賢い医師生活（韓国ドラマ）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『賢い医師生活』の概要

『賢い医師生活』とは、韓国のケーブルテレビtvNで2020年と2021年に放送された連続ドラマ。シーズン2まで製作されており、シーズン1は2020年3月12日から5月28日、シーズン2は2021年6月17日から9月16日まで放送された。ビデオオンデマンドサービスであるNetflixで、日本を始めとする全世界に配信されている。

総合病院ユルジェ病院を舞台に、ソウル大学医学部を卒業した同期5人組に焦点をあてたヒューマンメディカルドラマ。日々慌ただしく生活する5人の仕事とプライベート双方にスポットライトをあて、5人が様々な経験を経ながら成長していく様子を描いている。大学時代を一緒に過ごした5人は、仕事が忙しく最近はなかなか顔を合わせる機会がないまま日々を過ごしていた。そんなある日、病院の会長が亡くなったという知らせがそれぞれの元に入る。葬儀に集まった4人は、仲間のひとりアン・ジョンウォンが会長の息子だったことをその時初めて知る。病院を継ぐ気がないジョンウォンは病院長に対し「病院は継がないが、VIP病棟を自分にまかせて欲しい」と頼み出る。そして、そのVIP病棟の運営を仲間の同期4人に一緒にやらないかと持ち掛けた。ヤン・ソッキョンを除く3人の返答はイエスだったが、ソッキョンだけが条件があるという。その条件とは、再び学生の時のように5人でバンドをやること。その条件を飲んだ4人は、再びバンドを行うため頻繁に顔を合わせることになった。

大ヒットドラマとなった『応答せよ』シリーズを手掛けた脚本家のイ・ウジョンと監督のシン・ウォンホが手掛けたことで、放送前から大きな話題を呼んだ。第56回百想芸術大賞では、脚本賞にノミネートされている。同じくイ・ウジョンが脚本、シン・ウォンホが監督を務めた『刑務所のルールブック』に続く、『賢いシリーズ』の2作目。『応答せよ1994』で主要キャストを務めたユ・ヨンソクをはじめ、チョ・ジョンソク、チョン・ギョンホ、キム・デミョン・チョン・ミドが主人公の同期5人を演じた。

毎回披露されるバンドシーンが見どころのひとつ。バンドシーンは実際に本人たちが演奏している。

『賢い医師生活』のあらすじ・ストーリー

再会した5人

総合病院ユルジェ病院の会長が亡くなった。会長には5人の子どもがいたが、末っ子以外全員神父だったため、病院を継ぐのは末っ子だと決まっていた。会長の葬儀に、大学の同級生だった胸部外科医キム・ジュンワン、産婦人科医ヤン・ソッキョン、脳外科医チェ・ソンファが集まってくる。病院長の末息子として挨拶をしたのは、ジュンワンたちの同期の小児科医、アン・ジョンウォンだった。ジュンワンたちは、友人であるジョンウォンが会長の息子だと知らなかった。

その後、ジョンウォンは自分が病院を継ぐことを断った。その代わり、VIP病棟の責任者をやらせて欲しいと提案する。病院長であるチェ・ジョンはそれを受け入れた。それを受け、ジョンウォンはジュンワン、ソッキョン、ソンファ、そして同じ大学の同期で肝胆膵外科医のイ・イクジュンを集めた。そしてみんなに「一緒にVIP病棟の運営を手伝ってほしい」と提案する。ジョンウォンはVIP病棟の収益を、お金がなくて治療が受けられない人を支援する「あしながおじさん」の活動に充てようとしていた。

大学を卒業してから、それぞれの道で忙しく過ごしていた5人だったが、イクジュン、ジュンワン、ソンファは久しぶりに一緒に仕事が出来ることを喜び快諾した。しかし、ソッキョンだけは条件があるという。それは「バンドをやる」ということ。5人は学生時代にバンドを組んでいた。あのときのように、また5人でバンドをやりたいと言うのだ。驚いた4人だったが、ソッキョンの提案を受け入れ、5人はバンド活動を再開することになった。

イクジュンの離婚

外科のレジデントであるチャン・ギョウルは、手術を受け持つ医師たちからいつも自分の手術を手伝って欲しいと熱視線を浴びていた。その日ギョウルが選んだのはイクジュンの手術。ギョウルがイクジュンを選んだのには理由があった。それはギョウルが想いを寄せるジョンウォンの画像をイクジュンがくれると言ったからだ。ギョウルは不器用で、患者に対しストレートにものを言ってしまったことでジョンウォンに叱責されるなど、なかなかジョンウォンに近づけずにいた。そんなギョウルを見かねたイクジュンは恋のキューピッドを買って出たのだ。

そんなイクジュンも自分のことについては問題を抱えていた。イクジュンには妻と息子がいるが、妻とは別居している。海外で暮らしている妻が1年半ぶりに帰国することとなり、妻と息子のイ・ウジュは食事に出掛けた。そこでウジュはアレルギーのある食材を食べてしまい、アレルギー反応が出てしまう。妻が息子のアレルギーも知らず、また浮気していることを知ったイクジュンは離婚を決意するのだった。

その後日、ユルジェ病院にイクジュンの妹であるイ・イクスンが運ばれてくる。病院の近くで事故にあったのだ。ジュンワンが手術を担当し、大事には至らなかったが、ジュンワンはイクスンの様子が気になり、1日に何度もイクスンの様子を見に行く。脳外科のレジデントであるアン・チホンとイクスンが知り合いだと言うことを知り、イクジュンは彼氏のいない妹のイクスンにチホンを薦める。実はイクスンのことが気になっていたジュンワンは、その様子が気にくわない。

ジュンワンは家の工事のために、居候のジョンウォンとともにイクジュンの家でしばらく暮らすこととなった。元気になり退院したイクスンが、ある日、友人の結婚式に参加するためイクジュンの家に泊まりに来た。その翌日、携帯を忘れたイクスンに携帯を届けに行ったジュンワンは、自分の想いを告白する。

一方、産婦人科のレジデントであるチュ・ミナは、いつも淡々と仕事をするソッキョンに対して不信感を抱いていた。ある日、ミナは無脳症の子どもの出産に立ち会った際、ソッキョンが、「子どもが産まれた瞬間、子どもの口を塞ぐように」と看護師に指示するのを聞いた。その冷酷な対応に腹を立てたミナだったが、それは2、3日しか生きられない子どもに会わないことを決意した母親に対して、泣き声を聞くことで、母親のトラウマにならないようにしたソッキョンの配慮だということを知った。ミナは自分の考えの浅さを恥じたとともに、ソッキョンが本当に患者のことを考えている医師だと知り、ソッキョンに対する想いが180度変わった。

そんなソッキョンは、同期4人のことが大好きだったが、あまり社交的ではなくそれ以外の人とあまり関わることがない。その上、仲間の中ではマザコンとして有名だった。ソッキョンがマザコンになった理由は、複雑な家庭環境にあった。数年前、妹が滑落死し、そのショックで母親が脳出血で倒れてしまう。父親は事情があってすぐには駆けつけれないと言うが、ソッキョンは父親が浮気している現場を目撃してしまう。絶対に離婚しないと気丈に振る舞う母が、陰で泣き崩れているのを見て以来、ソッキョンは母親に優しいのだ。

ソンファの病気

ある日、胸に違和感を感じたソンファは検査を受ける。医師から「懸念点があるため、詳細な検査を受けた方が良い」と言われたソンファは不安を募らせる。ソンファは4人と夕食を食べに行った際、乳ガンの検査を受けたことを告白した。優れた脳外科医として、難しい手術を日々こなしながら、後輩もしっかり指導するソンファはそのタフさから「鬼神」と呼ばれていたが、今回の件ではさすがに不安な気持ちを隠すことが出来なかった。

検査の結果が出る日、ソンファがひとり病院の待合室で待っていると、イクジュンが現れた。乳ガンの件を聞いたイクジュンはソンファのことが心配になり、自身が執刀する手術を終えるなり、ソンファの元に駆け付けたのだ。結果を待つ間、イクジュンは以前ソッキョンが学生時代にソンファのことを好きだった話をしながら、実は自分もソンファのことを好きだったことを告白した。

そして検査結果は、陰性。ホッとしたソンファはいつも通りユルジェ病院に出勤する。すると、結果をまだ知らないジョンウォン、ジュンワン、ソッキョンが次々にソンファの元を訪れ、結果を聞いた。イクジュン以外の3人もソンファの検査結果が気になっていたのだ。

一方、先日のジュンワンの告白に対し、イクスンはイエスの返事をした。仕事中は一切笑わず、後輩にも厳しいことで有名なジュンワンだが、イクスンの返事に、まるで高校生の女の子のように喜びをあらわにした。

それぞれの想い

キリスト教徒であるジョンウォンは、医師を辞めて神父になるか迷っていた。ジョンウォンの母チョン・ロサは、ジョンウォンが、神学校に推薦書を送ったことを知る。息子に平凡に生きてほしいと願うロサは、ジョンウォンに神父にならないで欲しいと懇願する。一方、ジョンウォンのことが好きなレジデントのギョウルはジョンウォンを食事に誘うが断られてしまう。なんとかジョンウォンに近づきたいギョウルだが、ジョンウォンの態度がいつも冷たいことに傷ついていた。そんなロサやギョウルの気持ちとは裏腹に、ジョンウォンは年内で病院を辞め、神父になることを心に決めていた。ジョンウォンはソンファに、自分が病院を辞めたら、金銭的な問題で手術が受けられない人を支援するあしながおじさんの活動を、ソンファに引き継いで欲しいと依頼する。

順調に交際を続けるジュンワンとイクスンだったが、軍に勤めるイクスンはジュンワンに内緒で博士の試験を受け、合格していた。そのため3年間イギリスに行くことになったことを、ジュンワンは脳外科のレジデントであるチホンから聞かされる。イクスンの夢を応援するため、遠距恋愛をすることを決めたジュンワンだったが、仕事が忙しく出発の日に見送りに行くことが出来なかった。

ソンファは持病のヘルニアが悪化したため、当面、田舎の分院で働くことをみんなに打ち明ける。しかし、バンド活動を続けるためソウルにもしばしば戻ってくるという。それを聞いたイクジュンは、ソンファに告白する。しかし、ソンファは「告白しないで」と、イクジュンの想いを受け入れなかった。

レジデントのミナとギョウルもまた、それぞれソッキョンとジョンウォンに想いを伝える。ソッキョンは過去に結婚していたことがあったが、複雑な家庭の事情により離婚している。その経験から、他人と深く関わらないようにしていたソッキョンはミナの想いを拒絶してしまう。

一方ジョンウォンも、神父になるために韓国を離れるつもりだったことから、ギョウルには距離を置いて接してきた。しかし、実はジョンウォンもギョウルのことを密かに想っていた。ギョウルに告白されたジョンウォンは、ギョウルの想いを受け入れ、そして医師として病院に残ることを決めた。

ジョンウォンはみんなを集め、神父になることを辞めたこと、そしてギョウルと付き合い始めたことを話した。それを聞いて4人は喜んだ。

イクスンの病気

ある日、イギリスで暮らすイクスンにジュンワンが電話をかけると、男性が電話に出た。その人はイクスンの同居人だと分かったが、同居人を女性だと思っていたジュンワンはショックを受ける。さらにイクスンは交通事故に遭い、入院中だと言う。イクスンの状況が分からないジュンワンは不安を募らせる。翌日、イクスンと連絡をとることが出来たが、「好きな人が出来たから別れて欲しい」と言われてしまう。そんな中でも担当していた患者のドナーが見つかったため、心臓移植の大手術を完璧に行うジュンワン。実はイクスンは、肝臓に疾患が見つかり、移植が必要なレベルであることが分かっていた。イクスンはジュンワンを心配させたくないという思いから、別れを告げたのだ。イクスンの兄であるイクジュンは移植のためにすぐに韓国に帰国するようイクスンを説得する。帰国したイクスンは病院でジュンワンを見かけ、ひとり涙するのだった。

同じ頃、ソッキョンの元妻であるユン・シネの父親がユルジェ病院に入院したことから、しばしばシネがソッキョンの元を訪れるようになっていた。シネと結婚していた頃、シネはソッキョンの母とうまくいかず悩んでいた。それに対しソッキョンは、波風を立てないことが最善の策だと、とくに解決を試みなかった。それを聞いたソンファは、ソッキョンに「あなたは逃げてるだけ。もっと人に関心を持って、積極的に関わって」とアドバイスをする。ちょうどその時、ミナからの電話を受けたソッキョンは、早速その助言を実行する。

ギョウルの秘密

ギョウルと順調に交際を続けるジョンウォンは、ギョウルにプロポーズすることを考えていた。そしてプロポーズしようとしていた日、ギョウルの母親が怪我をして入院してしまう。ジョンウォンはユルジェ病院に入院することをすすめるが、ギョウルは言葉を濁す。さらには、ギョウルは母の看病のためメールも電話もできないとジョンウォンに告げる。

一方、ジョンウォンの母であるロサも最近物忘れがひどく、先日は家の暗証番号すら思い出せないほどだった。ロサは自分は認知症なのではないかと落ち込んでいた。ロサは、認知症と診断されるのが怖く、病院に行けずにいたところ、急に倒れてしまう。ユルジェ病院に運ばれたロサは、ソンファの診察によって、水頭症の可能性があることが分かる。母親の異変に気づかなかったジョンウォンは自分を責める。

また同じころ、ソンファの母親もパーキンソン病を患っていることが判明する。ショックで呆然としているソンファをイクジュンは車で送り届けるのだった。

ジュンワンは実家からの帰り道、高速バスに乗っていた。すると偶然、同じバスにイクスンが乗り合わせており、2人は久しぶりに再会する。後日会う約束をした2人。しかし、約束の日時にイクスンは現れなかった。実はイクスンはその時、緊急搬送されていた。ジュンワンと会う予定だったことを知ったイクジュンはジュンワンに連絡する。イクスンの元に駆けつけたジュンワンはイクスンのカルテを見て、初めて病気のことを知る。病気が原因で別れを告げたわけではない、というイクスンだったが、イクスンの携帯の待受はジュンワンのままだった。

その翌日、ギョウルの弟がギョウルの元を訪ねてくる。ギョウルの弟は、父親のせいで結婚が破談になったことをギョウルに伝えた。ギョウルの父親は母親に日常的に暴力をふるっており、父親が現在刑務所にいることが婚約者の家族にばれ、結婚が破談になったのだ。ギョウルの母親の怪我は父親のせいだった。ギョウルはジョンウォンに母の怪我の原因を話した。ジョンウォンはギョウルを優しく抱きしめた。

それぞれの結末

学会の準備のため、ソンファが遅くまで病院に残っていると、後頭部を殴られ大怪我をしたイクジュンが救急搬送されてくる。幸い、大事には至らなかったが、ソンファはイクジュンのことが心配でならない。同期4人のサポートもあり、イクジュンは数日で退院することができた。

一度はイクジュンの告白を断ったものの、イクジュンの怪我を目の当たりにし、自分の気持ちに気付いたソンファは、イクジュンに告白する。ソンファはイクジュンと付き合い始めたことを、ジョンウォン、ジュンワン、ソッキョンに話すが、3人は冗談だと思って信じない。その後、病院の中庭でソンファと話したソッキョンは本当に2人が付き合っていることを知り、心から祝福した。

そのソッキョンも、ソンファに人としっかり関わるようにアドバイスされてから、ミナとの関係を築いてきた。ソッキョンとミナが映画を観に行くと、ジョンウォンの母ロサと映画館でばったり会う。ロサに「2人はデート？」と聞かれたソッキョンはデートだということを否定しない。その様子にミナは驚く。ロサと別れたあと、ミナが「私たちは付き合ってるんですか？」とソッキョンに訪ねると、ソッキョンは優しくミナを抱きしめた。

別の日、ソンファとイクジュンが食事をしていると、そこにジュンワンとイクスンが合流した。ジュンワンとイクスンもまた少しずつ関係を修復していた。4人はカラオケに行き、穏やかな時間を楽しむ。同じ頃、ジョンウォンとギョウルも食事をしていた。ギョウルはジョンウォンに自分の母に会って欲しいと話す。それを聞いて微笑むジョンウォン。

数日後、久しぶりにバンドの練習で集まった5人。ジョンウォンは移植の勉強のために留学することをみんなに話す。患者の生死と向き合い、慌ただしい日々を送っている5人。そんな毎日を送りながらも、彼らは今日も人生の一瞬一瞬を大切に生きている。

『賢い医師生活』の登場人物・キャラクター

主要人物

イ・イクジュン（演：チョ・ジョンソク）