ある日、お姫様になってしまった件について(ある姫)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ある日、お姫様になってしまった件について』とは韓国の小説、およびそれを原作とする漫画作品。原作小説の作者はPlutus、漫画版の作画担当はSpoonが行なっている。
小説の中の脇役姫・アタナシアに転生してしまい、18歳で処刑される運命を回避するために奮闘する日々が始まる。
冷酷な父親とアタナシアのハラハラドキドキな日々は、韓国だけでなく日本でも人気を博している。

『ある日、お姫様になってしまった件について』の概要

『ある日、お姫様になってしまった件について』とは韓国の小説、およびそれを原作とする漫画作品。原作小説の作者はPlutus、漫画版の作画担当はSpoonが行なっている。
日本では2019年7月5日より日本語翻訳版が『Comic Walker』にて連載されている。
2022年に行われた「第5回アニメ化してほしいマンガランキング」にて2位を獲得。
ある日突然赤ちゃんに転生してしまった主人公のアタナシア。さらに、自分が前世で読んだ小説『かわいらしいお姫様』の脇役姫であることに気づく。小説の中のアタナシアは、妹のジェニットに毒を盛ったという濡れ衣を着せられて、18歳の誕生日に処刑される。アタナシアは小説のような死亡エンドを回避するために奮闘する。
人気の異世界転生物語の中でも、作画の素晴らしさやストーリーの面白さで注目を集めている。

『ある日、お姫様になってしまった件について』のあらすじ・ストーリー

転生したのは小説の中の世界

赤ちゃんに転生したアタナシアは、前世で読んだ小説『かわいらしいお姫様』に出てくる、父親である皇帝に処刑された姫を思い出す。処刑された姫の名前は、偶然にも自分と同じ名前であった。アタナシアもまた姫という身分であったが、世話をするメイドの態度は酷く、放置されている状態である。その理由は、アタナシアの父親にある。アタナシアの父親である皇帝は、アタナシアが生まれたその日に、ルビー宮にいた者を皆殺しにした。アタナシアの母親は、元は踊り子で皇帝に気に入られたものの、捨てられてしまった。そしてアタナシアを出産して亡くなった。皇帝はアタナシアに関心を示すことはなく、放置したためにメイドたちはアタナシアを軽視し、虐げた。現状から抜け出すため、アタナシアは成長したらお金を集めて逃げ出すことを決意する。

アタナシアとして転生して数ヶ月が経っても、皇帝からは何の音沙汰もなく、放置され続けていた。ある日、アタナシアに唯一優しく接する養育係のリリアンが、アタナシアに本を読み聞かせていた。その時にアタナシアの父親である皇帝の名前がクロード・デイ・エルジェア・オベリアであることを知る。その名前は、小説に登場する皇帝と同じ名前であった。
小説『かわいらしいお姫様』はオベリア帝国の二人の姫のうち妹の姫・ジェニットが主人公である。優しい心を持つジェニットは人々から愛され、皇帝・クロードにも大切にされていた。クロードは帝国を救った英雄として賞賛される反面、先帝の兄を殺し帝位についた冷酷な男である。ジェニットの母親は、クロードの婚約者であったがクロードを怒らせて婚約を解消され、ジェニットのお産中に亡くなった。以降14歳になるまで、ジェニットはアルフィアス公爵家で匿われて育った。ジェニットの存在を知ったクロードは、初めは冷たく接するが、徐々に凍った心は溶けていった。最終的にジェニットは、頼もしい父親のクロードに守られ、アルフィアス公子と結ばれる。
それに対して、小説のアタナシアは酷い扱いを受ける。アタナシアの誕生はすぐに皇帝のクロードに伝えられるが、ルビー宮に閉じ込めて放置する。結果、アタナシアは気弱な性格に育つ。アタナシアがクロードに出会うのは9歳の誕生日。深夜にルビー宮を抜け出したアタナシアはクロードに出会う。愛情に飢えていたアタナシアは、クロードに愛されたいがためにあらゆる努力を尽くした。しかし、14歳の貴族の女性が社交界デビューを果たすデビュタントでその希望は打ち砕かれる。ジェニットが現れ、クロードの愛情を手にしたのだ。さらに、ジェニットに毒を盛った濡れ衣を着せられ、アタナシアはクロードに処刑される。後で真犯人が判明してもクロードは何の後悔も罪悪感も感じなかった。ジェニットは罪悪感を感じていたが、恋人に慰められ幸せに暮らした、という内容で小説は完結する。
自分やクロードの名前が小説と同じなのは偶然ではなく、小説の世界に入り込んだのだと理解したアタナシアは自身の運命を嘆く。処刑されないために、早く成長して皇宮を抜け出さねばならないと固く決意する。

父親・クロードとの出会い

アタナシアが5歳になり、それまで努力していた甲斐あって、メイドたちはアタナシアに優しく接するようになっていた。ある日、外で遊んでいたアタナシアは道に迷ってしまう。人の気配を感じない建物を見つけ、いつか逃走資金にするために貯めていた宝石類をそこに隠すことに決める。後日またその建物に行くと、「俺の城にいつからこんな虫ケラがいたんだ?」と突然声を掛けられる。振り返ると、そこにいたのはアタナシアの父親であり、皇帝のクロードであった。アタナシアが迷い込んでいたのは、クロードの宮だったのである。
殺されるのではないかと怯えるアタナシア。しかし、クロードはアタナシアを連れて共にお茶をする。時折クロードの口から出る冷酷な発言にアタナシアは怯える。何とかその場を生き延びたアタナシアであったが、皇帝の護衛騎士からもたらされたのは「陛下が近いうちにまたアタナシア様をお呼びになるそうです」という言葉だった。
以降、アタナシアとクロードは一緒の時間を過ごした。その中でアタナシアは愛嬌を振りまいて、クロードが多少不躾なことを言ってもアタナシアを殺さないことに気づく。周囲は青ざめた顔で見守るが、クロードはアタナシアの馴れ馴れしい態度を好んでいる様子であった。
アタナシアがクロードと船に乗っていると、アタナシアは誤って湖に落ちてしまう。必死にもがき、船に手を伸ばすがクロードは冷たく一瞥しただけで助けない。クロードの恐ろしさを再度認識したアタナシアは、一刻も早く逃げなければならないと危機感を抱く。

ルーカスとの出会い、魔力の暴走

ある日、黒い子犬のような生き物にクロと名づけ、アタナシアが追いかけていると、謎の青年・ルーカスに出会う。ルーカスは周囲からアタナシアを見えないようにしたりと、自在に魔法を扱い、意味のわからない発言をしていた。そして、クロはアタナシアの魔力から生まれた神獣だと言う。クロとアタナシアを特別に見逃してやると言ったルーカスは、突然魔法で消えてしまう。

アタナシアがいつものようにクロードとお茶をしていると、妙に心臓がドキドキする。すると、吐血した血が掌やドレスに付着していた。目の前にいるクロードの驚く顔が視界に入り、そのまま意識を失う。
目が覚めると、体中が燃えるように痛み、のたうちまわる。クロードは宮廷魔法使いに治療をするように命じるが、体内で魔力が暴走している理由がわからず、どうにもできない。クロードは泣き喚くアタナシアを魔法で眠らせる。
起きたアタナシアの目の前にいたのはルーカスだった。宮廷魔法使いでも救うことのできなかったアタナシアを、ルーカスが救ったと言う。クロードと護衛騎士のフィリックスが来ると、ルーカスは急に幼い姿でしおらしい態度に変わる。さらに自分が48日間も眠っていたと知らされたアタナシアは、頭の中を疑問でいっぱいにする。
魔力が暴走したアタナシアを救うことのできる魔法使いはオベリアにはいなかった。そんなところに、幼い天才魔法使いとしてルーカスが訪ねてきて治療を行うことになったのだった。治療が終わり、アタナシアがクロードと共にルビー宮に戻る。するとクロードは廃れたルビー宮を見て、アタナシアの住居をすぐにエメラルド宮に移すように命じる。エメラルド宮は、小説ではジェニットに与えられる宮だった。

イゼキエル・ジェニットとの出会い

アタナシアの治療を成功させ、クロードに認められたルーカスはアタナシアの話し相手を務めることになる。ルーカスに警戒心を抱くアタナシアが、ルーカスが話し相手になるならアルフィアス公爵の息子と友達になればよかったと後悔していると、ルーカスはアタナシアを転移させる。突然転移させられて、空から誰かの上に落下する。「天使様...?」と呟いたのは、小説の男主人公でアルフィアス公爵家の嫡子・イゼキエルだった。小説の中のイゼキエルはいつでもカッコいい姿だったが、小説とは違う幼さを垣間見せる。すると、また突然転移させられ、自室に戻っていた。

数日後、アタナシアはルーカスにイゼキエルのところに送って欲しいとお願いする。ルーカスは驚くほどあっさりとお願いを聞いてくれたが、転移した先は暖炉の中だった。イゼキエルに再会できたアタナシアは、前回突然いなくなったことを詫びる。すると、イゼキエルの部屋にジェニットが訪ねてくる。イゼキエルは留学をやめさせようとするジェニットを慰める。その様子を見ていたアタナシアは自室に戻されていた。ルーカスは「あの女キメラか?」とジェニットのことを尋ねる。

ジェニットの母親のフェネロペは、クロードの元婚約者だった。しかし、皇太子ではないクロードに満足できず、皇太子のアナスタシウスを誘惑した。アナスタシウスは、自分より魔力の優れたクロードを憎んでおり、フェネロペを歓迎した。クロードは婚約者と兄に裏切られ、絶望する。その後アナスタシウスが皇帝になると、クロードの母親を殺し、黒魔法を用いてクロードを殺そうとする。しかし、アナスタシウスはクロードの返り討ちにあう。死ぬ前にアナスタシウスは、フェネロペを利用してある実験を行った。フェネロペに黒魔法の魔力を吹き込まれた子供を身籠らせ、クロードを超える強力な魔力を持つ子供を作ろうとしたのだ。フェネロペは、生まれてくる子供が自分を高みへ連れて行ってくれると信じていた。しかし出産中に死亡し、生まれてきたのは宝石眼を持つだけの何の力もない子供だった。それがジェニットである。

デビュタント

14歳の誕生日が近づき、アタナシアはデビュタントの準備を進めていた。クロードに誕生日のプレゼントは何が欲しいかと聞かれるが、思いつかない。クロードの様子から、ルーカスはクロードがアタナシアとデビューダンスを踊りたがっていると推測する。アタナシアはルーカスの推測を疑うが、クロードの反応を見て推測が当たっていると確信する。それはつまり、小説の内容とは違う、運命が変わった証でもあった。

アタナシアはふと、ルーカスにイゼキエルが留学から帰ってきた話をする。すると、いつかのように突然転移させられたアタナシアは、空から落下する。しかし、以前とは違ってイゼキエルがアタナシアを抱き止めたのだった。すっかり成長して青年になったイゼキエルは、キラキラと輝いていた。6年前、アタナシアと出会ったイゼキエルは、オベリアに帰ってきた時は1日も欠かさずアタナシアと出会った場所に行っていた。そして、イゼキエルが何かを言いかけた途端に、アタナシアは自室へ戻っていた。戻ってくるなり、不機嫌なのをあらわにしたルーカスに戸惑う。

後日デビュタントの本番が迫り、アタナシアはクロードにエスコートとダンスの相手をしてほしいとお願いする。クロードがお願いを聞き入れると、アタナシアは目を輝かせて喜ぶ。その後、偶然アルフィアス公爵に会うと、公爵はアタナシアのパートナーにイゼキエルを勧めようとしていたと話す。小説では、イゼキエルはジェニットのパートナーだった。最早小説と現実は大きく違っていて今後どうなるかわからない。

アタナシアの14歳の誕生日、フィリックスやリリアン、メイドたちがプレゼントを渡してお祝いをする。しかし、クロードは訪れなかった。アタナシアの誕生日は、母親のダイアナの命日でもある。クロードが元は恋人だったダイアナの死を悼み、素直にアタナシアの誕生日を祝うことができないのだと考えると、アタナシアはクロードに人間らしさを感じていた。

ついにデビュタントの日がきた。アタナシアは早朝からメイドたちに取り囲まれて準備をする。眩しいくらいに美しく着飾ったアタナシアがクロードのもとへ行くと、珍しくクロードも正装していた。
クロードと共に入場し、デビューダンスを踊るアタナシアに周囲からの注目が集まる。アタナシアは、もし小説の内容通りにジェニットがクロードの娘だと言って現れたらどうなるのかと考える。クロードを見て、ふと口から出たのは心からの感謝の言葉だった。前世でも家族に恵まれなかったアタナシアにとって、クロードは初めて接した父親であった。最初は恐怖の対象でしかなかったクロードが、いつの間にか大切な家族になっていたのである。

アタナシアは他の令嬢とも交流し、デビュタントを楽しむ。公の場では初めてイゼキエルに会う。アタナシアとイゼキエルの様子を見たクロードは、イゼキエルに鋭い視線を向ける。デビュタントは無事に終わり、アタナシアとクロードが帰ろうとすると、二人の前にジェニットが現れる。しかし、クロードはジェニットに対して特に反応を示すことなく立ち去る。こうして、小説とは全く異なる展開でデビュタントは終了した。

ジェニットとの友情

デビュタント以降、アタナシアの元にはたくさんの招待状が届いていた。しかし、アタナシアが皇宮の外に出ることは許されず、皇宮でお茶会を開くことになる。そのお茶会にはジェニットの姿もあった。ジェニットは実に心優しく、アタナシアは小説の内容を知らなければ素直に友達になることができたのに、と残念に思う。

アタナシアが自分専用の図書館に赴くと、そこにはイゼキエルがいた。イゼキエルは、アタナシアに会うために忍び込んだと言う。言いよるイゼキエルに、アタナシアは戸惑いを見せる。二人の間に割って入ったのはルーカスだった。一触即発の雰囲気を漂わせる二人を、アタナシアは必死で宥める。イゼキエルが退出した後も、ルーカスはイゼキエルに対抗する様子を見せる。アタナシアはルーカスにイゼキエルの話をするまいと心に誓った。

再びアタナシアのお茶会が開かれた。アタナシアが皆からは一歩離れたところにいると、ジェニットがやってきて話しかける。ジェニットの話からは、ジェニットがクロードとアタナシアを本当の家族と思い恋しがっていることがわかる。そしてジェニットに友達になりたいと言われたアタナシアは、警戒心が解けて了承する。

勉強に飽きたアタナシアは、ルーカスに連れられて街へ行く。すると偶然イゼキエルとジェニットを見つける。隠れようとするアタナシアだったが、市場で鳥を見ている時に、イゼキエルが背後から声をかけてくる。
イゼキエルに正体がバレそうになったアタナシアは、持っていた鳥籠をイゼキエルに押し付けるようにして逃げ出す。その一方で、アタナシアにプレゼントするリボンを選んでいたジェニットは男性に声をかけられる。クロードに似た顔立ちの男性は、ジェニットが皇族であることを知っているかのような発言をする。

イゼキエルから逃れ、アタナシアは古書店に足を向ける。店主の老人に「お嬢さん呪われておるぞ!」と忠告を受ける。老人は「黒魔法を使うと必ずその代償を払うことになる」と話す。それを聞いたアタナシアは、黒魔法によって作られた子供はどうなるのかと疑問に思う。黒魔法によって作られたジェニットは、老人の話では呪われていることになる。しかし、小説ではハッピーエンドで終わっている。アタナシアは、小説の完結後はどうなったのか、初めて疑問に思った。また、幸せそうに笑うジェニットが呪われているとも思えない。

イゼキエルからアタナシアへ鳥が贈られる。それは、先日アタナシアが市場で見ていた鳥だった。イゼキエルが図書館に侵入したことや、鳥をプレゼントしてきたことを知っていたクロードは不機嫌を顕にする。しかし、それもアタナシアが機嫌を取るとすぐに治る。アタナシアはクロードの態度から、もう生意気なことを言っても、間違いを犯しても殺されないことを実感する。そして、クロードにひとつのお願いをする。

翌日、ルーカスは世界樹を探すために旅立った。世界樹は500年に一度実を結び、それを吸収することで足りない魔力を補強することができる。しかし、その世界樹は普通の人ではたどり着くことのできない場所にあり、ルーカスといえどもすぐには帰ってこない。アタナシアは寂しさを感じていた。

クロードの記憶喪失

お茶会をしていたアタナシアたちの元に、クロが乱入する。怖がる令嬢たちに危険がないと伝えるが、クロを撫でた瞬間アタナシアの体に衝撃が走り、吐血してしまう。
次の瞬間、アタナシアは光を発して倒れ込む。異常事態はすぐにクロードにも伝えられた。
10日間眠っていたアタナシアが目を覚ますと、フィリックスやリリアンが心配した様子で駆け寄ってくる。しかし、クロードの姿はない。アタナシアが尋ねると、クロードは暴走したアタナシアの魔力を抑えるために命をかけ、ずっと目覚めていないと言う。アタナシアはフィリックスに抱えられながら、クロードの元を訪れ声を掛ける。すると、クロードが反応し、目を覚ます。クロードの口から出たのは「誰だお前は」という言葉で、その視線は冷たく鋭かった。
クロードは約10年間の、アタナシアと共に過ごした記憶を失っていた。フィリックスは、クロードにアタナシアのことを思い出してもらおうと、思い出を話す。さらに、アタナシアのお願いで宮廷画家に描かせていたクロードの肖像画には、アタナシアが寄り添い、絵の中のクロードの表情はとても柔らかいものだった。クロードは激しい頭痛と不眠症に悩まされるようになった。

眠ることができず、やつれた顔でクロードは誕生日を迎える。祝いの宴にアタナシアの姿はない。自室で寛いでいたアタナシアの元に皇帝直属の騎士団が訪れる。クロードの命令で騎士団はアタナシアを連行し、玉座の前に跪かせる。仲の良い親子だった二人の急激な変化に、人々は驚く。クロードはアタナシアが姫ではなく罪人であると宣言し、クロードの目の前から消し去るように命じる。再び騎士がアタナシアを連れて行こうとするが、アタナシアは魔法で騎士を蹴散らし、気丈な態度でその場を去った。
退出したアタナシアを追いかけてきたのは、イゼキエルだった。ピンと張っていた緊張の糸が切れたアタナシアは、涙を流す。クロードが記憶を無くしたとわかってから、アタナシアはずっと不安を抱えていた。生き残るために、可愛い娘を演じてきたが、前世の頃から諦めていた家族との時間は夢のようだった。それを失った悲しみはとても大きい。

アルフィアス公爵はイゼキエルを見つけると、アタナシアの後を追ったことを注意する。クロードの寵愛を失ったアタナシアに近づけば、イゼキエルまでもが目をつけられる可能性がある。しかし、イゼキエルはアルフィアス公爵が計画していることがアタナシアの害になるならば見過ごすことはできない、と決意を見せる。

翌日、無気力な様子のアタナシアを見かねたメイドは、薔薇園へ散歩に送り出す。一方、クロードは頭痛の原因であるアタナシアを排除しようと決意する。二人は薔薇園で遭遇し、クロードが魔法で攻撃する。アタナシアには、記憶を失う前のクロードが何重にも保護魔法をかけており、攻撃するクロードの手の方が傷を負っていく。クロードの手で殺されるのは嫌だと感じたアタナシアは、魔法で転移する。クロードはすぐにアタナシアを捜索し、自分の前に連れてくるように命じる。

世界樹を探す旅に出ていたルーカスは、ついに世界樹を発見する。しかし、すでに実はなく、代わりに世界樹そのものを取り込もうとする。その影響から大陸全土で自然災害が頻発するようになっていた。

アタナシアの家出

アタナシアはジェニットの部屋に匿われていた。皇宮を出てすぐ、しばらくは情報収集をしながら逃亡生活をしていたが、ジェニットの様子が気になって会いに行ったのだ。
アタナシアはジェニットを連れて、街へ遊びにいく。すると、ジェニットが以前街で出会ったクロードに似た男性が声をかけてくる。男性と一緒に街を歩くことになるが、アタナシア怪しい言動を見せる男性を警戒する。

アルフィアス邸に戻ると、ジェニットはアルフィアス公爵と共にいる例の男性と遭遇する。男性はアルフィアス公爵の知り合いで、しばらく滞在すると紹介される。アルフィアス公爵と男性が顔を合わせたのはデビュタントの日だった。「これまで俺の娘をよく育ててくれた」と話しかけてきた男性は、先帝・アナスタシウスだったのだ。ジェニットに関する真実を知ったアルフィアス公爵は、今後どう動くべきかを考えあぐねる。

皇宮を訪れていたジェニットは、庭園で倒れているクロードを発見する。クロードは歩くのもままならないほど激しい頭痛に、倒れ込んでいたのだ。しかし、目を冷ましたクロードの頭痛はぴたりと止んでいた。それがきっかけとなり、クロードはジェニットの謁見を許可する。

ジェニットは正体を隠したままのアナスタシウスに宝石眼を見られ、皇族の血筋であることがバレたと焦る。しかし、アナスタシウスは秘密にすることを約束し、ジェニットは親切で優しい人だと信用する。対して、二人の会話を盗み聞きしていたアタナシアは、怪しい男性がアルフィアス邸に滞在し、ジェニットが皇族であることもバレた状況に危機感を募らせる。ジェニットにあの男性は信頼できる人物なのか怪しいと忠告しようとするが、全く疑っていないジェニットは、アタナシアに心配いらないと力説する。アタナシアはジェニットの説得を諦め、自分で男性についても調べることにする。

『ある日、お姫様になってしまった件について』の登場人物・キャラクター

主要人物

アタナシア・デイ・エルジェア・オベリア

本作の主人公。愛称はアーティ。
オベリア帝国の皇帝・クロードの一人娘。母親のダイアナは元は旅の踊り子で、アタナシアを出産後に亡くなった。アタナシアという名前はダイアナがつけたもので、不滅という意味を持つ。オベリア帝国の皇族特有の青い宝石眼とウェーブのかかった金髪で、とても可愛らしい容姿をしている。
小説『かわいらしいお姫様』の中では、ジェニットに毒を盛ったという濡れ衣を着せられ、クロードに処刑される。小説のような運命にならないよう、日々奮闘している。
クロードに出会わず、地味にひっそりと暮らし、いつか皇宮を出ようと計画していた。しかし、5歳の頃にクロードの宮に迷い込み、初めてクロードに出会ったことで計画は破綻。クロードに興味を持たれて共に過ごすようになったため、クロードと親しくなる計画へと変更する。努力の甲斐あって、クロードはアタナシアを溺愛するようになり、アタナシア自身もクロードを大切な家族と認識し始める。

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