艦隊のシェフ(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『艦隊のシェフ』とは講談社『モーニング』にて2021年43号から連載中の海軍グルメを題材にした漫画作品。原作・池田邦彦、作画・萩原玲二、監修・藤田昌雄の3名により制作。第二次世界大戦下、太平洋で最前線にいた大日本帝国海軍の駆逐艦・幸風(さちかぜ)。その艦の中で兵士たちのために毎日食事を作り続ける男たち・烹炊兵(ほうすいへい)の姿を描く。

アメリカの軍艦で出された朝食を懐かしく語る庄司の話をヒントに、海原たちはパンケーキやハムエッグといった洋風の朝食を作ることにした。「こんな軟弱な食事で戦争に勝てるか」と憤る山崎少尉を海原が「アメリカを食ってやるんだという意味です」と説き伏せると、山崎も「この献立は『アメリカを食らう』必勝の献立である!」と兵たちを煽っていく。
そこにやってきた艦長の寺田。「この献立はアメリカ兵にとって我々の米飯と味噌汁の朝食にあたるものだ。無論、彼らにも生活があり国へ帰れば食卓を共にする家族もいよう。その事を忘れないでほしい。諸君の奮闘を期待している」と寺田は食事中の兵たちに話す。寺田は献立の意味を言い直したことに山崎が少し不満そうな顔をしているように見えた。「不満かね?」と尋ねる寺田。そして「我々は敵が憎くて戦争をしているんじゃない。それでも命あらば死力をつくすのが海軍だ」と言った。
その後の戦闘で幸風は敵艦を撃沈することに成功する。幸風の甲板には艦と共に沈んでいく米兵に手を合わせる日本兵たちの姿があった。たとえ敵であっても最大の敬意を払い全力で戦うという、寺田の心意気を表した名セリフである。

海原衛「真剣に女を想う男は誰だって『夢のQ作』だ…。胸を張れ」

タカオを幸せにできる保証はないと身を引く名取(左)に、海原(左)はタカオの得意料理を食べさせ、励ます。

名取はラバウルの少女・タカオと恋に落ちていた。名取は「戦争が終わったら日本で結婚しよう」とタカオに言っており、タカオ自身も「日本に行きたい」と言っていたが、三等兵の名取では夢物語のような話であった。心配した賀津夫も「そんな夢みたいなことを」と言って喧嘩になりかけるほどだった。
ある日ラバウルの青年・サヘージが名取に「タカオにプロポーズしてOKをもらった」と告げた。名取のタカオと結婚しようという思いは真剣だったが、戦争で自身がどうなるかわからない。そのため海原は名取に「タカオを不幸にするつもりか?」と釘を刺していたのだった。
「タカオ」というニックネームは落語家を目指していた名取が有名な古典落語の演目からとったものだ。花魁の高尾(たかお)に対する紺屋職人の久蔵(きゅうぞう)の一途な想いを描いた演目。三等兵が戦争中に恋煩いなんてと自虐する名取に海原は「真剣に女を想う男は誰だって『夢のQ作』だ…胸を張れ」と言い、タカオから教わった彼女の得意料理を振る舞い励ますのだった。
海原は仲間の事を決して見下さず励ます。そんな海原の優しさが滲み出る名セリフである。

湊谷賀津夫「戦争なんてしていないで力を合わせれば…きっと世界はよくなるはずなのに」

米のアイスクリームと日本の最中で食べ物対決をした際、2つを掛け合わせると全員が納得の美味しいデザートになった。しかし戦時中にこのデザートを作ることはできない。それを悔しがる賀津夫(右)と励ます海原(左)。

ある日、給糧艦・間宮(まみや)に羊羹を取りに行った賀津夫は、てんてこ舞いの艦内で羊羹を搬送中の台車に激突されて気を失い、間宮に乗ったままラバウルへ向かうことになった。航行中に米給糧艦・アークティックに遭遇するが、お互い戦闘には不慣れな艦のため交戦は避けることになった。しかしアメリカ側から食べ物で勝負をしようという提案がされる。アメリカはアイスクリーム、日本は自慢の間宮最中で勝負することになった。しかしお互い口に合わず、時間の無駄だったと引き揚げようとする。
そこで賀津夫はアイスクリームを米兵からもぎ取り、間宮の主計兵らに手伝ってもらい最中にアイスクリームを挟んだものを作り、再度両艦の乗組員らに食べさせた。すると全員から大好評を得たのだ。1人の米兵が「戦争が終わったらこのスイーツをアメリカで売り出す。その時は手伝ってくれ」と言い「もちろんだよ」と返す賀津夫。
無事に幸風に戻った賀津夫だったが、間宮でのスイーツ勝負が夢のように感じていた。しかしアイス入り最中の味は鮮明に覚えていた。「戦争なんてしていないで、力を合わせれば…きっと世界はよくなるはずなのに」と呟く賀津夫に海原は「カツオ!いつか…そんな日が来る」とニッと笑い、勇気づけた。
争うよりも力を合わせた方がより良いものができる、より良くなるのに各国は戦争をしている。17歳の若き賀津夫がそのような世界状況に悔しさを表す名セリフである。

『艦隊のシェフ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

海軍は船が沈まなければ食事はできる

戦争というと食糧難というイメージが強い。実際陸軍は物語内でも描かれたように補給が途絶えた際は、草や昆虫まで食すなど悲惨な状況であった。しかし海軍の場合は出港する際に航海中の食料を予め積んでしまうため、艦が沈没しない限りは食事ができないということはなかった。
その為、賀津夫がガダルカナル島の陸軍に合流した際「海軍さんはたらふく食ってるんだろうからな」と、陸軍兵から軽く嫌味を言われるシーンがある。

見た目がそっくりな柳原の家族

ドーナツを揚げる柳原の母、それを喜び両手を上げる子供の頃の柳原。奥には妹と弟の姿もある。

顎が特徴的な賀津夫の同僚・柳原だが、家族全員同じような顎であることがさりげなく描写されているシーンがある。
おふくろの味であるドーナツの回でドーナツを揚げる柳原の母と、柳原本人、弟と妹が描かれる一コマがあるが全員顎が強調されて描かれている。
特に顎に触れられてはいないのが、面白さを強調させる。

nao_13226
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@nao_13226

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