長い夢

長い夢

長い夢のレビュー・評価・感想

New Review
長い夢
10

長い夢の魅力

脳神経外科に「長い夢を見て困っている」と訴える男性が受診してきます。その男性は、初めの頃は一晩に2~3日の長さに感じられた夢がどんどん長くなって1年ぐらいに感じるようになったと言います。日常生活にも支障が出てきていると困っています。脳神経外科のドクターは、半信半疑でその男性を検査するうちに、もしかすると本当に長い夢を見ているかもしれない、と信じるようになります。治療方法が分からないまま夢はどんどん長引いていって永遠に夢から覚めなくなったら…と男性は不安になりながらも時は過ぎます。現実と夢の境目が分からなくなり、やがて体は風化して精神は永遠の夢の中に消えてしまいます…。私たちは毎日当たり前のように夜眠り、夢を見ます。怖い夢を見続けることは恐怖でしかありません。しかも体感2~3日も嫌なのに、作品中の男性のように1年とかそれ以上だなんて考えただけで鳥肌が立ちます。ただもしかすると、こうして生きていると実感していますがこれも長い長い夢なのかもしれません。いろいろ考えさせられてしまう、こうした後味の悪い感じが自分はたまらなく好みなのでこの作品を選びました。伊藤潤二先生の作品は他にも後味の悪い名作揃いなので、よろしければ読んでみてください。