Cocco

Konta16gのレビュー・評価・感想

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Cocco
8

裸足の歌姫から素顔を隠した歌姫へ…その進化と真価

「強く儚い者たち」でお茶の間に一気に広まった彼女の歌。その独創性と、独自の世界観は今ままでの女性シンガーの殻をある意味破るようなモノだった。

彼女はその独自の世界観を「創り上げたモノ」ではなく「自分が暮らしている世界」として体験しているが故、TVの生放送で歌を歌い切った後、裸足のままスタジオを去り、そして音楽業界からも消え去ったのだ…。
それでも彼女は「歌いたい」と願い、別名義での活動を皮切りに、再度ステージに立つ。ただし、それは彼女にとって嬉しく楽しいものではなかった。
自分が見た事のない世界。自分が受け止められない世界。自分が知らない苦しみ。様々な困難が彼女を襲う。
2007年~2008年に行った全国ライブ。訪れた場所はどのような「危機」に直面しているのか、ファンから託された手紙をもとに彼女はその場所を訪ね、そして衝撃を受ける。
彼女は沖縄産まれだ。金網の向こう側からは外国。米軍基地・貧困・差別・暴行事件・治外法権……。そんな中で育った彼女は「沖縄ばかりが苦しい」と、いつしかそう思っていた。
だが、事実は違った。沖縄でなくとも、日本の至る所で問題を抱え、その場所で暮らす人々の平和が脅かされ、苦しんでもそこで生き続けていた。
それを知った彼女はライブ後、ファンレターをくれたファンやそのライブに集まった人々に「沖縄ばかりが苦しいワケではなかった。知らなかった、ごめんなさい……」と涙を流して頭を下げる。そしてそれを各地で繰り返しライブを走り切った。
走り切った、と言ってしまえば聞こえはいいのかもしれない。2Daysライブを終えた彼女は楽屋に一切誰も入れず、鍵をかけそして泣き叫んだ。
―――自分の【歌】では何も【救えなかった】と……。
そして、彼女は二度目の音楽業界からの失踪をすることなる。それから彼女は海外を転々とし、また、【歌うこと】によって誰かを救えるという【希望】を込めてシンガーとして帰ってきた。
新しい彼女の熱量はどんどんと増していった。だが、25周年という節目に彼女は大きな決断をする。
「素顔を今後一切メディアには出さない」
素顔をいままでさらしてきた彼女に何があったのか。彼女は多くは語らなかった。ただ「顔が見たくなったらライブに来てね」と、それから毎月のように大なり小なりのライブ活動を続けている。

誰かに自分の歌が届けばいいと思っていた彼女の進化が今ここにある。
そして、その【真価】がこれから彼女の歌声できっと証明されていくのだろう……。