銃夢(木城ゆきと)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『銃夢(がんむ)』とは木城ゆきと原作のSFサイボーグ格闘漫画。集英社の雑誌「ビジネスジャンプ」で1991年3号から連載された。その独特な世界観が人気となり、OVA化、そして続編や前日譚も描かれた。作品の人気は衰えず、ゲームや小説化もされ、2019年にはハリウッドで実写映画化された。全身サイボーグの少女ガリィが、「機甲術(パンツァークンスト)」と呼ばれる格闘術を駆使して、様々な敵と戦う姿が描かれている。

モーターボール

クズ鉄町の住民のストレスコントロールの一環として行われるコロッセオでの戦いに並ぶイベントでモータースポーツの一種。とはいえ競技中のボディの破壊・殺人はルールのうちであり、犯罪には当たらないため実質的には殺戮ゲームである。ルールはモーターを仕込まれたボールを規定回数、コースを周回させ最後にボールとともにゴールした者が勝利。選手自体はコースを周回することは義務付けられていない。ボディに仕込んだ武器は使用してもよいが、射出・放出・爆発する武器は禁止。観客は公式のギャンブルを楽しむことができ、さらにAR(拡張現実)で選手の視界でレースを体験することもできる。

ザレム人の秘密=脳チップ

人間の脳と同等に機能する集積回路チップ。上記の貨幣として使用されるチップと似た形をしている。ザレム市民は成人の儀式「イニシエーション」で強制的に、生の脳から記憶と意識を書き替えた脳チップに置き換えられる。脳が作り物の脳チップに置き換えられるということは、自分の精神が作り物であるという破壊的な精神的苦痛を伴う。このことから基本的に脳チップに置き換えられたことは、機密扱いとして隠蔽される。イドやノヴァ博士はこの脳チップにバグが混入していたために、ザレムを追放されたとされる。
ディスティ・ノヴァ博士の考察によると「ザレム」は巨大な実験場であり、ザレム人は実験用モルモットである。脳チップは脳機能を規格化してストレスなくコントロールするためのもので、ザレム人の記憶も経験もすべてデータ化されている。

対自核夢(ウロボロス)

ディスティ・ノヴァ博士が開発した対TUNED用のシステム乗っ取りプログラム。五感を巧妙に仮想現実にすり替え、電子的に誘発された夢の中にとじこめることができる。

『銃夢』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ガリィ「コロしちゃおうかなー」

ユーゴ(左)とガリィ(右)

脊椎強盗がばれてしまい賞金首になってしまったユーゴ。隠れ家の廃墟で稼いだチップを数えていた。ザレムへ行くための資金は950万チップ集まり、あと50万チップで満額となる。そこにガリィが現れる。ガリィは以前から気になっていたユーゴの右手首の傷について聞く。実はユーゴには死に別れた兄がいて、その右手は兄の形見であった。自作の気球でザレムに行くことを夢見ていたがユーゴの兄は、その妻ナナがハンターに密告したことで死んでしまっていた。その話を聞いたガリィはユーゴに「自分よりも遠い何かに魅せられていたら嫉妬してしまう」とナナの気持ちが少し理解できると言う。
ユーゴはそれを聞いて「それじゃーおまえも俺をザレムに行かせたくなければ俺を殺すしかねェなーアハハ!」。ガリィは「どーしよーかなー?コロしちゃおうかなー」とユーゴの目を覗き込むが、ガリィは稼いだ賞金65万チップをユーゴに渡した。ガリィはこれですぐにザレムに行けると言い、ベクターのもとに無事に送り届けると約束した。ガリィが自分の気持ちよりもユーゴの夢を応援するという純粋な気持ちが伝わるシーン。

ジャシュガン「フフフここが世界だ!!ガリィ!」

モーターボールのルール上、コース上に残った選手が2名になった場合、「SHOW DOWN」(しょうだうん)といって1対1の組内によって勝負を決することになる。
以前ジャシュガンとガリィは市場で腕相撲での勝負を行っていたが決着がついていなかった。だから互いに思う存分戦いあいたいと思っていたところでの願ってもない機会を得てのセリフ。「フフフここが世界だ!!ガリィ!」ふたりの戦いにもはやモーターボールでのルールや勝利による栄光などには意味がなく、ただ純粋な戦いに身を投じていく。

ディスティ・ノヴァ博士「ゆっくりとね」

ラストシーン。お互いに想い合っていたフォギアとガリィは、ディスティ・ノヴァ博士と決着をつける時に別れたきりになっていた。それ以来ガリィを探して放浪していたフォギアが、コヨミと一緒に「イェール」へ赴く。ガリィのことを知っているはずのディスティ・ノヴァ博士と、彼が残したメッセージを発見した。後を追っていくとディスティ・ノヴァ博士のメッセージが残されていた。コヨミが読んでみると、ディスティ・ノヴァ博士は「ナノマン樹」と化してしまったガリィを研究していたこと、そして「ナノマン樹」の中にガリィの遺伝情報が残っていることを発見したことが分かった。ディスティ・ノヴァ博士のメッセージの最後には、「遺伝情報をもとに培養層で少しナノ操作を行えばガリィは再構成されるはずだ。ゆっくりとね…」と書かれていた。
フォギアが培養層の外皮を破ると人間として再構成されたガリィが培養層から流れ出てきた。
フォギアはガリィを抱き留める。
5年という長い月日をかけてずっと探し続けたフォギアとゆっくりと再構成され生身の人間になったガリィとの感動の再会である。

『銃夢』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

既存の武術や格闘技をもとにしたオリジナル戦闘術

ガリィの「機甲術」(パンツァークンスト)の構えはブルース・リーの創始した「ジークンドー」の構えがモチーフである。
モーターボール選手アジャカティの「地功拳」という武術やアーマートーゴーの「示現流剣術」など、他のキャラクターたちの戦闘術も、基本的には既存の武術や格闘技がモチーフとなっている。

ダマスカスブレード

ダマスカス鋼を使ったブレードのことで、作中でガリィが愛用している。ダマスカス鋼とは古代インドで開発されたウーツ鋼の別称。ダマスカス地方で作製された刀剣などにウーツ鋼が用いられていることから呼称される。何種類もの金属を一緒に鍛造することで木目模様のような紋様があらわれるのが特徴。この金属で作成された刀剣は非常に硬く刃こぼれしづらく、さらにしなやかで折れにくいとされている。本来の製鋼方法は失われてしまっていて、現在は積層鍛造されたものをダマスカス鋼と呼んでいる。

ザレムとイェール

この物語のビジュアルイメージでもある空中都市「ザレム」は軌道エレベーターであり、その先端にある軌道上都市「イェール」と一組の超巨大建造物となっている。この「イェール」と「ザレム」を合わせて「イェール・ザレム」→「エルサレム」。つまり「聖地」を意味するということが欄外に記載されている。

『銃夢Last Order』とのつながり

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