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cws4のレビュー・評価・感想

進撃の巨人 / Attack on Titan
10

進撃の巨人の魅力とは何か

まず、「進撃の巨人」とはどんな話なのか。何を描いているのか。「どんな作品?」とこの作品を見たことがない人から聞かれたとき少し言葉に詰まって困る人は多いだろう。悩んだ挙句「すごい作品だから見て!」と言うしか無くなってしまう。
しかし、なぜ説明に困ってしまうのか。それは、それぞれのseasonによってどんな作品か、答えが変わってくるからだ。
season1ではグロテスクなホラー作品でありながらも、親が死んだ少年少女が訓練兵として仲間の助けを借りながら大きな敵(巨人)に立ち向かうという、ファンタジー作品にありがちな展開も踏襲している。
season2では訓練兵時代に同じ釜の飯を食った仲間それぞれの話にフォーカスがいく。その先にはまさかの同期による裏切りや意外な過去が明かされるが、ここでもまだ『進撃の巨人』の世界とは何なのかは分からない。
season3part1ではさらに、「巨人と戦う」という前作のテーマから離れ、「巨人とは何なのか」を隠し続ける王政府との戦いになる。ここでは巨人の存在すら忘れかけるくらい人間ばかり出てくる。
season3part2ではついに「世界の歴史の秘密」が明かされる。そこに到達するまでの戦いの描写は、命と戦果を天秤に掛ける「戦争」を想起させられる。
season4ではついに、外の世界の出来事がメインになる。
外の世界では第二次世界大戦時のような生活をしており、飛行船が飛び、機関銃の弾が塹壕の上を飛び交うような戦争をしていた。ここでは現実の人類の歴史をオマージュするような形になっており、初期の頃の「巨人を駆逐する」というセリフでも全く意味が変わる。
このように全体を掴もうとすると、どんどん世界が広がる作品なので、重大な秘密をネタバレしてしまいそうになる。「巨人の秘密」や「この世界の秘密」を明らかにするという話だと言ってしまうと進撃の巨人の全てを表せていないような気がしてしまう。
私が思うこの作品の魅力は登場するキャラクター全員が人間味があり、作中のキャラクターと同じ視点で秘密は何なのか知りたくなるところだ。
口では語らないはずの心の中の声をそのまま台詞にしているアニメはよくある。これには登場人物の心の中を見ている人全員が共有できるという、良い点がある。しかし、現実では心の中を全て口に出して言ってしまうような人物は居ないに等しく、現実に接する人間らしさが失われてしまう。進撃の巨人では、心の動きは表情やキャラクターの言葉の端にみられる。それ故に、見る人や解釈によって違う見方が出来てしまう。だからこそこの作品は人々を魅了するのではないか。

鬼滅の刃 / Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba
9

生と死の物語、鬼滅の刃

とてもせつない物語、それが鬼滅の刃です。
ざっくり説明すると妹、禰豆子を鬼にされてしまった炭治郎が禰豆子を人間に戻すために鬼と戦うお話です。
1話で家族を鬼に惨殺されるというとても悲しいところから始まりますが、この物語は生と死がテーマになっていると思います。
なので、亡くなるキャラも多いですし、悲しいシーンもとても多いです。
ですがこの作品の素敵なところは、すべての登場人物に物語があり、感情が通っているところだと思っています。
一回きりしか登場しないキャラクターにも生と死の物語があってそれを描いている、それがとても素敵だと思います。
悪者だけが死に、勇者が勝つ、そんな物語ではないです。
悪者である鬼にも鬼になってしまった経緯、そのことに対しての鬼の気持ち、それが細かく表現されていて素晴らしいです。
誰が生き残るかわからない無慈悲な展開、とても緊張感が高まります。
妹を人間に戻すための戦いの物語ではなく、家族の在り方や、仲間との絆、幸せとは何か、それを教えてくれるのが鬼滅の刃だと思います。
物語を読んでいくにつれてキャラクターの過去やどんどん性格が紐解かれていくので自分の好きなキャラクターを見つけるのも楽しいです。

来世ではちゃんとします / 来世ちゃん
8

現代を生きる「私たち」を描く

「性的マイノリティ」や「LGBTQ」という言葉を耳にする機会が増えて久しい。
この作品に登場するキャラクターたちは、いわゆるこれらの言葉で語られる人々だ。
しかし、そこに差別や偏見のようなものは感じられない。
むしろ「いるよね、こんな人」と、登場するキャラクターに親近感すら覚える。
また、同じように性的マイノリティを感じている読者にとって、登場人物たちの生き様は共感できる部分が多いだろう。
彼ら彼女らは自らのどうしようもないセクシャリティに悩み、苦労する。
時には周囲の善意、悪意によるプレッシャーや、自己嫌悪に押しつぶされそうになるが、結局は「来世ではちゃんとします」とそんな自分を受容する。
こうした思考のサイクルは、誰しも経験したことがあるのではないだろうか。
私自身、自らのセクシャリティに悩んでいた時期にこの作品と出会った。
コミカルな4コマ漫画の中に時折、自分の心の内を代弁してくれているようなセリフがいくつも登場した。
その度に共感し、また不安になり、それでも自分くらいは自分を受け入れようと思えた。
確かに、生々しい描写はある。
単行本の表紙のインパクトに戸惑う人もいるだろう。
しかしこの作品で描かれているのは、他でもない「私たち」である。
そういった描写もセクシャリティも、全て現実に存在するものだからこそ、この作品は共感できる。