配達人~終末の救世主~(韓国ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『配達人~終末の救世主~』は2023年5月よりNetflixで全世界に配信された韓国ドラマ。深刻な大気汚染により、防護マスクなしでは生きられなくなった2071年の朝鮮半島を舞台に、そこで生きる人たちのドラマを描いた作品。原作は2016年から2019年にかけて連載されたイ・ユンギョンの同名のウェブ漫画。700万人を動員した映画『監視者たち』を手掛けたヒットメーカー、チョ・ウィソクが監督と脚本を務めた。

『配達人~終末の救世主~』の概要

『配達人~終末の救世主~』とは、2023年5月12日よりNetflixで配信を開始した韓国ドラマ。舞台となるのは、彗星の衝突により、深刻な大気汚染が起こり防護マスクなしでは生きられなくなった2071年の朝鮮半島。生活必需品である酸素や食料を届ける「配達人」の活躍を中心に、そこで生きる人々のドラマを描いた作品である。生き残った国民は「一般」「特別」「コア」の3階級に分けられ、身分を示すQRコードを手の甲に刻まれている。QRコードをもたず、どの階級にも属していない「難民」にとっては、生活費需品を届ける配達人になることだけが、「難民」から脱することができる希望だった。

原作は2016年から2019年にかけて連載されたイ・ユンギョンの同名のウェブ漫画。原作では女性が主人公だったが、ドラマ版では男性が主人公に変更されている。

全6話と韓国ドラマにしては短い構成だが、映画さながらのスケール感で描かれた近未来の韓国とその壮大なストーリーが話題となり、Netflixの非英語部門のランキングでは、配信開始以降、2週連続で1位を獲得した。監督は観客動員700万人という大ヒットとなった2013年の映画『監視者たち』や、実際に起こった巨額金融詐欺事件を題材にした2016年の映画『MASTER/マスター』を手掛けたチョ・ウィソク。チョ・ウィソクにとって、『配達人~終末の救世主~』が自身初のドラマ作品となった。

主人公となる伝説の配達人5-8を演じたのはキム・ウビン。キム。ウビンは『MASTER/マスター』でもチョ・ウィソクとタッグを組んでいる。また2020年のドラマ『スタートアップ:夢の扉』や、2023年の『ペイバック~金と権力~』などに出演した若手俳優カン・ユソクが配達人を目指す難民ユン・サウォルを、モデル出身のイ・ソムが情報司令部の少佐ソラを演じた。これまで爽やかなイメージが強かったソン・スンホンは酸素を支配し、世界を支配しようとするリュ・ソクを演じる。

『配達人~終末の救世主~』のあらすじ・ストーリー

2071年の朝鮮半島

砂漠化したソウル

舞台は2071年の朝鮮半島。地球に彗星が衝突したことにより、深刻な大気汚染が発生した朝鮮半島は、砂漠化していた。防毒マスクなしでは生活出来ず、酸素は貴重品となっていた。生き残った人々は、一般、特別、コアの3つの階級に分けられ、砂漠化した朝鮮半島で生きていくシステムを作り上げたチョンミョングループによって管理されていた。一般、特別、コアに分けられた人たちは身分を示すQRコードを手の甲に刻まれていたが、QRコードをもらえなかった人たちは難民と呼ばれ、劣悪な環境での生活を強いられていた。

難民たちが唯一這い上がることの出来る方法は、"配達人"になることだ。配達人とは、生活に必要な食料や酸素を、一般区域に住む人々に届ける仕事を請け負う人たちのことである。食料や酸素を積む配達人のトラックは常にハンターと呼ばれる略奪者に襲われる危険をはらんでおり、配達人は荷物を守るために強くなくてはならない。配達人になるための試験に勝ち抜き、選ばれたものだけが配達人になれるのだ。そんな中、どんなハンターをも物ともしない配達人の5-8は伝説と呼ばれ、知らない人はいない特別な存在となっていた。

難民のユン・サウォルは、怪我をしているところを情報司令部の少佐ソラに助けられて以来、一般区域にあるソラの家に匿われていた。配達人になる力をつけるためハンターたちに挑むなど、家を抜け出しては危険なことを繰り返すサウォルに腹を立てたソラは、彼の部屋に鍵をかけ閉じ込めてしまう。妹のスラに見張りを頼み、ソラが仕事に出掛けると、何者かが突然ソラの家に侵入し、スラを襲撃する。部屋に閉じ込められているサウォルは、異変に気付きながらも、すぐにスラを助けることが出来ない。やっとの思いで部屋を出たサウォルだったが、スラは命を落とし、自分も頭を撃たれてしまう。

5-8は一般区域の様子がおかしいことに気付き、ソラの家を訪れる。重傷のサウォルを発見した5-8は、自分の家にサウォルを連れ帰る。頭を撃たれたにも関わらず驚異の回復力で生き延びたサウォルを見て、5-8はサウォルが「突然変異」と呼ばれる肉体の持ち主だと気付く。サウォルは目を覚ますが、スラの死を知り、罪悪感に苛まれる。

リュ・ソクの企み

一方、チョンミョングループの代表リュ・ソクは、韓国の実権を握るため、難民を排除する計画を企てていた。チョンミングループは権力者たちが快適に暮らすコア区域を作ったり、酸素を作り出している。そのため、韓国政府はあるものの、チョンミョングループは韓国の中で実質的に大きな権力を持っていた。リュ・ソクは排他的な思想の持主で、難民を排除し、優れたものだけが残る世界を描いていた。チョンミョングループの会長であり、リュ・ソクの父親であるリュ・ジェジンは息子の暴走を止めようと試みるが、リュ・ソクは聞く耳を持たない。

自責の念にかられているサウォルは、近々、配達人選抜試験が開催されることを知る。強くなってスラの仇を討ちたいサウォルは選抜試験に受かるため、5-8に弟子入りさせて欲しいと願い出る。サウォルが「突然変異」だと知っている5-8はその願いを受け、選抜試験に向けてサウォルを鍛えることにする。実は5-8には秘密があった。表向きは配達人として完璧に仕事を遂行する傍ら、裏では難民を開放すべく、チョンミョングループに対しクーデターを企てていたのだ。配達人の中から5-8に賛同するものが集い、クーデターに向け準備を進めていた。5-8はサウォルを配達人にし、この仲間に引き入れようと考えたのだ。

配達人選抜試験

選抜試験に参加するサウォル(中央正面)

配達人選抜試験が始まり、サウォルは無事1次試験を突破した。2次試験を控え、参加者はコア区域の待機部屋で過ごすこととなる。初めてコア区域を訪れたサウォルは、難民が暮らす劣悪な環境と全く違う快適な空間に、愕然とする。2次試験の日を迎え、試験の内容が発表された。その内容は、狙い来るハンターをかわし、指定の場所まで物資を届けることだった。参加者が次々に脱落していく中、サウォルはなんとかハンターをかわし、ゴールへと向かう。しかしその途中、同じ2次試験の参加者のひとりが車を奪われ、窮地に陥っていることに気づく。2次試験の合格者は2人で、すでに1人がゴールしているにも関わらず、サウォルは仲間を助け、2人でゴールする。2位となった2人とも通過すると思われた。しかし、サウォルが運んできた物資は破損しており、合格の条件を満たしていなかったことから、サウォルは不合格となってしまった。落胆するサウォルと5-8。ところが、サウォルが助けた参加者は負傷しており、決勝戦への出場を辞退したため、繰り上げでサウォルが2次試験を通過することとなった。

決勝戦は1対1の格闘勝負。2次試験で1位通過した参加者が相手だ。手ごわい相手に、序盤、サウォルはやられっぱなしだった。しかし、やられながらもサウォルは相手の動きのパターンを冷静に分析していた。相手の攻撃によりサウォルの負けが決まりそうになった瞬間、相手の動きを読んだサウォルは相手に渾身の一撃をくらわせ、KO勝ちすることが出来た。その結果、配達人選抜試験をサウォルは無事勝ち抜き、晴れて配達人となることが出来た。

配達人たちの革命

配達人となったサウォルは、欠番となっていた5-7になり、配達人としての初勤務を迎える。最初は慣れないことばかりで戸惑うが、念願の配達人になった喜びを噛みしめる。

一方、サウォルが決勝戦を戦っているのと同時刻。決勝戦の生中継のため、難民が暮らす地域に中継車が配備され、さらにはその場で中継を観賞したものには食料の配給が配られるという、これまでにない高待遇がとられていた。噂を聞きつけ、配給をもらうために多くの難民が中継車のまわりに集まる。しかし、難民たちが中継を見ていると、難民にまぎれていたテロリストが自爆。多くの難民が命を失うという事件が起こっていた。テロリストの1人を捕まえた5-8は、テロリストの携帯の中から「難民抹殺計画」のフォルダを見つける。5-8は、これがリュ・ソクが企てたものに違いないと考えた。5-8の読み通り、これはリュ・ソクが難民を抹殺するために企てたものだった。

サウォルは自爆事件のことを知り、憤る。サウォルに事の顛末を伝えた5-8は、続いて、テロリストの携帯を情報司令部のソラに渡した。同じくリュ・ソクの行動を怪しんでいたソラは、疑いが確証へとかわり、5-8に協力することを決める。しかし同じ頃、チョンミョングループが提供するワクチンを接種する難民が次々に死亡する事態が起こっていた。難民が暮らす地域では、一般区域に移住するため、という名目で難民たちへのワクチン接種が行われていたのだ。

5-8はリュ・ソクの暴走を止めるため、ソラの力を借りて、リュ・ソクの生活するコア区域へ仲間の配達人と共に潜入する。リュ・ソクの反対勢力だったチョンミョングループの会長は、リュ・ソク派の国防長官に殺され、リュ・ソクが実質的な権力を握ろうとしていた。しかし、コア区域に潜入した5-8はリュ・ソクがいる部屋を突き止め、追い詰める。5-8に銃を突き付けられ、絶体絶命となったリュ・ソクは自暴自棄となり、コア区域を爆発するボタンを押してしまう。その瞬間、5-8はリュ・ソクの暗殺に成功したが、コア区域の爆破が始まる。5-8やサウォルたちは間一髪のところで爆破に巻き込まれずに脱出することが出来た。その後、階級制は廃止された。チョンミョングループが酸素を独占するために、わざと大気を汚染させていたことも判明した。大気汚染を止めたことで、韓国の空は少しずつ澄み始めていた。

『配達人~終末の救世主~』の登場人物・キャラクター

主要人物

配達人5-8(演:キム・ウビン)

「伝説」と呼ばれる最強の配達人。難民出身で、過去に難民の虐殺から生き延びた経験がある。そのことをきっかけに、難民の開放に向けて仲間を集い、階級制度を作ったチョンミョングループの崩壊を企てている。

ユン・サウォル(演:カン・ユソク)

難民出身で、過去に怪我しているところをソラに助けられ、現在はソラが暮らす一般区域に隠れて暮らしている。配達人になることを夢見ており、配達人選抜試験を受験。見事合格し、配達人となった。5-8が企てる計画の仲間となる。「突然変異」と呼ばれる、怪我をしてもすぐに治る特異体質の持ち主。

ソラ(演:イ・ソム)

ソラ(右から3番目)

情報司令部の少佐。妹のスラと一般区域で暮らしており、怪我で死にかけていたサウォルを助けたことをきっかけに、家でサウォルをかくまっている。組織の命令に忠実だが、チョンミョングループからの不可解な要望に疑念を抱く。リュ・ソクが難民を抹殺しようとしている証拠を5-8に見せられたことをきっかけに、5-8たちに協力するようになる。

上野生真
上野生真
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