なぜ彼は金メダリストを殺したのか。映画「フォックスキャッチャー」の魅力に迫る!

第67回カンヌ国際映画祭にて監督賞を受賞したこの映画は、1996年に実際に起きたオリンピックの金メダリスト、デイブ・シュルツ殺害事件を題材にしています。犯人は大財閥の御曹司、ジョン・デュポン。なぜ彼はデイブを殺したのか。事件の裏には何が隠されていたのか。今回はその事件の舞台裏を見事に描き切った映画「フォックスキャッチャー」をご紹介したいと思います。

あらすじ・ストーリー

1984年のロサンゼルスオリンピックのオリンピックレスリング競技で金メダルを獲得した、マーク・シュルツはデュポン財閥の御曹司であるジョン・デュポンから自ら率いるレスリングチーム結成プロジェクトである「フォックスキャッチャー」に来ないかという誘いを受ける。最新の設備が整ったトレーニング場を持つチームに入れることを喜んだマークは即座にその申し出を受ける。しかし、ジョン・デュポンは妄想型精神分裂病を患っており、やがて奇行を見せ始めた。

リアルを越えるリアリティ

やはり現実の出来事を題材にした映画というのはリアリティというか、説得力が違います。近年話題を博した「アメリカンスナイパー」も事実をベースに置いた傑作でしたね。結末が決まっている物語において重視されるのはやはりディテールです。描こうと思えば始まりから終わりまで一直線に描けるものだからこそ、余分な部分、細かい部分が重要になってきます。

この映画は雰囲気といい適度に抑えられたBGMといい、完璧でした。見せるべきシーンもきちんと計算されていて、ジョンの狂気やマークの孤独、そしてデイブの家族愛などが度々映され、ラストへ向かうごとにそれらの重要性は増してきます。結末は本当に悲しい。悲しいときちんと感じられる程に、この映画はよく作られていました。おそらく細部はある程度想像で補完されているのでしょう。原作があるわけではないので。しかし想像の部分が飛躍するわけでもなく、終始静かな調子で狂気の終焉を迎える様子は見ていて神経が張りつめる程でした。

評点:86点/100点

圧倒的な存在感を放つ作品でした。2時間超の映画でしたが、全く退屈することなく、息を潜めながら観賞できます。ジョンの狂気についてはそれなりの理由がありそうで、なさそうな感覚を受けましたね。感情的な部分で理解できるところはありますが、それを行動に起こすとなるとやはり常人に理解できない部分があります。しかし全てを理解する必要はないのでしょう。解釈は人それぞれです。といっても奥深いミステリーというわけでもないので、あくまでそこにあるのは人間心理の複雑性ですけどね。

なお、この作品にはどうやら作品としての完成度を高める為にいくつか事実を改変させた部分があるようです。しかしそれは責められるべき点ではないでしょう。これはドキュメンタリーではありませんからね。あくまでフィクションです。フィクションはある程度のエンターテインメント性を兼ね備えてなければなりません。史実をそのまま放映すれば、ここまでの作品にはならなかったでしょう。映画で描かれた事実をそのまま鵜呑みにする必要はありませんし、またしてはいけません。大前提として映画はフィクションだということを忘れないのが大切だと、私は思います。

まとめ

かなり良かったです。さすがにカンヌで監督賞を受賞しただけあります。ミステリーとジャンル分けされていたので謎の追及かなと思いましたが、そうではありませんでした。あくまで事件までのプロセスを描いたものでした。うーん、もっとジャンル分けできはしないもんですかね。少なくともミステリーではない気がします。かといってノンフィクションでもありませんし、そこは難しい所なんでしょうね。

ぜひ観賞してみてください。面白さは私が保証します。

keeper
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@keeper

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