にはたくさんの記者が来ていた。ジホの姿を見つけたジェヒョクは久しぶりの再会にジホを強く抱きしめた。

『刑務所のルールブック』の登場人物・キャラクター

主要人物

キム・ジェヒョク（演：パク・へス）

プロ野球球団ネクセン・ヒーローズの投手。妹が男に襲われている現場に遭遇し、男を殴った際に重傷を負わせてしまう。正当防衛が認められると思っていたが、実刑判決を受け刑務所に入ることになった。メジャーリーグ挑戦の夢を絶たれてしまう。元恋人のジホや刑務官であり親友のジュノに助けられながら刑務所での生活に少しづつ慣れていく。温厚な性格で普段はあまり何も考えていないように見えるが実は策士である。また、キレると手がつけられない。

イ・ジュノ（演：チョン・ギョンホ）

刑務官でジュノの親友。高校時代はジェヒョクと一緒に野球をやっており、優れた投手だった。ジェヒョクの刑務所生活を支えるために異動願いを出し、西部刑務所に異動してくる。ジェヒョクの伝言を伝えるために、ジェヒョクの実家を訪れる中で、妹ジェヒのことが気になるようになる。最終的にはジェヒと交際するようになる。なかなかジェヒョクには言い出せずにいたが、出所の日にジェヒとの交際を告白する。心配性でジェヒョクのことをずっと気にかけているので、周囲からは「ジェヒョクのストーカー」と呼ばれている。

キム・ジホ（演：クリスタル）

ジェヒョクの元恋人で、ジェヒョクが高校時代に所属していた野球部の監督の娘。医大に通う大学生である。ジェヒョクとは元恋人という関係だがお互いまだ想いあっており、しばしば刑務所に面会に訪れる。ジホの将来を気遣ったジェヒョクにもう来ないよう言われるが、それを守りながらも想い続けている。ジェヒョクの性格を熟知しており、彼を心配するジュノに適格なアドバイスを行う。