【微・ネタバレあり】夭折の作家・伊藤計劃の遺作をアニメ化!!劇場版『屍者の帝国』について

〈死人を生体同様に動かしてあまたの労働に携わせる世の物語。一人の青年がある「約束」のため、禁忌を犯して親友を甦らせる…〉早世の作家・伊藤計劃さんが遺した未完の作品を芥川賞作家の円城塔さんの手によって世に出されたと言うこの作品。先日鑑賞した感動を忘れないうちにと、僭越ながら原作未読の立場から紹介させていただきます。

劇場版の予告映像

あらすじ・ストーリー

舞台は19世紀末のイギリス。世界中で"死者蘇生技術"のたまものとして屍が労働者の役割を果たし、生者と死者が混在する世を形成していた時代の物語である。

かの地で医学を修める青年ジョン・H・ワトソンは早世した親友フライデーとの約束を果たすため秘密裏に彼を甦らせる試みに成功し、うつろな瞳ながらも実務能力を果たす"屍者"として命を宿らせる。

安感もつかの間、法を犯したその行為は国の知るところとなり牽制されたワトソン。しかしながらその能力が買われて謎の男・Mよりある任務の依頼を受ける。
それは―初めて死者を蘇生させた技術者ヴィクタ―・フランケンシュタインによって重要機密がしたためられてると言う『ヴィクタ―の手記』を捜索するとのことだった。

自らの思惑と合致したがためにこれを請け負ったワトソンは、屍者のフライデーと共に出立。監視と案内人を兼ねるバーナビ―らも連れ立ちながら、まずは酷寒の地の天才屍者技術者ニコライ・アレクセイ・カラマーゾフのもとへと訪れる…

登場人物・キャラクター

ジョン・H・ワトソン(CV細谷佳正)
ロンドン大学の医学生。亡き親友・フライデーを甦らせたことを発端に、国家機密『ヴィクタ―の手記』の捜索に携わることになる。冷静沈着、聡明な青年。

フライデー(CV村瀬歩)
ワトソンの親友にして故人。今わのきわ自らワトソンに頼んだがために屍者として蘇生させられる。
生前交わしたワトソンとの約束に基づいて『ヴィクタ―の手記』の捜索に同行する。

フレデリック・バーナビ―(CV楠大典)
ワトソンらの監視役を国からおおせつかった大男。豪快な性格。

ハダリー・リリス(CV花澤香菜)
元米国大統領の秘書としてワトソンの前に姿を現した謎の美女。フライデーの姿を見て「私は彼に近いかもしれない」など、謎めいた言葉を多々残す。

M(CV大塚明夫)
イギリスの国家諜報部のトップ。ワトソンに『ヴィクタ―の手記』の捜索を依頼した張本人。

ザ・ワン(CV菅生隆之)
約100年前にフランケンシュタイン博士によって生み出された"始まりの屍者"。生者同然に意思を持ち、言葉を操ったと言われている。

ニコライ・クラソートキン(CV山下大輝)
当時の世相としてイギリスとの関係が険悪だったロシア人の青年だが、「利害の一致」を理由にカラマーゾフの元へ案内を務める。

アレクセイ・カラマーゾフ(CV三木眞一郎)
天才屍者技術者で『ヴィクタ―の手記』に近しいと睨まれている青年。人里離れた土地で自身の発明した新型屍者と共に隠棲している。

物語の要・"屍者技術"とは

端的に言えば、死体に魂と似たような要素を持つ"霊素"をインストールして蘇生させる技術。概にして屍者は喋らず、生者との差は一目瞭然(また、生者のような屍者の生成は違法)。

目的ごとにインストールされた知能(戦闘、事務処理、給仕など)を持ち、余計なことを言わないタイプの労働者としての役割を果たす。人権があるようには見受けられない。

ワトソンが果たしたい『約束』とは

医学を専攻し、共同研究を行っていたワトソンとフライデー。
しかしながら自身の早逝を予見していたフライデーは、ワトソンに「屍者の研究として自分の遺体を利用すること」と「魂の在り処の証明」を頼んで死去。

物語はワトソンが約束の初段階を達成したところから始まり、最終的な「魂の存在」を探す旅路として展開してゆく…

まとめ

重厚なストーリーと独自の世界観、そして美しい映像とキャラクター。確かにさらりと楽しめるタイプではありませんが、原作未読であったとしても充分に見ごたえのある作品です。

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