漁港の肉子ちゃん(小説・漫画・アニメ映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『漁港の肉子ちゃん』とは西加奈子の小説、及びそれを原作とした漫画・アニメ映画である。「肉子ちゃん」こと見須子菊子と「キクりん」と呼ばれる娘の見須子喜久子との親子の絆を描く。不細工で何度も男にフラれても、肉子は持ち前の明るさで生き抜いてきた。蒸発した男を追いかけ行きついた先は北陸のとある小さな漁港だった。漁港で出会った焼き肉屋の店主「サッサン」の好意で、肉子とキクりんは漁船に住み始める。やがてキクりんは思春期を迎え、友人関係や肉子との不安定な生活に頭を悩ませるようになっていく。

肉子ちゃん/見須子菊子「子供には、罪はないからな!」

とにかく男運がない肉子ちゃんは、数多くの男に騙され、金を貢ぎ、借金を負わされたあげく、逃げられていた。ある男も肉子ちゃんに金を催促したあげく、新しい女性との間に子供ができて逃げられてしまう。それに肉子ちゃんは逆上し、相手の家に乗り込もうとするが、玄関先の三輪車に目がいき思いとどまる。
「子供に、罪はないからな!」といって肉子ちゃんは黙って引き返すのだった。心優しい肉子ちゃんの性格がにじみ出ているセリフである。

キクコ/見須子喜久子「わたし、なんてずるい子なんだろう…なんてずるくて嫌な子なんだろう…」

マリアはクラスで唯一の親友でいつもキクりんの世話を焼いてくれる。
だがある時、クラスの女子のいざこざにキクりんは巻き込まれた。昼休みのバスケットボールでのチーム決めが不公平だというのだ。チーム決めはクラスの中心だった金本が仕切っていた。しかし、金本は自分の好きな子をひいきにして、他の子には目もくれない。それでは仲間はずれがでてかわいそうだと、マリアは非難し始める。その意見に森らのグループが賛同した。
それに賛同しなかったキクりんに対し、マリアは陰であざ笑い、悪口を言った。
そうやってクラスの中心になりたかったマリアだが、主張が強すぎたためにクラスから孤立してしまう。

そんなある日、キクりんは二宮と親しくなり、マリアの話になる。キクりんは二宮に打ち明ける。二宮はマリアの事を「お姫様みたいで可愛い」と言うが、キクりんは否定した。似合わないフリフリの服を着て、女子らに嫌われていることもわかっていない。マリアに賛同しなかったために、マリアは女子らにキクりんの悪口を言いふらし、下校の時もキクりんをあざ笑ったりした。
マリアはわがままであまりに主張が強いがために森らのグループとも折り合いが悪くなって孤立した。キクりんは内心ざまぁみろと思った。
そこでキクりんは、誰よりも自分はマリアを嫌っていたことに気づいた。「わたしはなんてずるい子なんだろう…なんてずるくて嫌な子なのだろう…」と心の中で嘆いた。目からは涙がとめどなく流れていた。
引っ越してきたキクりんに一番に話しかけて友達になってくれたのはマリアだった。自分がはっきりしないせいで、マリアとも仲たがいしてしまった。あげく孤立したマリアをざまぁみろと思っている。
そんな醜い自分を嘆き、悔い改めたいという心情が表れているセリフである。自分の気持ちと向き合ったことで、マリアと仲直りすることができた。

サッサン「子供のうちにいーっぺぇ恥かいて、怒られて、いちいち傷ついて、そんでまた生きていくんらて」

虫垂炎で入院することになったキクりんの元に、サッサンが見舞いに駆けつける。キクりんは、サッサンに遠慮して、必死に腹痛を我慢していた。もう少しで腹膜炎を起こして大変だったにもかかわらず、腹痛を起こせばサッサンから住む場所を追い出されると我慢した。キクりんはいつも他人に遠慮ばかりしている。
キクりんは自分が母親に捨てられたことを知っていた。それもあって「自分は望まれて生まれて来たのではない」と嘆き、泣いた。
それに対しサッサンは「おめさんは生きてんだ。生きてる限り恥かくんだ。怖がっちゃなんねて。子供らしくせぇとはいわねぇ。子供らしさ、なんてものは大人がこしらえた幻想だすけの。みんなそれぞれいればいいんだて。それと同じように、ちゃんとした大人なんていねぇんだ。だすけ、おめぇさんが頑張っていい大人になろうとしても、辛い思いや恥ずかしい思いはぜってぇにぜってぇにすることになる。だすけの、そのために備えておくんだ。子供のうちにいーっぺぇ恥かいて、迷惑かけて怒られたり、いちいち傷ついたりして、そんでまた生きていくんだて」とキクりんを励ました。キクりんはこの言葉に救われ、前向きに生きれるようになった。

キクコ/見須子喜久子「うちは肉子ちゃんのことが大好き」

肉子ちゃんが自分の本当の母親出ない事をキクりんは知っていた。それでも肉子ちゃんはキクりんのために精一杯の愛情を注いできた。肉子ちゃんは太ってて不細工で、言うことは面白くないし、頭が悪い。でもキクりんは「肉子ちゃんのことが大好き」と肉子ちゃんに伝えた。その言葉を聞いて肉子ちゃんは幼い頃のキクりんの事を思い出していた。部屋のイスにもたれかかり疲れからかうつらうつら眠っていた肉子ちゃんに、幼いキクりんはエールを送り、「お母さん、大好き」と言った。肉子ちゃんは泣き崩れ、キクりんを抱きしめる。
これまで精一杯キクりんの幸せを願い、頑張ってきた肉子ちゃんにとっては最大の賛辞ともいえるセリフだ。

『漁港の肉子ちゃん』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

原作でのみうがキクりんを捨てた理由

アニメではみうがキクりんを捨てた理由は詳しく描かれていないが、原作では「自分の美しさや若さが子供を産んだことで奪われて、憎くなって一瞬魔が刺して殺しかけた」と書かれている。みうは赤ん坊のキクりんを殺しかけた。そんな自分が怖くなってキクりんを手放したのだ。

明石家さんま自らが原作者にオファー

本作のアニメ映画化にあたっては明石家さんまの功績が大きい。2015年11月に明石家さんまが出演しているテレビ番組『さんまのまんま』において、本作の原作者・西加奈子が出演した。
その際、さんまは『漁港の肉子ちゃん』の映像化を熱望していると発言し、ファンであることを公言。吉本興業を通じ、映像化権を取得するに至った。

1人で何役もこなす豪華声優陣

俳優として活躍中の八十田勇一は水族館のおじさんとことぶきセンターの受付ロボット、怪しい孫の3役を担当。お笑い芸人のゆりやんレトリィバアは、茶トラの野良猫やサッサンの亡き奥さん、先生にお客と4役をこなした。お笑い芸人コンビ「イワイガワ」の岩井ジョニ男は肉子ちゃんの部屋にあるフラワーロックだけでなく、鳥居やアナウンサーの声を担当。芸人のオラキオは小学校の先生とお客の2役、お笑い芸人のチャンス大城はカエルに猿、ミュージシャンの3役を担当した。

当初は実写ドラマ・映画化の予定だった

当初は映画化、あるいはドラマで実写化しようと企画していたが、スタッフと話し合いを重ねるうち、アニメーションが最適だという結論に達した。

漁港はフランス映画『ショコラ』のイメージを取り入れている

監督・渡辺歩とSTUDIO 4℃のスタッフはロケハンのため、いくつかの漁港を巡る。そして、背景美術を担当する木村真二がそれらの風景をミックス。さらに、面白味を加えるために2000年公開のフランス映画『ショコラ』をイメージしてオリジナルの架空の町を作り上げた。

『漁港の肉子ちゃん』の主題歌・挿入歌

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