いいよね!米澤先生(地獄のミサワ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『いいよね!米澤先生』とは、地獄のミサワによって描かれたギャグ漫画。2014年から2017年に、集英社の『ジャンプスクエア』にて掲載された。新任教師である米澤は、不良生徒を体罰によって更生して恩師となる夢を持っていた。しかし漫画部の顧問となり、真面目ながらも癖のある部員達をプロの漫画家にすべく奮闘することとなる。地獄のミサワが初めて描いたストーリー性のある作品である。

『いいよね!米澤先生』の概要

『いいよね!米澤先生』とは、地獄のミサワによって描かれたギャグ漫画である。集英社の『ジャンプスクエア』にて、2014年5月号から2017年6月号まで連載され、コミックスは全5巻発行された。同誌に掲載された前作『カッコカワイイ宣言!』の1話完結型とは異なり、地獄のミサワが初めて描いたストーリー性のある漫画である。

新任教師の米澤(よねざわ)は、私立飲み水学園に赴任する。米澤は得意なラグビーと体罰によって不良生徒を更生し、恩師となる夢を持っていた。しかしラグビー部は廃部となっていた。米澤は漫画部の顧問を任されることになるも、真面目な部員3人のみで体罰をする余地はなかった。しかし漫画の面白さを知った米澤は、部員をプロの漫画家にさせて恩師になることを決意する。
自分勝手で破天荒な米澤は、漫画部のみならず関わる全ての人間を振り回す。それに負けず劣らず曲者揃いの部員たちが組み合わさり、予想外な展開が巻き起こる。ストーカー気質の部長井上(いのうえ)、虚言壁のあるシンドウアオイ、お金持ちでいじめられっ子の小野悠紀夫(おの ゆきお)、新入部員の不良道本正治(どうもと まさじ)はどれも魅力的なキャラクターである。作者の地獄のミサワが好きなキャラクターばかりを詰め込んだ、笑えるギャグ漫画である。

『いいよね!米澤先生』のあらすじ・ストーリー

やって来た米澤

熱血新任教師の米澤(よねざわ)は、夢にまで見た高校教師1日目を迎えて興奮していた。私立飲み水学園に赴任した米澤は、不良生徒を体罰で更生すべく、ラグビー部の顧問に立候補する。しかしラグビー部は廃部となっており、代わりに漫画部の顧問となった。漫画部には、3年生で部長の井上(いのうえ)、2年生のシンドウアオイ、入部を検討している1年生の小野悠紀夫(おの ゆきお)がいた。米澤は不良生徒がいないことにショックを受けるが、シンドウに勧められた漫画の面白さに感動する。そして部員達をプロの漫画家にしようと心を燃やし始めた。しかし、米澤は体罰以外の指導方法を知らなかった。
翌日、小野は不良の道本正治(どうもと まさじ)にカツアゲされていた。そこに指導方法に悩んでいた米澤が現れ、「体罰なら楽なのになー」と道本を殴り飛ばす。助けてもらったと勘違いした小野は、米澤に憧れて漫画部に入ることを決めた。

米澤は、井上から新人漫画賞の存在を聞き、さらにシンドウが中学時代に少女向け雑誌に作品が掲載された経験があることを知る。新人漫画賞の受賞を目指して、部員それぞれが投稿作品を描くことになった。
制作開始から1カ月以上が経ち、井上と小野は憔悴しきっていた。そこに、1人自宅で作業を続けていたシンドウが完成報告に現れる。シンドウのSNSを毎日覗いている井上はすぐに嘘だと気付くが、米澤はシンドウを信じることにした。数日して、ようやく井上と小野の作品も完成し、米澤はシンドウの元へ報告しに行く。報告を聞いたシンドウの表情を見た米澤は、彼女が描いていないことに気付く。シンドウは嘘を並べてその場から逃げ、米澤は井上と小野と3人で出版社へ持ち込むことになった。

翌週、米澤たちは雑誌紙面でシンドウアオイが準入選したことを知る。描いていないと見せかけておいて結果を出しているシンドウの格好良さに歓喜した米澤は、準入選を知らせるチラシを学校中に張り、勝手に放送で報告するなどして大胆に喜んだ。その結果、準入選したシンドウアオイは漫画部のシンドウとは別人であることが発覚する。実は、米澤の受け持つ3年A組の青井真道(あおい まさみち)こそが、今回準入選したシンドウアオイであったのだ。彼のペンネームは真道(シンドウ)青井(アオイ)であり、中学時代の少女向け雑誌への掲載も彼の功績であった。偶然ペンネームが同じだった青井の功績を、シンドウが我が物にしていたことを知った米澤は、激怒する。米澤はクラスで大嘘をかましているシンドウの下へ行き、その場にいる全員に事実を伝える。白を切るシンドウを徹底的に冷やかす米澤に、彼女の親友湯川輝姫(ゆかわ きらひめ)は必死に庇う。その様子を見てさらに囃し立てる米澤は、生徒達から悪者扱いされて、最終的にその場は収まったのだった。

新入部員

道本は、米澤に殴り飛ばされた仕返しをするために漫画部を訪れる。しかし米澤はおらず、小野が1人で漫画を読んでいるだけだった。小野から漫画を貸してもらった道本は、これを機に漫画に夢中となる。それから漫画部に出入りするようになった道本は、しばらくして入部を決めた。その様子を、モニターを通して飲み水学園の校長が観ていた。校長は興味本位で揉め事を起こしたがる性格で、雰囲気が良くなってきた漫画部に一波乱起こそうと考える。漫画部を訪れた校長は、米澤にラグビー部の復活を伝えて顧問に勧奨する。しかし予想に反して、米澤はあっさりと断る。そこで校長は、授業をしない米澤への保護者からのクレームを盾にクビの話を持ち出し、手塚賞を獲れば免除すると話した。自信家の米澤はそれを快く承諾した。
後日、青井に教えを請おうとした米澤だったが、青井に「無理ですよ。先生が手塚賞獲るなんて」と一蹴されてショックを受ける。しかし心優しい青井は、米澤にまずは画力を上げるようにアドバイスをした。部員たちは必死に絵を描く米澤を見て、心配する。米澤は救いようがなく絵が下手だったのだ。米澤に辞めて欲しくない部員たちは、彼の名前で漫画を描いて密かに手塚賞に応募することを決める。そして夏休みを使って、皆で1つの作品を作り上げた。その結果、見事に佳作に入賞する。部員達は大喜びして米澤に報告をするが、彼は何故か浮かない顔をしていた。青井に見切られた米澤は、手塚賞を諦めて校長を無人島に拉致していたのだ。急いで校長を助けに行き、米澤は無理矢理和解させた。

授賞式当日、引くほど調子に乗るシンドウや自分勝手な米澤の暴走のせいで、会場は大騒ぎとなった。

さよなら米澤先生

夏休みも明け、部活引退後も井上は漫画部に顔を出していた。気になった米澤は井上に卒業後の進路を聞くが、定まっていなかった。米澤は井上の能力を買ってストーカーを勧めるが、小野に止められる。井上の記憶力の良さに気付いた米澤が、東大に受かればシンドウの気が引けるとそそのかし、井上は猛勉強を始める。センター試験を無事に通過した井上は漫画部に報告をし、皆で喜んだ。そして道本の提案で、井上が東大合格したらお祝いパーティを開くことが決まる。
来る合格発表日、井上は東大に見事合格していた。漫画部で合格祝いのパーティが開かれるが、運悪く道本の検査入院の報告と重なる。道本は学校の健康診断で心臓の音が変だと言われ、病院から親を連れてくるように言われたのだ。不穏な空気となったパーティは、井上をほとんど祝う事なくお開きとなる。後日、道本は至って健康であることが分かった。

新年度になり、井上が卒業した漫画部は部員3人となっていた。手塚賞の一件以来、密かに漫画を描く練習をしていた道本は、プロ同等の絵を描けるようになる。その事に引け目を感じる小野は、無意識に道本を避け始める。説教のチャンスに気付いた米澤は、道本を褒め称えてわざと小野の嫉妬心を膨らませるように動いた。そして絶妙のタイミングで小野に説教をした。説教の締めに「お前はここからまだまだ成長できる!」と励ましの言葉を加えた米澤は、恩師確定と思い込む。しかし、小野は学校を辞めてしまった。
焦った米澤は、小野の自宅に押しかける。何度掛け合っても小野は学校へ戻ることを拒否するため、米澤は身を引いた。そのすぐ後、シンドウが小野の自宅を訪れる。出版社との打ち合わせを明日に控えたシンドウは、新しく提出する作品の相談に現れたのだ。小野は渋々了承するも、シンドウと案を出し合っている内に漫画作りの楽しさを思い出す。そして小野は自分の弱さを乗り越え、漫画部へと戻った。

米澤は、自分の指導もなく部員達が知らぬ間に成長していることに怒り、校長に愚痴を言っていた。校長は、知り合いが学園長をやっている不良ばかりで荒れた高校を紹介する。見学に訪れた米澤は不良達を一掃する。自分が気分良くなりたいがために生徒の成長が見たいと勝手に怒り狂う米澤を、不良達は良い先生だと勘違いする。米澤は不良達から羨望の眼差しを受け、気持ち良くなる。しかし、学園長に飲み水学園からの転勤を求められた米澤は悩んだ。
米澤は、部員達が誰に言われるまでもなく漫画制作を進める姿を見て、自身の存在意義に不安を覚える。そこでわざと転勤の話を持ち出した。動揺する部員達を見て嬉しくなった米澤は、調子に乗って転勤に気持ちが傾いていると嘘をつき、部員達を揺さぶった。その結果、部員達は米澤の想いを大事にするために、寂しい気持ちを抑えて漫画部から追い出した。
こうして、米澤は飲み水学園を去ることになった。

20年後、米澤主催の同窓会が開かれた。井上、シンドウ、小野、道本は久しぶりに集まり、同窓会に出席した。会場には、米澤の元教え子たちが集まっている。天才ハッカーやメジャーリーガー、アカデミー賞を獲得した映画監督など、すごい経歴の教え子たちであった。しかしどの教え子も皆、変わらぬ米澤の姿に歓喜し、変わらぬ身勝手な言動に振り回されるのだった。プロの漫画家となった元部員達もまた、同様であった。

『いいよね!米澤先生』の登場人物・キャラクター

主要人物

米澤(よねざわ)

飲み水学園に赴任してきた新任教師。3年A組の担任。不良生徒達をラグビー部に入れて、指導という名の体罰で更生させる夢を持つ。しかし、ラグビー部が廃部になっていたため、漫画部の顧問となった。以来、漫画部からプロの漫画家を輩出することを目標にしている。身勝手な言動が多く常に周りを振り回しているが、なんだかんだで漫画部の生徒には慕われている。

シンドウアオイ

漫画部2年生の女子部員。息をするように嘘をつく。本名は山田練り代(やまだ ねりよ)。好きなキャラクターの名前からシンドウアオイと名乗っている。偶然ペンネームが同じだった青井真道が新人漫画賞で準入選した際、周りが山田の功績と勘違いしているのをいいことに自分の作品であると嘘をついていた。嘘がバレた後も平静を装う、強心臓の持ち主。キャラクター作りには長けているが、本人はその才能に気付いていない。

井上(いのうえ)

漫画部3年生の男子部員であり部長。シンドウのことが好き。ストーカー体質で、SNSやGoogle検索を使ってシンドウの住所などを特定している。また、クラスでは常に寝たふりをして情報収集をしている。とにかく影が薄く、担任の教師からはよく見る生徒程度にしか認知されておらず、東大合格した際も一切話題にならなかった。

小野悠紀夫(おの ゆきお)

漫画部1年生の男子部員。笑顔がかなり怖い。いじめられっ子で、道本に絡まれていた時に米澤に救われたことがきっかけで、漫画部に入部する。大御所作家の父親を持ち、実はお金持ちである。唯一まともな性格の持ち主だが、人と関わることが下手で思わぬ言動をすることが多い。最初は道本を苦手としていたが、漫画を貸したことがきっかけで親友になる。

道本正治(どうもと まさはる)

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