悪役令嬢に転生したはずがマリー・アントワネットでした(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『悪役令嬢に転生したはずがマリー・アントワネットでした』とは、『月刊コミックフラッパー』にて連載されていた小出よしとによる漫画。1789年頃から始まったフランス革命を時代背景にしたストーリー展開で、主人公は現代から歴史上の人物として知られるマリー・アントワネットに転生する。ギロチンで処刑される運命から逃れようと、必死で奮闘する話である。

『悪役令嬢に転生したはずがマリー・アントワネットでした』の概要

『悪役令嬢に転生したはずがマリー・アントワネットでした』とは、『月刊コミックフラッパー』にて連載されていた小出よしとによる漫画。
1789年7月14日から1795年8月22日にかけて起きたフランス革命の動乱に巻き込まれた、マリー・アントワネットの史実を基にしたストーリーである。
著者の作品はpixivやnoteにも紹介されており、可愛らしい絵柄と丁寧な背景描写、著者の持ち味であるメリハリの効いた展開はファンを魅了している。
Pixivでは著者本人のアカウントで一話が投稿されており、約1万2000と沢山のユーザーにブックマークされている。
巻数は全3巻であり、1巻は2021年2月22日発行、2巻は7月21日発行、3巻は2022年2月22日に発行されている。
物語は結婚適齢期の主人公が、悪名名高い令嬢マリー・アントワネットに生まれ変わる所から始まる。
主人公は最初、ゲーム世界の悪役令嬢を回避すればいいだけと楽観視していた。しかし実は死亡回避率超困難な歴史上の人物だと知り、さらに国家間の政治にも巻き込まれていく。
ひたすら「ギロチン回避」をしようと奔走する中、次第に夫であるルイ16世に対して強い愛情を覚えていく。
特権階級が当たり前の価値観の時代に、現代の平等という価値観を持った主人公が夫と共に少しずつ時代を改変していくというユニークな恋愛漫画である。

『悪役令嬢に転生したはずがマリー・アントワネットでした』のあらすじ・ストーリー

汝は結婚せよ!

ショートケーキ一個で、一人寂しく自分の誕生日を祝う、結婚適齢期の女性主人公。
電話口で親からは「おめでとう」ではなく「結婚できそうないい人いないの?」と説教と催促をされる始末。
「善処します!」と言って切り、愚痴りながらビールをあおっていると、運命の悪戯か、棚の上に飾っていたエッフェル塔の置物が落下し、彼女の背中に突き刺さった。
目が覚めるとそこは豪華絢爛な天蓋付きのベッドに寝ていたのだった。
「今日はあなたの誕生日よ」と姉らしき少女から言われ、言われるがままにプリンセスのようなドレスを身に着け、執事やメイドらに豪勢にお祝いされる。
元居た場所とは余りに異なる世界観に、彼女は「ここはなんかの乙女ゲームで、私は転生してしまった!?しかも多分悪役令嬢!」と推測。
けれど登場人物達や姉妹設定を知っても、なんの乙女ゲームかさっぱり思い出せない。
もんもんと悩んでいると母の名前が判明する。
その名は「マリア・テレジア」。主人公の母親が好きな昔の漫画に出てきたキャラだったはず、とうっすら記憶にある偉人が母であった。
母の好きな漫画は、歴史を忠実に再現しつつ、女性が男装麗人として活躍する物語で、そこには登場人物としてマリア・テレジアもいた。
「もしやここ、乙女ゲームではなく過去に戻ってる?」と主人公は嫌な予感を感じる。
そして、「あなたはフランス語ではマリー・アントワネットと言います」と最大級の爆弾を投げ込まれるのだった。

ようこそヴェルサイユ宮殿

乙女ゲームの世界ではなく、世界史で習ったフランス革命時代に転生してしまった事を知った主人公。
しかも自身が転生した先の少女が悪名高いマリー・アントワネットだと知り、絶望する。
フランスの王子ルイ・オーギュスト、のちのルイ16世との結婚は定められたものであり、死亡ルートは定められ、刻一刻と処刑時間が迫っていく。

フランス国民は最初、マリー・アントワネットの存在を歓迎していた。だが時が過ぎると共にフランス革命が起こり、王権は覆る。ルイ16世とその王妃であるマリーは贅沢三昧を紛糾され、民衆の前でギロチンで処刑され生涯を終える。
断頭台に立ちたくないと強く願った彼女は、持前の精神力で歴史を改変する事を決断。
「必ず処刑台ルートを回避してやる!」と、淑女の礼儀やフランス語を覚え、遂にフランスのベルサイユ宮殿へと入国する。
フランス国民と国王ルイ15世に快く迎えられ、旦那様になるルイ16世とも初めて顔を合わせた。
が、目も感情も死んでいるような、未来の旦那様から形だけのハグとバードキスを送られ、困惑するマリー。
その日のうちに国王や側近、貴族たちに肉体の結合を求められるものの、二人はベッドを共にしても何事もなく朝を迎えたのであった。

傾国の愛人

彼女にとってベルサイユ宮殿は、中身を知れば知るほど、特権社会の魔殿であった。
フランスでの初めての社交界でマリーは、今まで見たなかで一番美しい夫人を見かけ、声を掛けようとしたところ、国王の娘アデライード王女に咎められる。
アデライード王女はルイ15世の娘であり、当時の年齢では婚期を逃している状態で、実の父親ルイ15世からは「年増のぼろ」と冷たくあしらわれている。
声をかけ損ねたその妖艶な美女は、現国王ルイ15世の公式の愛人デュ・バリー夫人だった。
父国王の愛を一身に受ける愛人を快く思わない娘たちはお互いに政治的策略による派閥争いを講じており、マリーもその争いに巻き込まれる。
元々平民の出であったデュ・バリー夫人は王室では差別対象であり、姉妹はマリーも生理的に受け付けないだろうと大げさに彼女の出自を吹聴する。
しかし転生前は現代人だったマリーは、そんなことよりも国民の税金で豪遊している事が気に食わなかった。
社交界の場ではデュ・バリー夫人を相手にせずいたものの、旦那様であるルイ16世の「よく知らないものは評価出来ない」という意見に感化される。
そこでマリーは三姉妹以外の人物で、自分を慕う少女に夫人の率直な印象を尋ねた。すると夫人は決して三姉妹が持て囃すような人物ではないことが分かる。
彼女の人となりを知るほどに、自分との関係性がデュ・バリー夫人(乙女ゲーム主人公)対マリー(悪役令嬢)の構図になってしまっていると気が付いた。
『「処刑ルートに進んでる!」と焦ったマリーは、本人と一度話をするため、周りの反対を無視してデュ・バリー夫人を談話の場へ誘おうと試みる。

ヴェルサイユ宮殿に衝撃が走る

デュ・バリー夫人と対話を試みようと接近してみるものの、皇女三姉妹に邪魔されるマリー。
あまりにもしつこく邪魔にする上に、「あなたの為なのよ」などと言葉を使い自分をいいように操ろうとする彼女たちに、いい加減辟易したマリーは遂に面と向かって歯向かう。
「平民で娼婦の彼女は魂が腐りきっている!」と言い切った長女アデライードの言葉は「平等」が当たり前の現世で育ったマリーには到底分からなかった。
ついには 「国王の娘に生まれただけで、なにがそんなにえらいのよ」とぶちまける。
特権階級が常識のヴェルサイユ宮殿に衝撃が走った。
静まりかえり重くなる空気に、マリーは自分がまずいことを口走ったと気付き、焦った。しかしその発言に動けないほど衝撃を受けた三姉妹の隙をつき、デュ・バリー夫人に「次は静かな所でお茶したいものだわ、招待してくださる?」と声をかける事が出来た。「喜んで」という返答を受けたマリーは、とりあえず処刑ルートの一つを潰すことができたのであった。
ルイ16世王子のおかげでデュ・バリー夫人と仲良くなれたマリーはさっそく寝台でお礼を言おうと王子を待ち構えていた。
しかし寝室に帰って来た王子はまるで軽蔑したかのような目で自分を見ていた。
「あれが皇帝の娘が言う事なのか」と、社交界の場で自分が発言した現代的価値観の言葉を訴求されたのである。
王子はそのまま寝台を共にせず自室へと戻り、お互い別々に寝る事になった。
デュ・バリー夫人のフラグを片付けられたら、次は結婚相手と仲違いになるマリー。前途多難である。

夫を射んと欲すれば

仲たがいした夜の日から、マリーはルイとの気まずい雰囲気を解けずにいた。「親密度がマイナスゼロ以下なんて耐えられない!」と、マリーは自分を崇拝する友人ランバル公妃ことランちゃんと共に夫婦関係を改善する為、夫が参加している狩猟会へ行く。
ところが運が悪いことに、馬車の車輪がぬかるみに入り前に進めなくなってしまった。狩猟会が終わってしまったら意味がないと考えたマリーは馬に乗り、先に進もうとする。
しかし臆病な性格の馬は驚き暴走してしまった。
落馬しないよう必死に手綱を握りしがみつくものの、限界が訪れ手を離してしまう。「あ、こんなところで死んでしまうの?俺たちの物語完!?」と脳内によぎった瞬間、マリーを救う為に馬に乗って隣へ駆け寄っていたルイ王子が、身を挺して彼女を守ったのだった。
慌てて自分の下敷きとなったルイ王子の無事を確かめるマリーに、ルイ王子は「死にたいのか!!!!」と大きな声で怒鳴った。実のところルイ王子は、先日の社交界での衝撃の発言に対して軽蔑していた訳ではなく、彼女が元は敵国の皇女という立場であること、またなにより彼女のことをとても心配していたのだった。

「これ以上心配させないでくれ」と途方にくれた様子で自分の頬に触れる旦那様。
初めて王子の真心に触れたマリーは、ルイ王子の事を勘違いしていたのだと気づいたのである。

わだかまりが取れた二人はその夜、ついに真の夫婦になるかと思われたが、清きキスどまりで終わってしまった。

両国間の外交と陰謀に挟まれて、マリーはルイ王子を抱く決意をする

ルイ王子とマリーは今までとは異なり、気兼ねなく会話をする様になった。
心の中で陰キャ王子と呼んでいたのをやめ、改めてルイ君と呼ぶようになる。
声を出して笑い、農民の生活を考慮して動ける優しい人だと知り、彼は王様になるに相応しい人だとマリーは思うように。

一方でルイ王子はマリーの影響からか、「人間の平等」を説いたルソーの本を読んでいた。そこへルイ・フィリップ・ジョセフという男が彼の本を取り上げる。のちにオルレアン公と呼ばれる彼はルイ王子の家系に次いで王座に近い男だ。
自分こそが国王に相応しいと考える彼は、「まだ子も孕んでいない、危険な思想の敵国の女など誰に暗殺されるかわからないよな」と先のマリーの発言を元にルイ王子を脅した。
脅しはウソだと分かっていても、宮廷内では確かにマリーを危険視する噂が流れていた。
彼女を慮り、ルイ王子はまたマリーの寝室に訪れなくなった。

ルイ王子がまたもや寝室に訪れなくなっただけでも悩みの種なのに、マリーは近隣諸国の情勢が危うくなっている事を知る。
ポーランドの領土分割問題に、母テレジアに反抗する兄のヨーゼフ2世が調子にのって加担しようとしているのだった。フランスとポーランドは友好国の為、領土問題にオーストリアが参加する事となればマリーの立場はさらに危うくなることに。側近から「お世継ぎを早く!」と強く催促される。
「と言われてもルイ王子にその気がなければどうしようもないじゃない」と悩んでいた所、マリーが命名した特急恋愛術師のデュ・バリー夫人からお茶会に誘われる。

デュ・バリー夫人が血税で贅沢三昧している事は忘れていなかったマリーは「国民の税金であまり無駄遣いしないで」とお願いした。
すると夫人は豪快に笑い、「私はしがない平民です。必死に上級界流にふさわしい知識・教養・マナーを身につけました。見目のよさだけで国王の愛妾にはなれません。たまたま皇帝の娘に生まれただけで、美しいものを身に着けられるあなたにたしなめられるなど、道理にあわないのでは?」と逆に反論されてしまう。
元現代人だったマリーは「正論!!!否定できない」と返す言葉が無かった。
けれど彼女の贅沢が原因でフランス革命がおこる可能性がある以上、どうすれば良いのかとグルグル悩んでいると、困り果てたマリーを気遣った友人のランバル公妃が、「さすがに言いすぎですよ」とフォローをした。おかげでデュ・バリー夫人は「今後贅沢はやめる」と約束を交わしてくれたのだった。

これでまた死亡フラグを一つ潰せたと安心したところへ、「結婚は肉体の交わりを持って成立する」という驚愕の事実を知る。
つまり、いまだルイ王子と結ばれていない彼女は離縁・同盟破綻・戦争の可能性が全く消えていないのだった。
自分の置かれた状況が想定外に逼迫していた事を知った彼女は「交わって離婚を阻止するしかない!」とルイ王子の元へ行き、「今日私の寝室に来て!!」と叫んだのであった。

知らなかった感触

目を座らせてルイ王子を待つマリー。彼を抱く、と決めたものの彼女は喪女であった為、情事のハウツーは全く知らないのだった。唯一の頼りは16人子供を産んだ母テレジアの手紙である。
その指南書には1、やさしく抱擁し、もう一度抱きしめる。と書いてあった。
「ハグは二度漬けオーケーてこと?」と串カツに例えてしまう程、喪女であるマリーには母の教えは難しかった。
悩んでいるところにルイ王子が寝室に現れ、焦ったマリーは思いついた全ての誘惑行為を取った。
けれどどんなに押してもルイ王子は誘惑に負けなかった。むしろ何故マリーを抱かないのか正直に告白する。

「フランスの多くの貴族がマリーの故郷オーストリアに不信感を持っていて、同盟を反故にしかねないと考えている奴もいる。万が一この二国間でまた戦争が起こったらマリーには逃げ道が必要だ。僕は君が傷つく所は見たくない。真の夫婦でなければ君を助けられるんだ」と打ち明けられたマリーは「確かに離婚しちゃえばギロチン回避が出来るじゃん。やった~万時解決!」と思うものの、嬉しくも安心も出来なかった。
それはすなわち「ルイ君だけ処刑される」事を意味していた。感情が溢れたマリーは大粒の涙を流し、思わず自分が実は未来から来た人間であること、将来革命によってルイ君が処刑されることも全て告白してしまう。
けれど王子は「マリーは今の環境が辛くて怖い夢を見たんだな」と解釈してしまった。
自分を気遣って離れていく王子に、マリーは涙が止められなかった。

愛するルイ王子を殺されたくない。

マリーは自分の為だけじゃなくルイ王子の為にも、今までより遥かに真剣に処刑台回避ルートの方法を模索する事を決意する。

『悪役令嬢に転生したはずがマリー・アントワネットでした』の登場人物・キャラクター

主人公

マリー・アントワネット(マリア・アントニア)

中身は現代社会から転生したごく普通のOL女性。
あまり世界史に詳しくなく、大まかな事しか知らないが、マリー・アントワネットがギロチンで処刑されることだけは知っている。
竹を割ったようなさっぱりとした性格で、心で決めた事は必ず行動に移す腹の座った所もある。
自分をよく思わない貴族達をものともせず、気弱な所があるルイ16世を励まし、母テレジアと同じく果敢に政治に入った結果、フランスをより良い国へと変えていった。

オーストリア

マリア・カロリーナ

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