メトロポリス(2001年の映画)

メトロポリス(2001年の映画)のレビュー・評価・感想

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メトロポリス(2001年の映画)
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実際に未来のメトロポリスに迷い込んだかのような感覚。

舞台は、近未来。少なくとも、今よりは科学が進んだ時代でしょう。
私立探偵のヒゲオヤジとケンイチは『メトロポリス』へとやってきます。
人間の体を使った人造人間の開発により、指名手配されたロートン博士を追ってきたのです。

冒頭、『ジグラット』という建物の完成式典があります。
ものすごい高さの高層ビルが所狭しと立ち並び、その隙間から花火が盛大に打ちあがります。
街の人々もまるでアリの群れのように蠢いていて
これからどんな物語が始まるのだろうと期待させてくれます。

メトロポリスの街並みも、建物に、電車に、車に、人と、ものすごい情報量で圧倒されます。
大衆も、皆、それぞれ滑らかに動きますし、描き込みがすごいです。
これほどの物量をこの映画でずっとやっていくのは大丈夫なのだろうかと心配になるくらいです。
色彩も非常に豊かで、現代よりも鮮やかです。

物語が進み、ロートン研究所を見つけるのですが、何者かに放火されてしまいます。
そこでみつけたのが、今作のヒロイン、ティマです。
ロボットのはずなのですが、ロボットでも人間でもでもない天使のような純粋無垢な存在として描かれており、とても神秘的です。

ケンイチがティマに言葉を教えているシーンがあるのですが、なかなかうまくいきません。それがもどかしく、ほほえましいシーンとなっています。少しずつ絆を深めていく過程は丁寧に描かれています。

ケンイチたちは、ロックというティマの存在を妬む少年から、狙われ、逃亡劇が始まります。
アクションシーンは見ごたえ抜群で、メトロポリスの街を所狭しと駆け回ります。

終盤、ケンイチたちはロックの義理の父であるレッド公に見つかり、ティマは連れていかれてしまいます。ティマを作った目的は『超人の椅子』に座らせ、世界を支配することでした。
これで全世界の機械を操作することができるのようです。
ティマは『超人の椅子』に座り、世界を支配しようとしますが、逆にシステムに飲み込まれ暴走してしまいます。

ケンイチはティマを椅子から引き離しますが、ティマの暴走は止まりません。
ケンイチを攻撃してきます。
彼は何度もティマの名を呼びかけますが、伝わらない。ここは胸が痛みますね。
しかし最後は、高層ビルから、転落し、死んでしまいます。

後日、ティマのパーツを見つけ涙ぐむケンイチ。

ここで物語は終わりを迎えます。

作品としては楽しめたのですが、途中から話が見えてこなくなります。『超人の椅子』など意味の分からない単語が急に出てきたりと、お客さんが置いてけぼり状態になってしまいます。
せっかく、敵からの逃走劇で盛り上がっていたのに。
後半からは自分でストーリーを推測しなければなりません。
キャラクターの行動理由も良くわからないものが多くなり、何故そのような展開になっていくのか、頭の中ではてなが飛び交います。

この作品のテーマはロボットに愛は生まれるかだそうですが、そういったところも触れることがなく、物語は幕を閉じてしまいます。
お客さんに判断をゆだねるのは構わないですが、何もかもゆだねるのは不親切だと思います。
せっかく、キャラクターや背景も美しく、舞台装置は整っているのに、肝心の中身が伴っていないとい印象を受けました。なのでこういった辛口の評価となっております。

原作の漫画も持っていますが、そちらとはまったくの別物と思って頂いて大丈夫かと思います。
漫画は手塚先生の作品だけあって、エンターテイメント性に優れており、ストーリーも非常にわかりやすいものになっています。人間も発展し過ぎた科学のために身を滅ぼすのではないかというテーマも一貫しています。

今作は映像はとにかく美しいので、見る価値はありますが、説明不足が目立ちますのでそこは注意した方が良いかもしれませんね。