コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ

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コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ
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丁寧に紡がれる人間模様を味わう。心温まるノベルゲーム『コーヒートーク2:ハイビスカス&バタフライ』

2023年4月20日に発売されたノベルゲーム『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』。Nintendo Switch / PlayStation 4 / PlayStation 5 / Xbox One / PCなどのプラットフォームで遊ぶことができる。

舞台は雨降るシアトルの一角。プレイヤーは深夜にだけ営業する喫茶店「コーヒートーク」のマスターとなり、静かに開店準備をし、来客を待つ。
エルフ、サキュバス、オーク、人狼……お店には多種多様な人種の客がやってくる。客たちはカウンター席につくと、お気に入りの一杯やマスターおすすめの一杯を注文し、それぞれの話を残していく。

ファンタジー要素を取り込みつつも、彼らを取り巻く環境や社会問題は、現実世界にも通じるものがある。また、彼らが語る話や日常の悩みも現実と重なり、本当に彼らと会話しているような気分になる。初めは話すのをためらっていた客も、マスターやほかの客と会話をするうちに、徐々に心の内を吐露していく。人とのつながりが悩みの糸をほどいていく様は実に見事だ。

基本的には、来店した客の注文に沿う飲み物を提供し、客の話を聞くことでゲームは進む。ゲームシステムは前作を継承しているが、今作では新たに「忘れ物」システムが取り入れられた。
客の誰かが残した忘れ物を、次来店したときに飲み物と一緒に返す、というものだ。適切に返却できるかどうかで物語に影響が出る。「飲み物提供」と「忘れ物返却」がプレイヤーが物語を動かす唯一の手段だ。

「プレイヤー自ら会話を選択し、物語が分岐する」ということはない。あくまで傾聴に徹し、静謐に物語が綴られていく。これが、存外に心地良い。タスクに溢れる現代社会で、物語に身を委ねゆったりと過ごすことの大切さを思い出させてくれる。

また、作中のSNS「トモダチル」を覗くのも楽しい要素の1つだ。客たちの投稿を見て、彼らにもお店の外での人生があることを知る。しかしSNSに載せられる情報もまた日常の切り抜きに過ぎず、そこに表れない「素の人生」の存在を感じられて、物語に奥行きを与えている。

前作『コーヒートーク』からキャラクターやプレイ要素が大部分引き継がれているが、今作だけでも充分に楽しめるだろう。しかし、来店する人々の背景をもっと知りたい人には、まず前作をプレイすることをおすすめする。前作をプレイしておくと、各キャラクターの物語がより一層味わいを増すはずだ。

SNSの普及と反比例するように、人とのつながりが希薄になった現代。ふらっと立ち寄ったカフェで客同士が緩くつながり合う『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』は、現代人の心を温める珠玉の1本となるだろう。