花野井くんと恋の病(森野萌)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『花野井くんと恋の病』とは、森野萌による少女漫画。講談社『デザート』にて2018年2月号から掲載された。恋する気持ちがわからない女子高校生の日生ほたるは、ある日、男子高校生の花野井颯生から告白され、期間限定でお試し交際をすることになる。好きな子には何でもしてあげたい花野井の行動に戸惑うほたるだが、一緒にいるうちに徐々に距離を縮めていく。恋を知らない女子高校生と、愛が重すぎる男子高校生といった正反対の2人が、少しずつ恋人として進んでいく姿を描く。

『花野井くんと恋の病』の概要

『花野井くんと恋の病』とは、森野萌による少女漫画で、講談社『デザート』にて2018年2月号から掲載されている。作者の代表作である『おはよう、いばら姫』は「このマンガがすごい!2016オンナ編で」20位にランクインした。
本作も第44回講談社漫画賞少女部門にノミネートされ、第45回講談社漫画賞少女部門を受賞。第9回「ananマンガ大賞」で準大賞、「全国書店員が選んだおすすめコミック2019」では一般部門10位に選定された。
また、2020年10月に第2話の内容のボイスコミックが制作され、同年10月27日より『コミックDAYS』(同社)でも配信されている。2024年、テレビアニメ化が決定した。

まだ恋する気持ちが分からない高校1年生、日生ほたる(ひなせほたる)は、雪の降る日に顔も頭も偏差値80超えと噂される花野井颯生(はなのいさき)に、傘を差し出す。
そのことがきっかけで、「僕と付き合ってください」と花野井から告白されてしまったほたる。愛が重すぎる故に、極端な行動をとる花野井に戸惑ってばかりのほたるだが、「恋」を知ってみたいという気持ちから、クリスマスまでの期間限定でお試し交際をすることとなる。
交際を通じて今まで知らなかった様々な感情を経験し、ほたるの成長していく姿と花野井の心境の変化、そして周囲の友人たちの恋愛事情を描いた青春ラブストーリーとなっている。
読者からは、恋を知らないほたると、恋人への向き合い方がわからない花野井が、真摯に相手と向き合おうと模索していく姿に胸を打たれるとの声が挙げられている。

『花野井くんと恋の病』のあらすじ・ストーリー

花野井とほたるの出会い

高校1年生の12月、日生ほたる(ひなせほたる)は、となりのクラスメイトの顔も頭も偏差値80超えと噂されている花野井颯生(はなのいさき)が、フラれる現場を友人と目撃する。その後、雪の降る中公園のベンチで座っている花野井を見て、放っておけなくなったほたるは彼に傘を差し出した。
これがきっかけで翌日、ほたるは教室に現れた花野井から、「僕と付き合って下さい」と突然告白を受けることになる。だが、恋愛経験がなく、特別な誰かを好きになったことがないほたる。恋する人の気持ちがわからないため、丁重に断りを入れる。
しかし、花野井は1度断われただけでは諦めず、ほたるの好みの人になれるように髪を短くしたり、雪が降り積もる夜の校庭でほたるのヘアピンを探したり、待ち合わせには2時間も前から待っていたりなど、熱烈なアプローチを続けていく。
そして花野井のひたむきな想いに、徐々に心を動かされるほたる。
恋に真っ直ぐな花野井と一緒にいれば、人に恋する気持ちがわかるようになるかもしれない、そして自分が恋をしたらどうなるのかを知りたいと思い始めたほたるは、最終的にクリスマスイブまでの期間限定という約束で、花野井とお試し交際を始める。

お試し交際延長

誕生日に真っ先に会いに来てくれたり、いつでも自分の気持ちを優先してくれたりなど、花野井と過ごす時間は初めての経験だらけで、「付き合う」ということに翻弄されっぱなしの1ヶ月を過ごすほたる。同時に、自分も花野井を喜ばせてあげたいという気持ちが芽生えるなど、さまざまな感情を持つようになる。
お試し交際が終了するクリスマスの日、もう少しで何かが掴めそうと感じたほたるは、花野井に交際延長を打診する。花野井はあっさりと承諾し、お試し交際は無期限延長というかたちになった。

こうして無期限のお試し交際に突入することになった2人は、初デートをしたり、高校の同級生の浅見響(あさみひびき)、柴村月葉(しばむらつきは)、浅見の恋人である倉田圭悟(くらたけいご)と初詣に出かけたりして、少しずつお互いを知ってく。
さらにほたるは、読書好きな花野井のことをもっと知るため、書店でアルバイトを始めた。
そこで出会ったアルバイト先の先輩である里村紗都美(さとむらさとみ)が、ほたるの様子を見に来た花野井に興味を示し、ほたるに彼を紹介してほしいと懇願する。
ほたるは、花野井に迷惑をかけたくない気持ちと、里村が良い人であるが故断りにくさを感じ、葛藤する。しかし、里村が花野井を気になっていた理由は、推しのアイドルと花野井が似ているからという理由だったことが分かり、ほたるは内心ホッと胸をなで下ろす。
それ以降里村は、花野井が書店に顔を出す度に彼が推しのアイドルだったら、と妄想するようになってしまい、毎回ほたるに笑われるようになっていた。

お試し交際終了

花野井と一緒に時間を共にするうちに、ほたるは花野井のことをもっと知りたい、もっと力になりたい、もっと笑ってほしいと感じるようになっていた。そんな気持ちが恋なのだと気づき、花野井に恋をしていると自覚したほたるは、改めて自分から彼に告白しようと決意する。

そんななか、バイト先の書店に新人として八尾創平(やおそうへい)という男子高校生が入ってくる。八尾とほたるは同じ小学校出身であるため、旧友との再会に喜ぶ八尾だが、ほたるは戸惑いの表情を浮かべた。
実は、ほたるには八尾関連の苦い思い出を抱えていた。
ほたるの小学生時代には、佐倉(さくら)という友人がおり、彼女は八尾に片思いをしていた。
しかし、ある日、八尾が泣いているのを見かけたほたるは、彼の話を聞いて優しく慰める。そのことがきっかけで八尾とほたるは仲良くなるのだが、クラスメイト達は、ほたるが八尾を好きなのではないかと噂するようになる。
最終的に佐倉からも誤解されてしまい、逆恨みとしてロングヘアの髪をバッサリ切られてしまったほたるは、恋が人の心を簡単に変えてしまうことや、友人を作ることへの恐怖心を植え付けられてしまった。
バイトの帰り道、八尾はほたるに話しかけようとするが、ほたるを迎えに来た花野井に牽制される。八尾の存在が、花野井を不安にさせてしまっていることに気付いたほたるは、バレンタインにデートをしようと提案する。
一方、帰宅した八尾は、小学校の卒業アルバムを眺め、ほたると仲が良かった時のことを懐かしんでいた。そんな時、ふと見たあるクラスのページに花野井の姿を見つけ、同じ小学校だったことを初めて知る。
花野井はほたるのことを小学校時代から一方的に知っており、その頃から彼女に恋をしていた。
また、八尾も可愛がっていたペットの手術が不安で泣いてしまった時に、ほたるが側で優しくしてくれたことで好意を寄せるようになるが、八尾自身恋という気持ちに疎く、まだ自覚をしていなかった。

バレンタイン当日、ほたるはバレンタインチョコを渡しながら「花野井くんに恋してます」と告白したものの、その好きは本当に恋なのか分からないと自信を失った花野井からは、少し会うのを控えてみようと提案され戸惑ってしまう。
毎日会っていた花野井と距離を置いたほたるは、今まで花野井と過ごした時間を振り返り、あの時感じた嬉しさや楽しさは決して間違いではないと確信し、気が付けば「花野井くん会いたい」とメッセージを送っていた。
すると、メッセージを読んだ花野井はすぐにほたるのところへ現われ、今まで会えなかった寂しさを埋めるようにほたるを強く抱きしめた。ほたるは、「上手くいかなくて泣いちゃう時もあるかもしれないけど、その相手は花野井くんがいい」と言い、花野井への想いを再度強く伝える。
その言葉を聞いた花野井の目には嬉し涙が浮かんでいた。その後ほたるの手を取り、「…大好き」と言いほたるのおでこへキスを落とす。
長いお試し交際が終了し、この日から2人は本当の彼氏彼女になった。

花野井とほたるの初めてのケンカ

長いお試し期間を経て、ほたると花野井は、晴れて本当の恋人同士へとステップアップすることができた。正式に恋人になってから初めてのデートでペアリングを購入したり、プリクラを撮ったりと、恋人らしいことをして幸せな日々を送っていた。
そして、今まで頑なにクラスメイトとは打ち解けようとはしなかった花野井が、球技大会を通じて倉田との友情を育んだり、突然帰国した父親にほたると一緒にいるところを見られ「雰囲気が柔らかくなった」と驚かれたりするなど、少しずつ変化の兆しを見せる。

ある日、花野井の父親が花野井に内緒でアルバイト先の書店に現われ、ほたるは休憩時間に一緒に喫茶店に行くことにした。そこでほたるが、花野井が友達と写っている写真を見せたりすると、花野井の父親は息子の成長を素直に喜んでいた。
花野井の幼少期は病弱で心配していたが、中学校から勉強も部活も熱心に取り組み、自活できるようになった姿を見て、安心して海外に行けるようになったと花野井の父親は話す。
花野井が英語が堪能な理由は、いつかずっと両親と一緒に居たいという想いがある故の努力だった。そんな花野井の気持ちを密かに知っていたほたるは胸を痛めた。
ほたるから連絡を受けた花野井が息を切らして2人の前に現われ、父親は名残惜しそうに帰宅する。
ほたるは、父親がとても良い人で花野井を大切に想っていることを知れたけれど、自分1人を残して他の人の元へ帰って行く両親の姿を見るのは辛いのではないかと、涙をこぼしながら花野井に尋ねる。
そんなほたるの頭を撫でながら「僕はもう大丈夫だよ。ほたるちゃんがいるもん」と花野井は笑顔で答えた。
穏やかに笑う花野井を見て、いつの間にこんな風に笑うようになったのだろうと、花野井の心に近づけたことを嬉しく思った。
そんな矢先、イギリスにいる祖母が会いたがっているという連絡があったため、花野井は父と一緒に海外へ行くことになり、1週間2人は遠距離恋愛をすることになった。
出会ってからこんなに距離を空けたことがなく不安に思っていたが、ビデオ通話で花野井といつものように会話をしている内に、今は大丈夫になったと強く思えるようになったほたる。
しかし最近、妹のともりは、打ち込んでいるフィギュアスケートの調子が悪く、度を超してイライラしていた。そして、姉のかがりやほたるに八つ当たりを繰り返し、とうとうともりは家を飛び出してしまう。
時間が経っても帰ってこないともりを心配したほたるは周辺を探し回るが、一向に見つからない。その時、スマホに花野井から着信があり、ともりがいなくなった話しをすると、目の前には帰国したばかりの花野井が立っていた。
事情を把握した花野井はほたると一緒にともりを探すのを手伝い、結果的にともりは小学校のプールで見つかる。必死になって探してくれた2人に胸を痛めたともりは、八つ当たりしたことを泣きながら謝罪した。
その後2人きりになった花野井とほたる。ほたるは「花野井くんがいない間、時間が進むのすごく遅くて…今日会えてすっごくすっごく…嬉しい」と顔を赤らめながら話し、その言葉を聞いた花野井も嬉しそうにほたるへ触れる。
初めての遠距離恋愛を経て、さらに気持ちを近づけ合った2人だった。

ほたると仲良く下校している時、花野井は自分たちが同じ小学校出身で、その時からほたるに恋をしていたことを打ち明けようとする。
その時、花野井達は佐倉というほたるの友人とすれ違う。花野井は彼女がほたるの髪を切った女の子だということにすぐにいち早く感付き、まだ佐倉の存在に気がついていないとほたるの視線を遮るため、力いっぱい抱きしめた。
同じ頃、八尾はコンビニで同級生から、小学校時代にほたるが佐倉に髪を切られたことを初めて聞かされる。その原因が、八尾とほたるの仲を嫉妬した佐倉の行いだと知り、彼はショックを受ける。その話を同級生は単なる噂だと軽くあしらうが、八尾は急に髪が短くなり暗い表情でいたほたるを覚えており、そのことが真実であることを悟った。さらに、佐倉は中学生になり引っ越したとのことだったが、最近地元に帰ってきているという情報も知る。

ある日、里村は花野井が佐倉と待ち合わせをしているのを目撃する。ほたる一筋の花野井が他の女の子と2人きりでいることに違和感を感じ、里村は思わず写真を撮るが、バイトの休憩中にその写真を八尾に見られてしまう。
八尾は里村に写真を撮った場所を教えて貰い、花野井の様子を伺うことにした。
しかし、偶然にもその場所にほたるも来てしまい、佐倉と花野井が待ち合わせしているのを目撃する。ほたるは、花野井が佐倉に何かするのではないかと不安になり、八尾と一緒にカラオケ店に入る花野井と佐倉の後を追った。

一方、佐倉は花野井にほたるの髪を切った経緯を説明し、あれからずっと罪悪感が消えないので、彼氏である花野井からほたるへ謝罪するチャンスを作ってほしいと頼み込む。
その言葉を聞いた花野井は、ほたるを傷つけたうえに都合の良い言い分をした佐倉をさらに許せないと感じ、「君は絶対にほたるちゃんを近づけてはいけない人間だった」と言い捨て、鞄からハサミを取り出し、佐倉を威嚇した。
その時、ほたると八尾が部屋に入ってくると、佐倉は泣きながらほたる達に助けを求め、八尾は怯えている佐倉を部屋から退出させる。
花野井は、佐倉には自分からコンタクトを取って自ら近づき、佐倉も簡単に誘いに応じたこと、佐倉がほたるの髪を切った場に当時自分も居合わせていたこと、佐倉をほたるに近づけたくなくて実力行使に出たことをほたるに明かす。ほたるは花野井が手にしているハサミを見て、「こんなこと、花野井くんにだけはしてほしくなかった…!」と泣きながらその場を離れ、2人の気持ちはすれ違うようになってしまう。

初めての仲直り

後日、泣いてばかりのほたるはこのままでは駄目だと決意し、過去と向き合うために佐倉に会いに行く。会いに来たほたるに佐倉は心からの謝罪の気持ちを示し、2人は無事に仲直りを果たす。

同じ頃、花野井もどうしていいかわからず悩んでいたところ、友人の倉田からまず佐倉に謝罪した方がいいとアドバイスを受ける。
自分1人ではうまくいきそうになかったところを八尾にアシストしてもらい、花野井も佐倉に謝罪することができ、今後もう二度と怖い思いをさせないと約束した。
今回、倉田と八尾のおかげで自分が一歩踏み出せたことや、その過程で改めてほたるの存在が自分自身の支えになっていることを、強く確信する花野井。この気持ちを、今すぐほたるに伝えたいと思った花野井は、したいことノートに一緒に帰ろうと書き、ほたるの靴箱へ入れた。

その後、佐倉の件でずっとすれ違っていた2人だが、お互い抱えていた気持ちを少しずつ伝え合う。
当時、髪を切られた自分のことを救えなくて、ずっと花野井が苦しんでいたことを知ったほたるは、優しく花野井を受け止める。そして、ほたるは「花野井くんがたくさん笑わせてくれて、幸せをくれたんだよ」と微笑み、2人は抱き合った。
初めてのケンカを乗り越えて、さらに絆が深まった2人だった。

『花野井くんと恋の病』の登場人物・キャラクター

主要人物

日生ほたる(ひなせほたる)

CV: 市ノ瀬加那(ボイスコミック)
高校1年生の女子。おとなしい性格で、小柄で素朴な容姿をしている。趣味は食べること。
恋愛経験がなく、特定の人に恋する気持ちがわからないほか、付き合うということに対してもあまり積極的ではない。
12月のある日、隣のクラス花野井が彼女からこっぴどくふられる現場に遭遇。その後、公園で雪降る中、傘も差さずにベンチで俯いている花野井に傘を差し出した。その出来事がきっかけに、翌日花野井から突然告白されることになった。
相手が喜んでくれるならと、自分を犠牲にしてまで必死になる花野井の気持ちがわからずしばらくは拒絶し続けるが、恋に対する未知の気持ちを知りたいと、クリスマスまでの期間限定という約束で、花野井との交際を決意する。
のちに、花野井への恋心を自覚することとなり、真剣交際へと発展した。

花野井颯生(はなのいさき)

CV:内山昂輝(ボイスコミック)
高校1年生の男子。かなりのイケメンな上、偏差値80オーバーの秀才との噂もあり、校内での女子人気は高い。
一方で、少々とっつきにくい性格で、行動が極端になりすぎる面がある。好きになった人対しては非常に優しい反面、一方的な愛情を過剰に押し付ける傾向があるため、相手が勝手に幻滅し、去っていくことが多い。
基本的に大切にしたいのは1人だけでいいと考えており、ほたる以外にはかなり冷たい態度を取ることが多い。
実はほたると同じ小学校出身で、たびたび公園で遊んでいるほたるを見かけており、その頃から惹かれていた。
ほたるが佐倉に髪を切られる現場に遭遇しており、その時救えなかったことをずっと後悔している。

ほたると花野井の同級生

八尾創平(やおそうへい)

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