ハウ

ハウのレビュー・評価・感想

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ハウ
4

異色のロードムービー

恋人に振られ婚約破棄になった主人公の民夫と身勝手な飼い主に捨てられ保護犬となったハウの物語。
ハウは前の飼い主に声帯を切られ、かすれた声しか出なかった。
ひょんなことから二人は一緒に暮らすことになり、犬を飼ったことがない民夫はハウに振り回されながら日々奮闘するが、次第にふたりの絆は深まり、いつしかかけがえのない存在となっていく。
ある日ふたりで散歩に出かけたとき、民夫はうっかり野原で居眠りをしてしまう。
その隣で野球をしている少年たちを見守るハウ。
野球のボールが高く上がった瞬間、ハウはボールを追いかけて走り出してしまい、そのまま行方がわからなくなってしまう。
何日経っても見つからないハウ。「リードをしっかり握っておけば」とずっと後悔していた民夫。
時の流れと共にハウのことを忘れようとしていたが…。

物語の出だしはとてもよかったが、途中から失速していった。
まだ序盤に関わらず、ハウが民夫の元からいなくなってしまったため、観客の感情移入が完全にできぬまま次の展開に行ってしまった。
民夫がしつけに慣れていない段階でのハウの「脱走」、しかも「居眠り」という飼い主の不注意によるものなので、観客は共感よりも民夫に対する苛立ちのほうが先行してしまいそうだった。
その後も、話は民夫とハウの関係性からどんどん焦点がずれていき、ハウが青森までトラックに乗せられてきてしまい、そこから東京まで戻るまでのロードムービーに話がシフトしていく。
途中で教会の人々と関わるシーンがあるが、ここはなくてもよかったかもしれない。
ハウを捨てた飼い主に遭遇し、その飼い主が懺悔をするのだが、だからといってハウをもう一度引き取るというわけではなかったし、気が狂った飼い主の恋人の男が現れ、教会の人々を切り刻み始めるなど、サスペンス的な展開になり、この辺からこの映画がどこに向かっているのかわからなくなる。
その後、車で逃走したその男が事故を起こし、車の中に取り残されるのだが、ハウが燃え上がる車の中からその男を助けるという、アクション映画のヒーローを観ているようにも思えた。
最後は民夫と再会するのだが、ハウは別の飼い主に引き取られていたので、民夫は最後のお別れをして、ハウから離れていく。
予告ではハウが死んでしまうような悲しい結末を予想していたが、この終わり方はまた違った悲しい結末だった。
ハウからすれば、結局民夫からも見放されたような感じがして、後味が悪かった。
出だしから最後まで民夫とハウの絆が深まっていく内容に展開していたら、とても魅力的な内容だったであろう。