言の葉の庭 / The Garden of Words

言の葉の庭 / The Garden of Words

『言の葉の庭』は、日本のアニメーション映画。『秒速5センチメートル』や『星を追う子ども』で知られる新海誠が原作と監督と脚本を手掛けた。2013年5月31日公開。キャッチコピーは「“愛”よりも昔、“孤悲”のものがたり」。
靴職人を夢見る高校生のタカオは、雨が降ると学校をさぼって公園の日本庭園で靴のスケッチをしていた。そんなある日、彼はひとり缶ビールを飲む謎めいた年上の女性、ユキノと出会う。約束もないまま雨の日だけの再会を繰り返しながらお互いに少しずつ打ち解けていく。タカオは居場所を見失ってしまったというユキノのために、彼女がもっと歩きたくなるような靴を作ろうと決心する。現代の東京を舞台に、男子高校生と生きることに不器用な年上の女性の淡い恋の物語。
登場人物の心情にあわせて様々な種類の雨を描きわけるなど、新海監督が得意とする緻密かつ繊細な描写が大きな見どころである。万葉集や日本庭園などを題材に描かれ、情感豊かな映像に引き寄せられる。
主人公の男女の声を数々の作品で声を担当してきた入野自由と花澤香奈が演じている。

Chi_のレビュー・評価・感想

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言の葉の庭 / The Garden of Words
7

雨宿りから始まった“孤悲”

靴職人を目指す男子学生のタカオは、雨の朝は学校をサボって新宿御苑で靴のスケッチを描いている。
そこで偶然出会った年上のミステリアスな女性ユキノと雨の日のベンチで逢瀬を重ね、心を通わせていく。
あの時感じた日常のふとした一瞬を切り取る、新海誠のテクニックが冴えわたる作品。
作中ではBGMのピアノと環境音の描写で登場人物の心情を際立たせ、46分の長さで過不足なく見事に表現されている。
「あの人に会いたいと思うけれどその気持ちを抱え込んでいるだけではガキのままだ」。
バイトをしながら靴職人になるための努力を惜しまず、現実にもしっかり向き合うタカオは賢く大人びている。
「私、まだ大丈夫かな」。
仕事や人間関係に躓き、動けないでいる成人女性のユキノは自分の至らなさばかり目につき、心身に影響が出てしまう。
キャラが全く異なる二人を対比させて学校で再会する展開は、テンポが良くストーリーに引き込まれた。
疲れきったユキノと厳しい現実から脱却しようと自分の目標に向かってひたすら走るタカオの切ないストーリーは、必見。
それにしても、思いを寄せる年上のお姉さんとの会話にうつつを抜かさず、自分の目標に向かってひたすら走る男子学生は稀少。