こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話

『こんな夜更けにバナナかよ(筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち/愛しき実話)』は渡辺一史のノンフィクション小説。第35回大宅壮一ノンフィクション賞、第25回講談社ノンフィクション賞を受賞している。2018年に大泉洋の主演で映画化された。進行性筋ジストロフィーという難病を抱えた鹿野靖明がおくる、ボランティアたちとの交流が物語を進める。不自由な体だがとことん自由奔放な鹿野の言動がユーモアたっぷりに描かれ、障害と介助の枠を越えた自立生活が垣間見える。

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こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話
10

タイトルを見て敬遠した人はぜひ見てほしい!

筋ジストロフィーを患い、余命宣告をされた鹿野靖明が、家族の力を借りずに自立して生活をしたいとボランティアを募り生活していくストーリー。
鹿野が自立した生活をし始めたのには、こんな病気に産んでしまったと母親が申し訳ない気持ちになって、自分のために生きることをやめてしまうのは嫌だと思ったからだ。
しかし、鹿野は集めたボラに暴言を吐き、横柄な態度で日々接していた。それを苦に辞めていくボランティアもいた。そんな時に現れたのが、美咲だった。
美咲も初めは横柄な鹿野に対し嫌悪感すら感じていたが、次第に鹿野の孤独をわかるようになり、お互い惹かれあっていく。
管につながれて、人生を病院に閉じ込められたまま過ごすことよりも、どんなに命が短くなろうとも、楽しく人生を全うしたいと望む鹿野だったが、状態は日に日に悪くなり、ついに倒れてしまう。
しかし、鹿野ボラたちはあきらめなかった。声を失った鹿野に交代で付き添い、寄り添って美咲が見つけてきた方法を医者に内緒で試し、何度も何度もあきらめずにチャレンジし、再び声を取り戻すことができたのである。
鹿野が生きることが、鹿野ボラたちにとっても希望であったからこそ、彼らはあきらめなかったのである。
障がい者として鹿野を見るのではなく、一個人として鹿野を見てほしい。

冒頭の暴言やセクハラ的要素は少しやりすぎな感じがありますが、鹿野という人間が何を考え生きたのか、鹿野ボラたちの気持ちを汲みながらぜひ最後まで見ていただきたい作品です。