目次

  1. 犯罪
  2. 漆黒の森
  3. 首斬り人の娘
  4. 謝罪代行社
  5. 白雪姫には死んでもらう
  6. 凍える森
  7. インスブルック葬送曲

犯罪

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フェルディナント・フォン・シーラッハ著
ドラマ化もされたミステリー小説。
【本屋大賞翻訳小説部門第1位】一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。──魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの真実を鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた傑作!

全編とおして語られるのは「犯罪」であり、人の精神が軋んでいく音が聞こえ
てくるような話もあれば、ごくふつうの人が犯罪を犯す、そのスイッチが入っ
た瞬間に立ち会ってしまったような薄ら寒いものもある。
一編20ページぐらいなのだが、この衝撃はすさまじいものがある。

出典: WWW.AMAZON.CO.JP

著者が実体験で遭遇したのであろう様々な犯罪者が登場人物のモティーフになっていると思われますが、読んでいて人間存在の深淵というか怖さ(あるいは素晴らしさ)を垣間見させてくれる一書です。著者は法律家(弁護士)の由ですが、お堅い起訴状ないしは判決文を想起させる短文形式の事実・心理描写のシークエンスでこのような物語を紡ぎ出せるというのは、一つの発見でした(文体の勝利!)。また、所々に記される刑事司法に関する鋭い警句も一読に値します。

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漆黒の森

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ペトラ・ブッシュ著
取材で黒い森を訪れた編集者のハンナは、トレッキングの最中に女性の死体を発見してしまう。被害者は10年前に村を出て帰郷したばかりの妊婦だったが、胎児が消えていた。村に伝わる“鴉谷”の不吉な言い伝えや、過去の嬰児失踪事件と関わりが?堅物の刑事と敏腕女性編集者が、閉ざされた村での連続殺人を解き明かす。ドイツ推理作家協会賞新人賞受賞の清冽なデビュー作!

ストーリの背景におどろおどろしさを持たせつつも、警察の鑑識技術、科学捜査について、緻密に描かれており、調査、分析結果によって、捜査陣が事件の真相に近づいていくさまは大変説得力がありました。
 
事件の真相を追う主人公の男女2人、女性記者のハンナ・ブロックと「フライブルク刑事警察首席警部」のモーリッツ、操作の本流とマスコミという相容れるのが難しい立場での、捜査情報の駆け引き、そして、男女関係の駆け引き、ジレンマが、この主人公2人も本作に大きな魅力を加えていたと思います。

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いかにもドイツらしい重苦しい陰惨な連続殺人事件。さすがはグリムの残酷童話の故郷である。しかも、主人公の片方の女性編集者は頑固で意固地で、思い込んだらテコでも動かない、ドイツ女性の典型。メルケル首相を思い浮かべてしまったほど。グロテスクな事件を伝説に絡ませて起こすミステリの常道とも言えるデビュー作。事件よりもコワイ人間関係。楽しめるが、この主人公二人がカップルになることを想像すると、ますます怖くなる。

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首斬り人の娘

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オリヴァー・ペチュ著
一六五九年。ドイツ南部の街ショーンガウで子供が殺された。遺体にあった奇妙なマークを見た住人たちは、魔女の仕業だと殺気立つ。そして産婆のマルタが魔女と疑われて投獄される。だが、処刑吏クィズルとその利発な娘マクダレーナは、彼女の無実を確信していた。マクダレーナに恋する医者ジーモンとともに、二人は事件の真相を探りはじめる。しかし、そこに第二の殺人が起きる。街の有力者たちがマルタの処刑を求めるなかクィズルらは真犯人を突き止めることができるのか?ドイツ発のベストセラー歴史ミステリ。

本書の記述は、スピーディでアクションもサスペンスも豊富で、さらに意外性も忘れてはいない。それに、忘れてはいけないことは、登場人物のキャラクターが皆イキイキとしてることで、これは読者にも楽しい。とくに医術に長けた大男・処刑吏クィズルの活躍には胸がすくし、かれの利発な娘マクダレーナはお転婆で、ユーモラスで、作者は彼女を窮地に陥れ、読者をハラハラさせるサービスも忘れない。それでいて、歴史ミステリーとして読み応えのある作品である。

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この時代ならではの問題や、事件解決への弊害が自然と読み込めて楽しいです。翻訳本は、訳される方のセンスに一任する部分がありますが、この本では妙な野暮ったさも感じませんでしたが、ただ、現代では使わない表現(=読みにくい)があったりと、読者層を特定してしまうかなというきらいはありました。そういったことを含めても作品自体にいっさいの問題はなく、どんどん読んでいけるのは原作が素晴らしいからだと思います。欧州の暗い雰囲気が好きな方にはぜひ読んでいただきたい作品ですね。

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謝罪代行社

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ゾラン・ドヴェンカー著
新聞社をリストラされた若者クリスは、彼の弟ヴォルフ、友人の二人の女性タマラ、フラウケとともに、依頼人に代わって謝罪する仕事を始めた。これが大当たりして四人は半年後にベルリン南西部の湖畔にある邸宅を買い、そこを住居兼仕事場にするまでになる。ところがある日、依頼を受けて、指定された場所をヴォルフが訪れると、そこには壁に磔にされた女性の死体が!巧妙な仕掛けに満ちたドイツ推理作家協会賞受賞作。
上下巻の文庫版が出版されています。

最近のハヤカワの傾向として青春小説的なミステリー・犯罪小説
というのがあると思うのですが、この本はまさにそれで、ベルリン
の若者の日々と事件という二つの面を持つ小説です。

 ベルリンの町の風景と今の20代の青年達の姿の描き方に生々しさ
があって読ませます。

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白雪姫には死んでもらう

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ネレ・ノイハウス著
空軍基地跡地の燃料貯蔵槽から人骨が発見された。検死の結果、11年前の連続少女殺害事件の被害者だと判明。折しも、犯人として逮捕された男が刑期を終え、故郷に戻っていた。彼は冤罪だと主張していたが村人たちに受け入れられず、暴力をふるわれ、母親まで歩道橋から突き落とされてしまう。捜査にあたる刑事オリヴァーとピア。人間のおぞましさと魅力を描いた衝撃の警察小説!
2010年グラウザー賞長編賞

冤罪被害者とその親までもがドイツの村社会で言われなき差別と迫害を受ける。この状況は,日本でも十分想像できるので読んでいてつらかった。そこに出所後偶然居合わせた冤罪のきっかけとなった殺人事件の被害者によく似た少女が村に居合わせ冤罪被害者に興味を持つことから真犯人たちの目論見が崩れていく。主人公の刑事たちには,身元不明の少女の遺体が持ち込まれ後にその殺人事件の被害者の一人であることが判明し物語が複雑する。そこに主席警部(日本ではどの階級に相当するのだろう?)オリヴァーの家庭問題やその部下ピアにも価値ある不動産を手放さなければならない事情が絡まり(私には前者が重く感じられた),更に複雑化していく。このような重厚な物語を娯楽作品として仕上げている点で高い評価をしたい。

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白雪姫という言葉が、ドイツの地方の閉鎖性や人間関係の狭隘さのイメージ喚起になっている部分もいいです。この手のネタは最近の推理小説に多いよなあという気はするのですが、構成や筆運びだけでなく、作者の人間関係の書き方やここのキャラクターの書き方が上手いので、読まされてしまう。

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凍える森

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アンドレア・M・シェンケル著
1950年代半ば、南バイエルン地方の森に囲まれた静かな農村で起きた凄惨な一家皆殺し事件。なぜ家族は殺されなければならなかったのか?犯人は誰なのか?友人や教師、郵便配達人、近所の農夫など村人たちの証言から被害者家族の意外な事実が明らかになり、その中から犯人像がおぼろげに浮かびあがる。ドイツ犯罪史上最もミステリアスといわれた迷宮入り事件に基づいた出色の作。
2007年ドイツミステリー大賞1位 グラウザー賞新人賞

本書の特長は、なんといっても、ひとつはそのスタイルだろう。友人や教師、郵便配達人、近所の農夫、神父など、犠牲者一家を知る者の証言がメインの構成で、私たち読者は、いわば新聞記者や刑事のような立場で彼らと向き合い、そして、ちょうど薄皮が一枚ずつむかれて行くように、次第に、惨殺された一家の真の姿と真犯人があぶりだされてゆく過程を味わうのだ。

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この作品はドイツ本国でミステリーの収穫として大きな評価を得ているらしく、日本で言えば『このミス』の首位独走といった所でしょう。国によってミステリーの基準や形も違って当然で、私の読んだ印象はトリッキーな日本式パズラーでは無く、ややホラー寄りのドメステック・サスペンスといった感じです。

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インスブルック葬送曲