『獣医ドリトル』解説まとめ【あらすじ・登場人物・名言・主題歌など(ネタバレあり)】

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夏緑原作、ちくやまきよし作画による、小学館刊行のビッグコミックおよびビッグコミック増刊号で連載されていた日本の漫画作品。獣医師の鳥取健一は性格は冷徹だがその腕の良さと名字の語感から動物の声を聞くことのできる獣医師、”ドリトル”と通称されている。開業獣医師として診察しているドリトルのもとには様々な病気の動物、そして様々な事情を抱えた飼い主たちが訪れる。

概要

夏緑原作、ちくやまきよし作画による、小学館刊行のビッグコミックおよびビッグコミッックにおいて2001年から連載されていた。単行本の話の話数を”カルテ”で表している。連載開始当初は増刊号と本誌での不定期連載だったが、人気が出たため増刊号と本誌両方で毎号連載していた。2010年にはTBSにて小栗旬主演でテレビドラマ化された。
物語は、主にドリトルと動物看護師のあすかを中心に1話~数話完結のオムニバス形式で構成されている。

ストーリー

若くして開業獣医師として活躍する鳥取健一は性格は冷徹だが動物に対する愛情あふれる獣医師で、その名字の語感と実力から”ドリトル”とあだ名されている。一人で診療をこなしていたドリトルは、一頭の競走馬の治療を引き受けたときに多島あすかという女性を動物看護師(AHT)として雇うことになった。レースで骨折した競争馬はその治療の困難さと高額な治療費から安楽死されることがあるのだが、あすかは思い入れのあるアスカミライという競争馬を自分が治療費を肩代わりすることにより救うことを決意したのだ。
鳥取動物病院には爪切りから重病までさまざまな動物たち、そしてその飼い主が来院する。動物の治療はもちろんのこと、時には飼い主の心の問題を取り除くドリトルは不愛想だが良い先生として周りの飼い主には好評であり、同業者からも頼りにされていた。強すぎる責任感の下、自分にも周囲にも厳しく当たってきたドリトルだったが、あすかが働き始めてから実習生やバイトも増えてきて考え方も少し丸くなってきた。同級生の花菱獣医師や後輩の宗谷獣医師の相談に乗ったり、ライバル病院の土門獣医師と議論を交わしたりと忙しいながらも動物たちのことを守るために勉強も欠かさない。頑張りすぎるドリトルのことを周りの仲間は少し心配しながらも、お互いに助け合って獣医師としての仕事をそれぞれのスタンスで続けていた。主義の違いからドリトルを敵視していたエンペラー動物病院の総院長とも和解し、後輩たちの進路選択にも決着がついてきた。
そんな時に、ドリトルは絶縁状態だった祖父から人の病院の理事長にならないかと打診され、鳥取動物病院を閉院するよう提案される。ドリトルはその提案を受け、あすかの借金を無かったことにし、自分の病院を閉めることを承諾した。しかし、それは祖父に会いに行くための嘘であり、ドリトルは祖父に過去の暴言を謝罪したうえで獣医師として働き続けることを意思表明したのだ。あすかを解雇し、病院を閉めることを公言したため誰も残っていないと思いながら鳥取動物病院に帰ってきたドリトルだったが、そこにはあすか、花菱獣医師、土門獣医師などドリトルが帰ってくると確信していた仲間たちが待ち構えていた。自分一人で大丈夫だと思っていたドリトルだったが、そこで初めて心から仲間がいることの大切さや温かさに気づいたのだ。

特に印象的な回

20巻という長期連載でオムニバス形式のため、特にドリトルや周りの人物の性格や信条が感じ取れる印象的な回を抜粋した。

第14話(2巻カルテ6)群れる性

ある日、鳥取動物病院に女性が訪ねてきた。彼女はドリトルの大学の後輩で、パラダイズー動物園で働く宗谷獣医師である。妊娠6ヵ月である彼女は身重であることを理由に診療を控えるように園長から言われ、動物園の動物の治療の手伝いをドリトルに頼みにきたのだ。患畜は新しく動物園に来た雌象のアルンで、元気がないが人を警戒して近寄せないためスタッフ全員が困り果てていたのだ。
まだ動物園に来たばかりだったアルンは他の雌象とも隔離されていて、体調が良くならないと他の雌象にも会わせられない状況だった。宗谷獣医師もアルンに対する悩みと妊娠のために精神的にやや不安定になっており、シングルマザーというプレッシャーもあり体調が悪くても仕事をこなそうとやっきになっていたのだ。そんな宗谷獣医師を横目に、ひとまずドリトルはアルンの診察にとりかかるために自分に他の雌象の匂いをつけて近寄っていった。アルンが暴れるに違いないと覚悟していたスタッフたちだったが、アルンはおとなしく診察されている。ドリトルは象が雌の群れを作って互いに助け合って子育てをしたり生活していることを利用し、他の雌象の匂いでアルンを安心させたのだ。案の定アルンは他の雌象と一緒にしても安心した様子で過ごしており、それを見た宗谷獣医師は子育てで助け合うのは象だけではなく人間も同じだということに気づいた。自分一人で何とかしようと追い詰められていた宗谷獣医師だが、周りのスタッフや自分の母親に頼っても良いのだということを象たちから学んだのだ。
ドリトルのどんな動物でも診察できる万能さと、宗谷獣医師の真面目さが良く分かる回である。

第63話(8巻カルテ3)人畜共通感染症

始まりは、あるごみ屋敷の老人が孤独死したことである。その老人の死因はエキノコックス感染による肝障害。さらに、そのごみ屋敷には50匹の猫たちが粗悪な環境で飼われていた。エキノコックスは猫や犬には滅多に健康被害を及ぼさないが、類人猿や原猿類に感染すると致死性が高い寄生虫である。老人が感染しているなら猫たちも感染していることが考えられるため人間社会の安全のためには安楽死を行うことが必要だが、治療すれば治せる疾患を治療せず、猫たちを殺してしまうのはいかがなものかという世論も存在した。獣医師会もどうするべきか悩んでいたが、ドリトルを蹴落としたいエンペラーグループの土門総院長は猫たちをドリトルに治療してもらうことを提案、他の役員も世論に恐れを抱き、ドリトルに猫たちを丸投げする意見でまとまってしまった。もちろん動物園の宗谷獣医師などドリトルを知る人間は反対したが、押し切られてしまったのだ。
土門総院長は猫50匹に対して半年間かかる治療を無料で続ければ鳥取動物病院の財政は圧迫され破産に追い込まれるだろうとの目論見だったのだが、ドリトルは猫を安楽死することをマスコミの前で宣言した。ドリトルの母校である関東獣医大学に通う白野と兼子も大反対したが、安楽死以外に方法がないことを突き付けられた。そこで、兼子たちは自分たちはドリトルに頼ってばかりで問題を解決しようとしていなかったことに気づき、あらゆる方面に連絡をとり猫の引き取り手を捜し始めた。期限は薬剤が届くまでの1日。
一方ドリトルの方もたった1人で猫50匹の検査を行い、感染していない猫数匹だけでも助けられないかと努力していたが結果は全頭陽性であった。あすかに最高級のキャットフードを50匹分用意してもらうことを指示し安楽死しか方法はないと決意したドリトルだったが、吉報が飛び込んできた。兼子たちが遂に猫の引き取り手を見つけたのだ。兼子たちはドリトルの行動を批判するが富沢教授から学生時代に実験動物を殺さざるを得なかったときのドリトルの苦悩を聞き、自分たちもいずれ同じ選択を迫られることを実感した。
人間社会を守るため絶滅危惧種を守るために、本来動物を助けたいという想いで獣医師になったはずなのに大学の実習でも仕事でも動物を殺さなければいけない局面に立たされることのあるドリトルだが、その最悪の決断のなかでも少しでも良い方向に持っていきたいという気持ちと行動が表れている回である。

第96話(12巻カルテ5)奇跡の万能薬

ローザミラクルという、万能薬として作中で話題になっている水があった。様々な病気に効くというふれこみで人気の商品であり、成分はほぼ蒸留水。関東獣医大に通う兼子もニキビのために購入し効果があると信じているのだが、友人の白野はただの蒸留水だと兼子の主張を否定する。白野にしても兼子が怪しい水にはまっているのが心配で言ったのだが、肌荒れを相当気にしている兼子と喧嘩になってしまったのだ。
このローザミラクルを信じている人は多く、花菱獣医師の下で末期がんの猫を治療している飼い主もその一人だった。がんの痛みや進行を薬で抑えていたのだが、全ての薬をやめてローザミラクルを使いたいと言い出したのだ。生物には信じられない力があるため、治療していれば奇跡が起きる可能性はある。しかし、ローザミラクルはただの水であるため奇跡の起きようがないのだ。たとえ猫が死んでも文句は言わないから使いたいと飼い主は言うのだが、薬をやめると猫が痛みに苦しむのは100%間違いがない。安楽死に対し否定的で、できるなら動物を可能な限り生かしてあげたいというのが信条の花菱獣医師だったが、ここで決断を迫られた。飼い主の要求を断っても自宅療養か他院に転院になりローザミラクルを使うのは予想できるし、そうなると猫が苦しむ。飼い主が自分の猫が治療に苦しんでいる姿を悩み、奇跡にすがりたいのも理解はできる。
そして花菱獣医師は獣医師として飼い主と猫にとって何が最善かを考え、ついに安楽死を提案した。今までできるかぎり安楽死という辛い選択から逃れてきた花菱獣医師だったが、動物を苦痛から助けるためには必要なときもあるという獣医師としては逃れられないジレンマを受け入れたのだ。
この話の前(11巻)に土門獣医師に甘ちゃん獣医と罵られ悩んだ経緯があるからこそ、花菱獣医師の決意が更に感じられる回である。

第147話(18巻カルテ8)大晦日の不思議な訪問客

土門獣医師は安楽死と疼痛管理の専門家で、それはできるだけ苦しんでいる動物から苦痛を取り除きたいという思いから極めた知識である。そんな土門獣医師は父親である土門総院長の実利主義に段々強い反発心を感じるようになっていた。営業日を決める会議においても、大晦日に年中無休の病院が多い都市部ではなく郊外に獣医師を分散させたほうが動物や飼い主のためになると主張しても却下されてしまった。
ドリトルの口癖が”獣医はビジネス”だと知り自分はまだまだ甘い考えが捨てらないと感じていたある大晦日の日、弟の順平をバイト先である鳥取動物病院に車で送っていった。そこで目にしたのは人でごった返す病院。大晦日で他の病院が閉まっていることも多い中、鳥取動物病院は通常営業だった。そんな忙しそうな病院に、動物を連れていない人たちの姿がちらほら見えた。その中の一人の老婆に話しかけると、亡くなった犬が入院していたということだった。あすかによると他の動物を連れていない人たちも飼っていた動物がこの病院にかかっていたようで、亡くなっても割きれず、思い出をたどりに来るのだそうだ。土門獣医師はそんな人たちを忙しい大晦日に追いだしもせず病院に招き入れているドリトルを見て、口ではビジネス第一と言っているがドリトルが本当は飼い主の心に寄り添っている獣医師なのだということを知ったのだ。
ドリトルの優しさや、土門獣医師の動物医療に対する真摯な想いが分かる回である。

第160話(20巻カルテ4)鳥取健一4

ドリトルは、父親が過労死し病院も売却されたため住処も後ろ盾もなくなってしまった。だが、父親のような獣医師になるという夢は決してあきらめず自分の力だけで大学に入学し勉強しようと、高校、バイト、勉強というほとんど睡眠時間がない生活を続けていた。そんなとき、チンピラからカツアゲをされ、そこを祖父の旧友だという老人に助けられる。それは、鳥取動物病院の前身である薮田医院の院長、流川であった。流川は自分がドリトルの父親の相談にもっと親身になって乗っていれば、苦労した末に過労死という最悪の状況は防げたはずだと悔やんでいたのだ。ドリトルの行方を捜していた流川は自分の経歴をドリトルに話し保護者になることを申し出て、ドリトルは大学受験が終わるまでは流川の家に世話になることを決めた。ドリトルが獣医師になり開業することになると薮田医院を動物病院として改装し、ドリトルは家賃を流川夫妻に支払っている形で開業しているのだ。ドリトルの家賃のおかげで、流川本人が亡くなっても奥さんは生活に困らず暮らしていけている。ドリトルは流川夫妻のためにも経営をしっかり確立させ、動物病院を軌道に乗せる必要があったのだ。
このいきさつを富沢教授から聞いた花菱獣医師と土門獣医師は、ドリトルがなんであんなに動物のために努力し経営にこだわるのかという理由を理解することができた。その後2人はドリトルのもとに土門総院長が鳥取動物病院の不備を理由に病院を潰すことを狙っているという注意喚起をしに行った。
今までドリトルのことを実力はあるがいけ好かないと感じていた土門獣医師だが、富沢教授から話を聞いたことでドリトルのことを少し気に入った様子である。自分の方が年上であるため、困ったことがあればすぐに相談に来いと宣言している。
この回は、ドリトルが何故診療と経営両方を厳しく重視するのかがよく表れている回である。

主な登場人物

鳥取 健一(とっとり けんいち)

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鳥取という名字の語感と、イギリスの小説家ヒュー・ロフティングによる児童文学”ドリトル先生(動物の言葉が分かる医師の話)”からとってドリトルというあだ名で知人からは呼ばれている。しかし獣医師はドリトル先生のように動物を救命するばかりではないため、本人はこのあだ名を嫌うそぶりを見せている。
体格が良く努力家であるため、大学生の時から他の学生より座学も実習においても優秀だった。開業してからの口癖は”獣医はビジネス”だが、動物に対してかなり真摯に治療を行い、時には飼い主の心のケアもする優秀な獣医師である。
自分では身なりに無頓着だが、周囲からはよくハンサムだと表現されている。そのためか、バレンタインデーには飼い主から大量のチョコレートをプレゼントされていた。従業員に対しても厳しく当たるが内心では大切に思っており、診察が忙しい日はさりげなく休憩を従業員にとらせ自分は働いていることもしばしばある。
獣医師だった父親を見て育ち、自分でも犬を治療して飼っていたため獣医師を志したが、ボランティアに近い形で診療を行ったことにより過労死した父親の姿から経営をしっかりすることを重要視している。
幼少~少年期にかけてはアメリカのフロリダで生活していたため、英語は堪能である。中学、高校時代は祖父の知り合いの家に居候しながら暮らし、大学に入ってからはバイトの稼ぎで生活していたためかなりの苦学生だった。

多島 あすか(たじま あすか)

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鳥取動物病院の動物看護師(AHT)。就職活動がうまくいかなかった時に何気なく見ていた競馬で同じ名前の馬、アスカミライを見つけて励まされる。アスカミライがレースで骨折した際に安楽死をさせないように猛抗議し、根負けした富沢教授にドリトルを紹介された。
アスカミライの手術後は、その3000万円という治療代を支払うために鳥取動物病院で働き始めた。最初はドリトルのことを冷酷な獣医師だと感じていたがドリトルの動物に対する愛情を知るとAHTの仕事にもやりがいを感じるようになり、まったくの素人だったあすかは物語が進むにつれ優秀なAHTに成長している。
元々動物が好きだったこともあり、ドリトルからも動物の気持ちを読み取ることやAHTとしての能力に関しては認められている。
土門獣医師や花菱獣医師から好意を寄せられているが、AHTの仕事に夢中で全く気づいていない。土門獣医師から告白されたときは仕事のほうが大切というかたちで断ったが、本人が無自覚なだけでドリトルに対しほのかな恋心を抱いている模様。

花菱 優(はなびし まさる)

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