火の鳥 / Phoenix

『火の鳥』とは、手塚治の代表作でライフワークとしていた作品。漫画家となった初期から晩年に至るまで描きつづけた長編大作。いくつものストーリーに別れているがテーマは一貫して「生と死」。また、他にも「輪廻転生」「愛」「人間の業」といった哲学的なテーマを投げかけている。
ストーリーは邪馬台国の時代の「黎明編」から西暦3404年といった「未来編」までを時系列順ではなく過去・未来・過去・未来と交互に描かれ現代に近づいていく形で発表された。しかし作者が亡くなり現代編が描かれることはなかった。その羽で撫でればどんな病や怪我も治しその血を飲めば不老不死になれるとゆう火の鳥をめぐって人々の権力争いや宗教戦争、宇宙がテーマのSF、時代劇、その世界観の中での友情や愛憎劇が描かれている。
また輪廻転生もテーマとして取り扱っていることからほとんどの作品で鼻の大きな「猿田」と名のつく人物が登場して物語に深く関わっている。時系列順に読む必要はなく気になったストーリーから読んでも問題なく楽しめる。子供向けに歴史や外国の勉強のためにもなるし、大人向けには生きることを考える指標ともなる。
たくさんの漫画家に影響を与え数多くのアニメ化やラジオドラマ化が行われた。

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火の鳥 / Phoenix
10

命とは

次々と新しい漫画が生み出されているが、新しい漫画だけでなく、漫画の古典というべきものに触れるのも悪くないだろう。
『火の鳥』は漫画の神様と称される手塚治虫の代表作の一つである。古代から未来まで、火の鳥を通して人間模様を描いている。人の持つ醜悪な心から最上の愛まで、その醜さと美しさを余すところなく描き出す。手塚治虫は各話を通してひとつの疑問を投げかけてくる。
人々の寿命が延び、永遠の命というものも絵空事ではなくなってきている。しかし、それは本当に喜ばしいことなのだろうか。長年寝たきりで延命装置なしでは生きられない人は、果たして生きていると言っていいのだろうか?生きることに疲れてしまっている人を無理矢理生かすことには、果たしてどのような価値があるのか?長く生きることが幸せだということに疑問を抱く人は、現代社会において少なくないだろう。手塚治虫は現代の人々の命題に半世紀以上も前から焦点を当て、警鐘を鳴らし続けている。
現代の問題を紐解くのに、現代の漫画を読むことは時代に合っていると思う。しかし、古典と言われるような漫画にも、現代人の心をつかむような英知が眠っているはずである。『火の鳥』はそのような古典漫画の代表作と言えるのではないだろうか。