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morino333のレビュー・評価・感想

3月のライオン / March Comes in Like a Lion
10

繊細で美麗な画風で描かれる将棋と人の物語が、孤独や不安にそっと寄り添ってくれるだろう。

『将棋』と聞いて浮かぶイメージはどのようなものだろうか。
堅苦しく、何時間も盤面を囲んで睨み合う年寄りの趣味だと想像する方もいるのではないだろうか。
本作は『ハチミツとクローバー』など柔らかな作風が魅力な羽海野チカさんによる将棋漫画である。

17歳のプロの将棋棋士、桐山零。
彼は幼い頃に事故で家族を失っており、生活の中でも盤上でも深い孤独を背負っていた。
(※引用元:3月のライオン公式サイト)

過去の経緯から閉じた世界に篭ろうとしてしまう主人公・零が周囲の人々のあたたかさや将棋に対する熱意に触れる中で、
少しずつ他者への関わりに踏み出していく過程が丁寧に描かれている。

特に印象的なのは、精神的に不安定で生活が荒みがちな零をあたたかく迎え入れてくれる川本家の3姉妹あかり、ひなた、ももだ。
晩ご飯を食べに来ないかと誘っては帰りにはお惣菜をたくさん持たせてくれる。
当初はなにかと理由つけて誘いを断っていた零も、物語が進むにつれてあかりの相談に乗り、ひなたの受験勉強を手伝い、ももの迎えに行くようになる。
周囲の人の優しさを自信のなさや申し訳なさから受け取ることができなかった零が、能動的に他者に関わっていく姿には勇気をもらえる。
作中を彩る川本家の食卓シーンとあわせて食欲と涙腺が刺激されっぱなしだ。

本作はキャッチコピー【何かを取り戻していく優しい物語】のとおり、
失ったものは失ったまま前に進み続けるしかないという現実を見せつつ、それでも人は人のために深く優しくなれると思い出させてくれる。
どうか優しい人が優しい世界で生きていけるように、と願わずにはいられない物語だ。

ブルーロック / Blue Lock
9

今までにないサッカー漫画がここにある!

高校サッカー選手権決勝戦で敗退した主人公、FWの潔世一のもとに届いたのは日本フットボール連合強化指定選手の通知書であった。この一通の招待状が潔世一の、ひいては全国高校サッカー、FW選手300名の運命を大きく変えることになった。
強化指定選手として会場を訪れた潔、他300名は一人の男によって告げられる「日本サッカーがW杯優勝するために世界一のストライカーを誕生させる」と。
元日本代表の本田も香川もW杯優勝してないんだからカスだとも宣う。W杯を優勝するためにはラストプレー、GKと一対一の場面で味方にパスをして確実な1点を取ることより、迷わず自分でシュートを撃つような頭のイカれたエゴイストが必要だ。チームが勝つことより自分がゴールすることに快感を覚えるようなストライカーになれ、と。
この瞬間から世界一のストライカーになるべく300人のストライカーたちがブルーロックに挑むことになるのです。

よくあるサッカー漫画と違い、ブルーロックに参加した選手全員がフォワード。選手たちは与えられる試練をクリアしなければ今後一生、日本代表になる権利を失うという状況。最終的に勝ち残った上位5名がU-20日本代表選手になれます。
周りの人間は全員敵でありライバル。時に勝ち残るために協力し、時に蹴落とすために裏切る。
主人公だけでなく、ブルーロックに挑むキャラクター全員が個性的でおもしろく、展開もとにかく熱い!
生き残るためにそれぞれが自分の武器を磨き、工夫し、高めあっていく姿に目が離せなくなります!特にキャラクターがストライカーとして進化し覚醒するシーンは実際のサッカー選手のスーパープレーを見たときと同じように興奮して叫びそうになります!
サッカーが好きな人にもそうでない人にも、スポーツ漫画が好きな人にもそうでない人にもとにかくオススメしたい!
一度ブルーロックという、世界で一番フットボールの熱い場所を体験してみてはいかがでしょうか?

進撃の巨人 / Attack on Titan
9

圧倒的世界観と躍動的アニメーション

進撃の巨人は、世の中の不条理に立ち向かう人類の葛藤と、それぞれの正義を描いた物語である。
冒頭で超大型巨人が壁を破壊し、無垢の巨人が攻めてくる情景から始まる。街は破壊され、人々は逃げ惑うしか術がない。平和に過ごしていた日々が、突如として大きなものに奪われる光景は津波を彷彿とさせる。
主人公のエレンは、母を巨人に捕食され、この世の巨人を駆逐するという強い決意のもと、幼馴染のミカサやアルミンと調査兵団に入団する。エレンはリヴァイ率いる調査兵団のリヴァイ班に所属することになる。
調査兵団で利用される立体機動装置。これが躍動的なアニメーションの要因の一つだ。建物や木などにワイヤーを繋いで移動し、2本のカッターのような刃物で巨人の急所であるうなじを切断する。女型の巨人に森で追われる描写があるが、立体機動で移動するアニメーションはとてもスリリングだ。
アニメーション制作はWIT STUDIO。躍動的で動きのあるアニメーション制作を得意としている。冒頭の巨人登場のシーンにおいてもフレームワークに圧倒される。
人々の葛藤と絶望、巨人という脅威に立ち向う勇気、何気ない人の優しさに触れ、残酷な世界の中で美しさを引き立てる作品である。

漫才ギャング
1

天才的なツッコミには見えない。

売れていない漫才師の飛夫が、天性のツッコミセンスのある不良と出会って漫才師を続ける話です。漫才をしている品川さんが監督をしているので、期待していたのですがあまり面白くありませんでした。まず、不良が全然ツッコミセンスがあるようには見えません。ただ、突っ込んでるだけという感じです。なんか、俳優が落語家さんとかお笑い芸人とかを演じた際、違和感を感じるものなのですが、そういうところを現役のお笑い芸人だからこそ、なんとか演出でどうにかするかなと思ったのに、残念です。品川さんが監督するのだから、主役を漫才師にしてしまったほうがまだマシだったかもしれません。あと、飛夫と彼女のイチャイチャシーンが多すぎます。あれは、必要あるのでしょうか。確かに石原さとみは可愛いのかもしれませんが、ただでさえ、可愛い彼女がいる人てそれだけで幸せじゃんと思って応援しにくいのに、彼女が売れないことに腹を立て悲しい結末を迎えるとか喧嘩とかもなく、なんのために出てきたキャラなのかわかりません。結局、飛夫たちが最初から最後までそんなに困難もなく、うまくいくという、面白みのない作品になっています。結局、品川さんがお笑い芸人ってかっこいいだろうって撮りたいシーンを撮っただけのような作品です。

魔法少女まどか☆マギカ / まどマギ / Puella Magi Madoka Magica
7

一見子供向けアニメに見えるが…。

2010年~2011年に深夜アニメとして放映された今作は、蒼樹うめ先生がキャラクター原案をしており一見子供向けアニメの雰囲気だが、実際は子供が見る作品ではない。
その理由は、虚淵玄が全話脚本をつとめているからだ。このシナリオライターはゲーマーやアニメ好きの間では有名で、残酷な展開や殺伐とした話が多い。
だが、彼が書く物語はただ暗いだけではなく、とても面白い。今作も2話目まではいたって普通の日常系アニメと思わせる展開で、3話から「虚淵節」が炸裂する。

主人公のまどかと同じ中学校に通う魔法少女の巴マミが、目の前で敵の「魔女」という存在に殺されてしまう。大変なことに巻き込まれてしまった主人公のまどかは謎の転校生、暁美ほむらという人物に毎回のように助けて貰う。
次々魔法少女が脱落(戦いに負けて死ぬのも含め)し話が進むと、隠された事実が明らかになる。
実は暁美ほむらは、まどかのために魔法少女になり、まどかを守るために時間を巻き戻している女の子だった。最終話直前にて最強の敵にどうやっても勝てず絶望するほむら。そんな、理解者も周りにいない中たった一人で戦ったほむらの前に現れたのは、魔法少女になることを決意した、ほむらが守りたい存在のまどかだった。
魔法少女になるために、キュゥべえという存在と契約を交わし、まどかは魔法少女になる。彼女の願いは「すべての魔女を消し去る」というものだった。魔法少女が最終的に行き着く先は「魔女」。呪いを振りまき、人を襲う。まどかの願いにより宇宙が再編され、まどか本人も誰にも認識されない存在になってしまう。その状況になりようやく、まどかはほむらが時間を繰り返してきたことを知り、二人はようやく理解し合うことができた。是非映像でこの物語を見て欲しい。

ホムンクルス
10

トレパネーション

元は大企業に勤めていた36歳の名越進が、医大生の伊藤と出会うことで運命が大きく変わっていく物語です。
人生に迷う名越は仕事を休み、車中泊をして公園のホームレスと交流しながら毎日を過ごします。そんな中、伊藤に『トレパネーション』という手術を受けないかと持ち掛けられます。報酬に釣られそれを受けた名越には、人には見えないものが見えるようになり、イタコのように人々の悩みを解決できるようになります。やがてその悩みを見ることが出来る目は、自分自身や最も身近にいる人物である伊藤に向けられるようになります。
名越自身の過去やトラウマが彼と出会う人とリンクし、共鳴していく様が見どころです。一番最初に出会うヤクザの組長のトラウマを解決するシーンは度肝を抜かれました。
そしてだんだん名越の深層心理や秘密に焦点が移っていきますが、全てではないにしろ共感できる部分がありました。無機質な機械や数字、金にだけ囲まれ生きている人と距離を縮めたり愛し合ったりすることができず病んでいく…この悩みは人間なら感じたことがあるはずです。
作者山本さんの人間を書く力が本当にすごくて、最後まで一気に読めてしまいます。
絵もリアルで、慣れてない人にはちょっと刺激が強いかもしれませんが、おすすめの作品です。