エルヴィス(映画)

エルヴィス(映画)のレビュー・評価・感想

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エルヴィス(映画)
9

映画『エルヴィス』の感想

エルヴィス・プレスリーの生涯を描いた作品です。華やかな部分しか語り継がれてこなかった彼の人生。彼の音楽やパフォーマンスが、ブラックミュージックや文化に影響されていたことなど、私も知らない事ばかりで、驚きの連続でした。彼のセンセーショナルなパフォーマンスが若い世代を熱狂させ、その挙句に逮捕され、刑務所行きか米軍入隊の究極の選択を迫られたことは、とてもショッキングでした。保守的な価値観のみ受け入れられた時代ならではの出来事だったような気がします。彼は、きっと早く生まれすぎてしまったのかなぁ、彼がもう少し遅く生まれていればまた違った人生を辿れたのかなぁなんて、映画を見ながら思ったりもしました。
彼を取り巻く人間模様や、カリスマ性の高かった彼のパフォーマンスの裏で起こる苦悩と葛藤がしっかりと描かれているところも見どころです。
トム・ハンクスが悪役を演じているのも、映画を盛り上げる要因だった気がします。もしエルヴィス・プレスリーが違うマネージャーやプロデューサーに出会っていれば、彼も自分の人生を縮めることもなかったのかなと思います。
この映画は実は鑑賞するつもりはありませんでした。しかし見始めると、彼の山あり谷ありの人生を目撃する感じで、驚きかされることが多くて、一気に見てしまいました。ライブシーンなどは音の良い環境で鑑賞することをお勧めします。

エルヴィス(映画)
2

残念な出来

必要以上にCGを用いたところが、かえって映画を安っぽいものとさせることになった。
一連の「エルヴィス・オン・ステージ」のシーン、ラスベガスのステージなどまさにその典型だ。
この監督の悪いところで、奇妙にマンガ的なコンテになる。
「ムーラン・ルージュ」を受け入れることが出来たファンならば、今回も同様だとは思うが…。
トム・ハンクスの「大佐」も久しぶりの出演ながら、期待に反した凡演。
特殊メイクも結局マンガをマンガとするばかりである。主演も鳴り物入りではあったが、ともかく破綻なくこなしたという以上の評価を与えられるものではない。
数多のヒット曲を散りばめて、しかしあまりにそれらが細切れにされすぎて、「音楽」として響いてこないのも不満を募らせる。
ただ、「エルヴィス」の幼少期、その生い立ちから描くことで、「黒人」に憧れたエルヴィスというひとりのアーティストを巧く表した。
これが、ラスト近く、「ジャクソン・ファイブ」の登場とエルヴィスの幕引きに絶妙に呼応して感慨を深くさせる。
「白人」に憧れてそして死んでいったマイケル・ジャクソンという、アメリカのもうひとりの不世出なアーティストとの、対比と相似を巧みに暗示させたこの演出には高い評価を与えておきたい。