メフィスト惨歌

メフィスト惨歌のレビュー・評価・感想

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メフィスト惨歌
7

悪魔をだましたやべえ男

エリートであったがその面影を失った主人公の高木は、幼馴染に振られて落ち込んでいるところで悪魔と出会う。死後に魂をくれれば良い生活を約束する、契約が成立すれば現金三千万円を渡すと契約を持ち掛けられた。魂が悪魔の手に渡る前に、高木は自身の肉体がどうなれば死亡とみなされるのかを悪魔に幾度と尋ね、細かい死亡確認の条件を付ける。さらには振られた幼馴染との復縁も要望し、悪魔はイラつきながらも高木のすべての細胞の消滅を確認したら死亡とみなすと、念願の魂獲得の契約が成立して万歳と歓喜の声を上げて、高木にお金を渡して魔界へと帰っていった。
しかし、高木はアイバンクに登録していることを悪魔に隠していた。よって、死後に他人の体へと移植されるなら、それは高木の細胞ではなく他人の肉体や細胞となるので、高木の死亡を確認できないとして魂は獲得できないと、悪魔は上司から告げられた。さらに、幼馴染を特典に付けて発生した五千万円以上の費用は、悪魔の給料からごっそり引かれるという。
悪魔の契約に乗ってあげるふりをして、自分は三千万円と裕福な暮らしと一度失った幼馴染と、欲しいものを全部手に入れた。とても可哀そうな悪魔と、恐ろしい詐欺師の男の話であった。

契約が取れればそれで良い相手の都合を聞いてあげていると見せかけて、つけこみ、質問攻めとハードな要望で冷静さを奪って、結局は隠し事によって自分が最後に全部美味しいところを持っていく。この頭の切れようが高木がエリートたる所以なのか。
ならばなぜ、彼は失墜してしまったのだろうか。考察にキリがないけれども、この話の読後に、ストレートに「高木こっわ!」と、恐怖を覚え感服した。