バビロン

バビロンのレビュー・評価・感想

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バビロン
4

未完成な疾走感

作品の中で答えを出さない作品がある。
原作は未完、原作とラストが違う。
もとの作品があると作品はキラキラしたものではなく中身で持っていく。
ここでいう中身と言うのはストーリーである。
「これどうなるの?」
そんな開幕をつげるアニメ『バビロン』は作家:野崎まどによる小説が原作である。
アニメ放送時原作は3巻まで刊行、4巻は未発売とう状態であった。

この作品がテーマとしてるのは“自殺”である。
主人公:検事:正崎 善(せいざき ぜん)は東京地検特捜部は、製薬会社の資料押収から始まる。
そかから端を発して「自殺は正しいか、否か?」そんな議論が繰り広げられる。

なぜ?急に自殺と思われた方も多いと思います。
このなぜ?はまさに主人公達も襲われるのである。
なぜ、かの人物は自殺したのか…。
なぜ、さっきまで明るく笑っていた人が数時間後、自ら命をたったのか…。
これは1話の最後に突然ナイフで刺された感覚になるので観てのお楽しみ。

しかしこのアニメ版『バビロン』は作品の中で答えを出さない。

事件としての自殺、身近の人の自殺、法律としての自殺といった側面から、「自殺は正しいか、否か」、そんな議論が繰り広げられる。

そんな実際に問われたら、答えに窮する問いをアニメという媒体で描いてきたのである。
このテーマを描くにあって、大きなフィクション要素がある。
そのフィククションとは、「出会うと必ず性欲を掻き立てられる女がいる」というモノである。
曲世 愛(まがせ あい)、この自殺の議論と強烈な女性キャラが交錯することで物語は進んでいき、7話で興奮と絶叫と悪夢は最高潮に達する。

しかし、この7話以降でアニメ版はブレーキがかかってしまう。

8話からは原作3巻、今度はアメリカ大統領の視点になる。
この3巻のラストはあえて語らないが、このラストこそ原作ファンとしては悪夢が形となってしまったと、落とされ早く続きが読みたい物語として昇華しているパートでもある。

だが、アニメ版はここを改変してしまったがゆえに視聴者に、答えを投げてしまった形にもなった。
観ているこちら側が考える事で完成する作品は多々ある。

例えば映画『サウルの息子』では、ラストに画面に向かって主人公が微笑むことで観客に笑っているようにも観える。
これは観てくれた我々観客がいるからこの成り立つ答えの投げ方であった。

しかし『バビロン』は明らかに作り手が作りきれるまで達してない状態でアニメ化したがゆえに、後半の展開が詰め込んでしまい、失速感が目立ったしまった。

これは正直、ここまで観た視聴者には原作を読んでほしい。

この『バビロン』という作品の問いとエンターテイメントとしての物語はアニメ版だけで終わらせるのは、あまりにもったいない。

是非とも、ページをめくる絶望を…。