テンカイチ 日本最強武芸者決定戦(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『テンカイチ 日本最強武芸者決定戦』は、原作・中丸洋介、作画・あずま京太郎による作品。『月刊ヤングマガジン』にて連載。織田信長が天下を統一した架空の戦国時代が舞台。死期を悟った織田信長が、天下の座を与える後継者を選任するために、代理国獲合戦「テンカイチ」の開催を宣言した。天下を狙う大名や公家の者は、名代として戦いを行う武芸者を率いて大阪城へと集う。架空の戦国時代を舞台にそれぞれの思いや力をぶつけ合い、天下を目指していく戦国奇譚。

『テンカイチ 日本最強武芸者決定戦』の概要

『テンカイチ 日本最強武芸者決定戦』は、『我間乱~GAMARAN~』の中丸洋介が原作を担当し、『THE KING OF FIGHTERS~A NEW BEGINNING~』のあずま京太郎が作画を行った作品。「講談社」より出版されていた『ヤングマガジンサード』にて連載が開始されたが、『月刊ヤングマガジン』との合併により『月刊ヤングマガジン』に移籍し連載されている戦国奇譚。
作品は、織田信長(おだのぶなが)が天下を統一した架空の戦国時代が舞台。死期を悟った織田信長が、天下の座を与える後継者を選任するために、代理国獲合戦「テンカイチ」の開催を宣言した。天下を狙う大名や公家の者は、名代として戦いを行う武芸者を率いて大阪城へと集う。出場している武芸者の顔ぶれからも、果たして誰が天下の座を手に入れるのか予測のできない展開が待ち受けている。
実際の歴史とは違う流れの世界で、歴史に名を残している大名や武将の登場や、史実や伝説が語られている剣豪や武芸者などの、歴史上では決して交わることのない決闘に手に汗握る展開が話題である。

『テンカイチ 日本最強武芸者決定戦』のあらすじ・ストーリー

代理国獲合戦“テンカイチ”の開催

これは我々の知る歴史とは異なる西暦1600年。魔王と呼ばれる織田信長(おだのぶなが)が天下を統一して、10年の月日がたった時代。自らの死期を悟った織田信長は、天下の座を次の後継者へと渡すことにした。だが、闘争を欲した織田信長は、日本一の武芸者を代理人として殺し合いを行わせ、勝利した武芸者を連れてきた者に天下の座を渡すと条件を提示。代理国獲合戦「テンカイチ」の開催を宣言した。西暦1600年7月9日。大阪城に、天下を狙う16名の大名、そしてその大名に選ばれし16名の最強の武芸者が集い「テンカイチ」が開催された。

本多忠勝VS宮本武蔵

「テンカイチ」第一回戦第一試合。
徳川家康(とくがわいえやす)が後援者となる本多忠勝(ほんだただかつ)と、長宗我部元親(ちょうそかべもとちか)が後援者となる宮本武蔵(みやもとむさし)との試合が開始された。
号令とともに忠勝の視線が虚空に放たれたその刹那に武蔵の本能が警鐘を鳴らした、忠勝の鋭い突きが武蔵を襲ったのである。武蔵が試合に勝つには、忠勝の使用する名槍・蜻蛉切の長さである2丈1尺の間合いに入るしかない。そのために神速の突きをかわし間合いに入るが、忠勝が武蔵の動きに合わせて蜻蛉切を横に払い対応した。武蔵は忠勝の払いを防いだが、忠勝の手がやむことはなく、蜻蛉切を振り下ろしていた。振り下ろしに武蔵はギリギリかわすことに成功した。
忠勝は、自身の間合いに入りし、すべてのモノの侵入を許さない「金剛杵(ヴァジュラ)禁域」と呼ばれている間合いで、武蔵を近づけさせない。激しい攻防を繰り広げる2人だが、次第に武蔵は突きの速度を見切り、間合いに入ると忠勝に傷を負わせ、忠勝の負い傷を受けていないという伝説を終わらせた。2人はお互いの存在により本気の戦いができると高揚し、殺意の入り乱れる攻防が繰り返された。武蔵は忠勝の蜻蛉切の柄を切断し、1太刀入れようとしたが、忠勝も切られた蜻蛉切でさらに速度を上げた突きを繰り出す。武蔵は5連撃の突きを受けて疲弊していたが、忠勝に勝つために脇差を抜き、史実を超える早さで二刀流を開眼したのである。
ますます早くなる忠勝の突きや振り下ろしを、武蔵は二刀流を使いこなし、互いに手傷を負うほどの凄まじい攻防戦を繰り広げる。ついに決着をつける時が来た、忠勝は武蔵へ手向けの経を読み一撃への準備をし、武蔵はその忠勝の気配から自身も独特な二刀流の構えをとり、忠勝へと切り込んだ。そこで2人は、忠勝が左腕を犠牲にして、武蔵の心臓を貫き決着がつく結末を垣間見た。しかし忠勝はその結末ではテンカイチで家康に天下を獲らせるには不十分だと判断し、武蔵に結末とは違う動きで不意打ちをしたが、武蔵の稀代の本能が忠勝の殺意をとらえて咄嗟に反応して蜻蛉切を完全に破壊した。そして武蔵の最後の1刀が忠勝を切り伏せた。
それを見ていた家康が忠勝の許へと駆け寄るが、信長が「竹千代(たけちよ)、興をそぐな。何人たりとも死合に水を差すことは許されぬ」と言った。すると織田家の鉄砲衆が現れ、家康に対して銃口が向けられたが、家康は「忠勝は私の侍じゃ!傍らで看取るが主君の務めよ。何人にも止められるスジはない」と信長へ進言した。直後、信長の合図とともに発砲された。だが家康の前に忠勝が立ちはだかり、家康を守り死亡した。これにより試合は武蔵の勝利と忠勝の死で幕を閉じ、徳川15代の下260年間続いた「江戸時代」の歴史が訪れる可能性が潰えたのである。

風魔小太郎VS冨田勢源

「テンカイチ」第一回戦第二試合。
北条氏政(ほうじょううじまさ)が後援者となる6代目風魔小太郎(ふうまこたろう)と、近衛前久(このえまえひさ)が後援者となる冨田勢源(とだせいげん)との試合が血戰の森で開始された。
筋骨隆々の肉体を持つ風魔小太郎が先手を取る、風魔手裏剣を盲目の老人である冨田勢源に向けて放つが、勢源は難無く回避する。しかし拳を構えた小太郎が背後に回り込んでいたが、勢源はそれに合わせて小太刀で切り払ってくるなど2人は激闘を繰り広げる。勢源が音で状況を把握していると思い、激しい音を出して勢源の鼓膜を破り、耳を封じて肉弾戦と手裏剣による中距離攻撃を繰り出したが、勢源は肉弾戦にも、手裏剣にも対応してきたのである。それもそのはず、勢源は盲目となったが、異常な集中と五感すべてを使い、周囲から得られるすべての情報を感じ取ることできる「白夜眼」と呼ばれる力で激しい戦いに身を投じていたのである。決め手に欠ける攻防から、小太郎は自身が歴代最強の風魔小太郎と呼ばれる禁忌の力である風魔薬術「雅大蛇ノ六番(みやびおろちのろくばん)」を取り出し注射した。すると気配が変わりはじめ、勢源が態勢を整えたと同時に、先ほどまで見えていたはずの動きが格段に速くなり、防御が間に合わなかった勢源に重い一撃を与えた。雅大蛇は劇毒の薬なのだが、毒への耐性が高かった小太郎は、薬の効果もあり歴代最強の風魔小太郎になったのである。獣とかした風魔小太郎の攻撃に、白夜眼をもってしても、勢源の反応速度を上回る速度と極限まで強くなった格闘術を行ってくるので、勢源も対抗すべく白夜眼の範囲を狭めて集中するエリアを自身と小太郎にだけ集中した「白夜眼・天網荊棘(てんもうけいきょく)」という至近距離専用の技に変化させた。それにより、風魔小太郎の一寸先の未来を見ることができ、小太郎の速度に反応してくる。最速の2人の戦いにより試合が動く、互いに削りあい限界を迎えた最終局面で、小太郎の手刀が勢源の心臓を貫き、勢源もまた小太郎の首を切り伏せようとするが、刀を振り切る前に力尽きた。これにより風魔小太郎の勝利で決着した。

柳生宗矩VSウィリアム・アダムス

「テンカイチ」第一回戦第三試合。
織田信忠(おだのぶただ)が後援者となる柳生宗矩(やぎゅうむねのり)と、毛利輝元(もうりてるもと)が後援者となるウィリアム・アダムスとの試合が海上の天籟の船で開始された。
開始の合図とともにアダムスは宙へと跳ねた。死の舞(ダークダンス)の独特なステップとリズムを刻み始める。船上であることを利用し、波の揺れに合わせて柳生の間合いに入り込み、バランスを崩していた柳生を一蹴した。しかし、柳生も船の揺れにすぐさま対応し、短剣の攻撃を仕掛けていたアダムスの手を止めさせた。しかしここからが、本当の死の舞の始まりだったのである。短剣と刀の鍔迫り合いを利用して、柳生の動きを制御することで動きを封じ、短剣で一太刀あびせたのである。アダムスはこの鍔迫り合いなどを利用して動きを制御する「バインド」と呼ばれる技術と、死の舞の独自のリズムと間合いを巧みに駆使することでこれまで敵を葬ってきたのである。しかし柳生はアダムスの死の舞をお遊戯だと述べると「次は某の意のままに踊れ」と言い放つとアダムス以上に動きを制御した完全なバインドを繰り出してきた。
バインドにより反応できないアダムスは、柳生の華麗で、より残虐な人斬の技の柳生新陰流禁伝「無極円環(むきょくえんかん)」により、柳生宗矩がよしとするまで永遠に続く連撃を受け続ける。
アダムスは、反撃の余地もなくそのまま切られ続けて死亡した。これにより柳生宗矩の勝利で決着した。

上泉伊勢守信綱VS日野長光

「テンカイチ」第一回戦第四試合。
柴田勝家(しばたかついえ)が後援者となる上泉伊勢守信綱(かみいずみいせのかみのぶつな)と、羽柴秀吉(はしばひでよし)が後援者となる日野長光(ひのちょうこう)との試合が双龍の檻を舞台として開始された。角力(すもう)を武術としている長光は、開始の合図が完全に終わる前に踏み込んだ。突っ張りを繰り出す長光だが、上泉は禁じ手としている刀を抜くことなくすべての攻撃をかわしていく。
上泉は「無刀取り」で対格差のある長光の力を利用して投げ飛ばす。鬼の面をしている長光の素顔を、殺す前に拝んでおこうと、上泉が無刀取りで翻弄すると、檻にぶつかり面が割れる。割れたと同時に上泉は長光の真の力が開放されたことを理解した。母から名を与えられもせず、村で鬼神として相撲をすることで拝められてきた。しかし織田軍が鬼神退治に現れ殺されかけたが、織田信長に気に入られ、日野長光として織田信長に仕え、数々の戦場を鬼神の力で勝ち抜いていた。しかし天下統一がなされ、戦場がなくなり、退屈で死んでしまうと思った長光は、秀吉に東洋の医術を使った面を作らせて自身の自我を封印した。
鬼の面が割れ、鬼神であった頃の自我が戻ったことで、上泉への攻撃速度や攻撃の変化など先ほどとは比べものにならない強さになっていた。双龍の檻をも破壊する力と戦いに順応する対応力などがついた長光を認め、上泉もついに剣聖や武神と言われる力「天覚ノ門(てんかくのもん)」を開いたのである。
門を開いた上泉は長光の力を利用して刀の柄で長光を吹き飛ばしたのである。吹き飛ばされた長光も負けじと神の肉体と言われる体を駆使し、真空の刃・神舞太刀(かまいたち)を上泉へ放つと、上泉の刀の鞘を破壊することで禁じ手であった刀を抜かせることができた。神の肉体と神に技により最終鏡面の激しい戦いへと進んでいく。上泉は「天覚ノ門」のさらに奥にある奥ノ門「天戸門(あまともん)」を開き、目にもとまらぬ斬撃を繰り出してくる。長光の神の肉体に刀傷がどんどん増えていく、門を開いてからの上泉は1太刀ごとに切れが増していき、まるで生命力を取り戻したかの如く若返っていく奇跡を起こす。追い詰められていく長光は、人でなしの自分はここで死ぬと覚悟して試合を諦めかけた。すると上泉が、唯一の敵として認めた長光に「私と出会うためにここまで生きてきたのだ、わしについてこい。愛しているぜ、長光」と言い放つと、これを聞いた長光の様子が変わり始めた。長光も上泉と同じく「天覚ノ門」を開き、上泉の領域へと近づいていく、それを喜んだ上泉はさらに奥に存在する最奥ノ門「極落門(ごくらくもん)」を開き、2人はさらに強く、速くなっていく。長光は上泉の理想に近づくために、上泉は敵として認めた長光との戦いに歓喜し戦いを楽しんでいる。そしてついに最後の瞬間を迎える。上泉は神の領域へと行くと、人生最高の一撃を長光へと放つ。頸動脈を狙った不可視の一閃を長光は驚異的な反射神経と、自身の最高高度の骨で防ぐが地面へと叩きつけられた。そして最後だと思った長光は、上泉にとどめを刺されると覚悟したが、上泉は門を開いた反動として寿命が尽き、最後の力で刀を差しだし今生の願いとして、「千年無双」の夢を託した。これにより日野長光の勝利で幕を閉じた。

『テンカイチ 日本最強武芸者決定戦』の登場人物・キャラクター

武芸者

本多忠勝(ほんだただかつ)

本多流戦場槍術(ほんだりゅうせんじょうそうじゅつ)の使い手であり、「古今独歩の金剛石」または「金剛仁王」の異名を持つ武将。幾度もの合戦では、名槍「蜻蛉切」を片手に戦場を駆けまわり、戦いでは傷を1つも受けたことがないと言われている誰もが認める猛将。
生まれ持った体格と怪力、正確に間合いを見切る戦略眼など、戦のために生まれてきたような男である。長柄槍の大槍である蜻蛉切から繰り出される凄まじい速さの突きを武器に戦い、そのため、忠勝の間合いは「金剛杵禁域(ヴァジュラキンイキ)」と呼ばれ、兵や弓矢、銃弾などのあらゆるものが侵入不可能と言われる。
信長による天下統一後は大多喜城の城主を勤めていた。乱世が終わり、主である徳川家康に尽くす事もなくなってしまった虚無感から毎日のように酒に溺れ、心身共に緩み切っていた。そこに家康よりテンカイチへの参加を打診され、やる気を取り戻した忠勝は、家康の夢である天下統一を成し遂げるために参加を決意する。
1回戦第1試合で宮本武蔵と対戦。武蔵に蜻蛉切を粉砕され、1太刀をまともに受けて敗北した。最後は試合に乱入した家康を織田の鉄砲隊から守る形で銃弾を受けて致命傷を負い、家康に共に戦えたことの感謝を伝えて息を引き取った。

宮本武蔵(みやもとむさし)

当理辨助流(とうりべんのすけりゅう)の使い手で、「無双兵法者」の異名を持っている。新免無二斎の息子で、痩躯ながらも本多忠勝を凌ぐ上背と秘めた才能を持った年若き武芸者である。得物は試合当初は木刀で戦っていたが、のちに父親から借り受けた金重の太刀と脇差を使用している。
武蔵は幼少期に自身の剣才を開花させたが、自分より強い者と出会うことができないことで自暴自棄になり無気力な性格になってしまった。
忠勝との戦闘において、望んでいた強者と出会えたことで停滞していた才能が目覚め、試合の中で二刀流「二天一流」を発現させ、忠勝の突きを見切り一太刀を浴びせて勝利した。

風魔小太郎(ふうまこたろう)

風魔党忍術(ふうまとうにんじゅつ)の使い手で、「風魔の女帝」の異名を持っている。本名は「紅(くれない)」、6代目の風魔小太郎を襲名し風魔の頭領となる。筋骨隆々で長身の若い女性であるが、武才は先代の5代目を凌ぐと評されている。巨大な4つ又状の刃物に鎖がついた風魔手裏剣と徒手空拳を武器としている。
風魔手裏剣による遠方からの投擲と強靭かつしなやかな身のこなしから繰り出す格闘術により冨田勢源とのしのぎを削る。一進一退の攻防を続ける中で、勢源を仕留めるための奥の手として、風魔薬術「雅大蛇ノ六番(みやびおろちのろくばん)」を自身に投与し、獣のごとく身体能力と持久力で激闘を繰り広げる。投薬の影響で血圧が上昇し、受けた傷からの出血が止まらず消耗していく、体力が尽きかけるも最後の一撃で勢源の心臓を抜き手で貫き勝利する。

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