現金に体を張れ

現金に体を張れのレビュー・評価・感想

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現金に体を張れ
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鬼才スタンリー・キューブリックが商業映画に颯爽と登場した記念すべき第1作『現金に体を張れ』

『現金に体を張れ』は1956年に公開された米国の犯罪映画で、監督はスタンリー・キューブリック、製作はジェイムズ・B・ハリスです。脚本はキューブリックとジム・トンプソンで、原作はライオネル・ホワイトの小説『Clean Break』。出演はスターリング・ハイドン、ヴィンス・エドワーズ、そのほかにマリー・ウィンザー、エリシャ・クックJr、ジェイ・C・フリッペン、ティモシー・ケレイ。
人生に問題を抱える男たちが、刑務所から出たばかりのジョニー・クレイが立てた競馬場売上金強盗計画に加担します。ダービーの日に競馬場内で騒ぎを起こしその隙に強盗を行うというジョニーの計画は確実に成功するものと思われましたが、メンバー間の結束が次第に乱れていき計画は徐々に狂い始めます。
米国では適切に公開されなかったために、映画の興行的な成功は覚束ないものでした。『Bandido!』(1956年)の併映作品として最後まで宣伝されていたにも関わらず、収益をあげることにしっぱ逸したのです。しかし、批評家たちからは好意的に評価れて、その年の幾つかのトップテンリストに掲載されました。『ニューヨークタイムズ』紙の映画評論家A・H・ヴァイラーは、「『現金に体を張れ』は馴染みのあるネタで構成され、ストーリー的にはもっと十分に説明を加える必要があるにも関わらず、メロドラマの本筋から大いに逸れたストーリー展開になる。…王様のスポーツである競馬の場面では、キューブリック氏のカメラは競技トラックの傍の仔馬の色鮮やかなショットを捕らえていたことが明らかになった」と評しました。他の批評家たちは、この作品がちょっとした冒険映画であることに気付きました。