D.P. -脱走兵追跡官-(韓国ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『D.P. -脱走兵追跡官-』とは、2021年8月からNetflixで配信された韓国のテレビドラマシリーズ。続くシーズン2は同じくNetflixで2023年7月から配信。制作はクライマックススタジオ、監督・脚本はハン・ジュニ。原作はキム・ボトンのウェブ漫画『D.P.犬の日』。兵役義務を果たすため軍に入隊したチョン・ヘイン演じるアン・ジュノが、脱走兵を捕らえる任務に就きク・ギョファン演じるバディ役のホヨルとともに任務の遂行にあたる物語。

『D.P. -脱走兵追跡官-』の概要

『D.P. -脱走兵追跡官-』とは、2021年8月27日からNetflixで配信された韓国のテレビドラマシリーズ。続くシーズン2は同じくNetflixで2023年7月28日から配信。制作はクライマックススタジオ、監督・脚本はハン・ジュニ。原作はキム・ボトンのウェブ漫画『D.P.犬の日』。シーズン1は2022年第58回百想芸術大賞にて「作品賞」、ク・ギョファンが「男性新人演技賞」、脱走兵ソクポン役のチョ・ヒョンチョルが「男性助演演技賞」を受賞。
軍の脱走兵を追跡する部隊に配属された主人公のアン・ジュノが、軍の先輩でありバディ役のハン・ホヨルとともに脱走兵の抱える過酷な現実に触れ、悩み葛藤しながら任務を遂行していく物語。シーズン2はシーズン1から続く形となっている。国民の義務として兵役に来た若者たちの脱走する理由が分かっても、現状は何も変わらないし変えられない。根本を正したくても正せない不条理に、ジュノはどうにかして立ち向かおうとする。立ちはだかる根強い問題に目をそむけず向き合い戦おうとするジュノの行動は、現実でも「傍観者」が「共犯者」になり得る問題をリアルに描いている。

『D.P. -脱走兵追跡官-』のあらすじ・ストーリー

初任務の悲劇とハン・ホヨルとの出会い

手を合わせるジュノ(画面右)とホヨル(画面左)

陸軍103歩兵師団憲兵隊に入隊したばかりのジュノは、鋭い観察眼を買われ捜査課の軍脱担当官である職業軍人のパク・ボムグ中士に脱走兵を捕まえるD.P.になるよう提案され任務につくこととなる。そして初任務に就いたジュノは上等兵のパク・ソンウとともに脱走兵シン・ウソクを捕まえるためソウルへ向かう。しかしそこでは捜査どころか酒を飲むことを強要され、「適当に遊んで適当に捕まえればいい」とソンウに言われるがままのジュノだった。
先輩であるソンウに従うことしかできないジュノは後ろめたさがありつつも、何杯も酒を飲み酔い冷ましにたばこを吸うため外に出た。そこへ「ライターを貸して欲しい」とフードを被った男が現れ、ジュノは「あげますよ」と言ってライターを渡す。それから再び飲んで歌って眠りに落ちてしまうジュノだが、ボムグからの電話で目を覚ます。ボムグからが衝撃の事実が知らされる。ウソクが着火炭で自殺したのだ。そして自殺に使ったライターはジュノが彼に渡したものであった。そう、あのときライターを手渡した男がウソクだったのだ。
ウソクが自殺した原因は軍内におけるいじめであり、彼は脱走して働いていた店でも辛い目にあっていた。ウソクの死を前に号泣する家族を黙って見守るしかないジュノは、ボムグから「お前らが殺したんだ!」と激怒される。呆然と立ち尽くすジュノだが、ソンウは聞き込みをして疲れて寝ていたと言い逃れをして責任を回避する行動に出る。ボムグが去るとジュノは何度もソンウを殴りつけた。先輩の言いなりになってウソクを捕まえられなかった自分自身にも怒りをぶつけるように「人が死んだんだよこの野郎!」と言ってソンウを殴り続けた。この1件がジュノにとって以降変わることなく暗い影を落とす。ジュノは罪悪感と苦しみの中でその後の任務を全うしていくようになる。
初任務でソンウを殴ったことで懲罰房に入ったジュノは後悔と自責の念に駆られていたが、ボムグから「D.P.を続けろ」と言われる。新たなバディはハン・ホヨルである。彼とともにミッションに向かうジュノはホヨルに追跡における基本を教えてもらう。ホヨルは一見不真面目そうに見えるがジュノにとって頼れる存在であり、任務を全うしようとする姿勢は同じだった。ひたすら脱走兵を捕まえていくジュノとホヨルだが、ある脱走兵を捕まえた際には彼の抱える事情を酌んで手錠を外すホヨルの優しさが垣間見れた。その脱走兵は模範兵士に選ばれるほどであったが、認知症が進む祖母を療養病院に入院させるために脱走したのだった。「おばあさんを入院させてから出頭しろ!」と言ってホヨルはその兵士を逃がしたのだ。ホヨルの行動に笑顔を見せるジュノは彼の取った行動に深く同意していた。2人のチームワークはとても息が合っていた。

ソクポンの脱走と不条理な現実

謝罪をしてほしいとジャンス(画面左)に声をかけるソクポン(画面右)

ジュノはホヨルとともにまじめに任務を全うする日々を送っていた。そんな中、ジュノの先輩にあたるチョ・ソクポンが脱走してしまう。ソクポンはオタクの一面があるメガネをかけた憲兵特任隊の一等兵だが、ジュノにはいつも優しく接してくれていた。しかし彼自身は除隊間近のファン・ジャンスによりひどいいじめを受けていた。ずっと耐えてきたソクポンだったが、ジャンスが除隊する日にこれまでの過ちを謝罪するようジャンスに求めたのだ。しかし薄笑いをしながら軽く「悪かった。これでいいか?」と適当にあしらい去って行くジャンスをソクポンは許すことができなかった。心の糸がプツンと切れてソクポンはジャンスに報復するために脱走を図ったのだ。
ボムグからソクポンを連れ戻すように指令を受けたジュノとホヨルは、ソクポンがジャンスを襲う前になんとしても阻止したいと思っていた。懸命な捜査の甲斐あって一度は彼を捕らえたものの、再び逃走を許してしまう。ソクポンからすれば、ジャンスが何の罪にも問われず除隊したことが許せなかった。それなのに、被害者の自分は脱走すれば罪に問われる。そんな矛盾に納得することはできず、何かしないと何も変わらない問題に憤っていた。そしてソクポンはジャンスにケガを負わせ誘拐して江原道(カンウォンド)の坑道へ向かった。
一方チョン・ヨンドク中佐が対テロ特殊部隊を引き連れてソクポンを捕らえる命令を下す。出発の準備を進める彼の元にイム・ジソプ大尉が「そこまでしなくても」と止めに入ったが、ヨンドクはそれを振り切り部隊を引き連れソクポンの元へ向かってしまった。
ジャンスを連れ去ったソクポンをどうにかして止めたいジュノたちだが、事態は悪いほうへと進んでいく。坑道で警察と揉めるうちにソクポンの元からジャンスが逃げた。ソクポンは警察から拳銃を奪い、ジャンスをひたすら追いかける。そしてトンネルまで逃げたジャンスに追いつき、ひざまずいて命乞いをする彼に銃を向けるのだった。緊張が走る中、ジュノより先にソクポンの元に追いついたホヨルが止めに入るも、ソクポンは空中に向けて銃を放つ。ジュノも追いつき説得を試みたが「どうしていいか分からない。もう戻れない」と言ってソクポンは泣いた。さらに特殊部隊を引き連れてヨンドクがやって来たことで、ソクポンは追い詰められたと感じ「何かしないと何も変わらない」とつぶやいて自分の喉を撃った。その場に倒れて母を呼びながら弱っていくソクポンを見てジュノはただ泣き叫んだ。

傍観者たちの苦悩と銃乱射事件

軍でいじめに合っているルリ(画面中央)

脱走兵を捕らえても心が晴れることはなく、むしろ辛い現実をつきつけられるほうが多いD.P.の任務。入隊しなければ死ぬことなどなかった人、入隊していじめにあわなければ事件を起こさず幸せな人生を送っていたはずの人、脱走兵の抱える問題は闇が深く、ジュノの頭にはソクポンの「何かしないと何も変わらない」という言葉がずっと残っていた。自殺したウソクの姉に「なぜ弟がいじめられていた時止めなかったの?」と聞かれ「すみません」と答えることしかできない現実。ソクポンもまた、「知っていたくせに何もしようとしなかった」とボムグに言い放ったことがあった。彼らに共通していることは傍観者たちに対しての怒り。ジュノはソクポンの事件以来、何かを変えたいと思っていた。
ソクポンの事件の後、陸軍本部によってボムグは責任を問われ拘束される。陸軍本部は、ボムグに今回の事が外に漏れないよう隠蔽用に作られた書類にサインをさせようとしていた。それを断固として拒否するボムグに、ジソプがジュノとホヨルのためにもサインをするよう説得した。
ほどなくして、ジュノたちとは違う部隊で銃乱射事件が発生する。D.P.の投入が決まりジュノはホヨルとともに逃走した犯人のキム・ルリを追うことになった。ソクポンの事件以来、入院をしていたホヨルに会いに行くジュノだったが、久しぶりに再会したホヨルはソクポンの事件のショックから言葉を話すことができなくなっていた。そして今回の銃乱射事件の犯人について衝撃の事実が分かる。それはソクポンの友人だった。ルリもまた上等兵からひどいいじめを受け、耐えかねた末に起こした事件だった。
銃と手榴弾を持って逃走したルリを捕まえるため、陸軍本部は情報操作に動き出す。記者会見ではジソプの元妻であり陸軍本部の法務将校であるソ・ウンがルリを執拗に「犯人」と呼び、確保が難しければ射殺も厭わないという姿勢を軍の立場として表明した。会見の後、ルリに全ての罪をなすりつけようとするウンにジソプは「かつての自分のように後悔してほしくない」と助言した。偏った考えで本質を見失い後悔しないように諭したのだ。

ジュノによる覚悟の脱走

脱走後、追いかけてきたD.P.と対峙するジュノ

ルリは軍による記者会見ののち、ライブ放送を流して自分の思いを告白した。銃乱射はいじめが引き金となったこと、そしていじめの実態を隠して銃撃だけを強調する軍を非難するものだった。ルリの告白ののち、軍は彼が自宅に現れるように仕向け現れたところを射殺する算段で動き始める。そして思惑通りルリが自宅に現れると、軍は彼を取り囲んで銃を向けた。ルリを助けたい一心のホヨルはタブレットを使いその様子をライブ配信し始める。放送している間は全国民が見ているため発砲できないからだ。またウンのほうも、ジソプの「後悔してほしくない」という言葉がひっかかり発砲命令を出せないでいた。ウンの判断の遅れとホヨルの撮影が功を奏し、ルリはなんとか射殺されずに済んだ。公正な裁判を受けさせる約束をした軍の法務室長であるグ・ジャウンは、ルリの母の前では笑顔を見せる演技をしたが、ルリを射殺して真実を隠蔽することが難しくなったため心穏やかではなかった。
一方発砲命令を出すことができなかったウンは処分を受け陸軍本部を辞めて弁護士に転身し、軍人権センターが国を相手取って起こした裁判の弁護を担当することになった。軍人権センターの幹部は、ジュノの初任務で自殺した脱走兵ウソクの姉シン・ヘヨンだった。
ウンが陸軍本部を離れる際に何かのときに使えるかもしれない、と過去に軍が隠蔽してきた事件の機密情報が入ったUSBを友人に託したことがジャウンの知るところとなった。ジュノたちはUSBを取り戻す指令を受けるが、彼はUSBを取り戻した後軍内に戻ることなく脱走を図った。このUSBを公にすることこそ、ソクポンたちのように傷付いた脱走兵たちの思いに報いることになるからだ。ソクポンの「何かをしなければ何もかわらない」という言葉はジュノの中にずっと残っている。目を背けることをやめ脱走兵となってでも事実を公にすることを心に誓うジュノだった。

訴訟の行方とその後

裁判でジャウンの証言に耳を傾けるウン

軍の機密情報を手に脱走するジュノは、ホヨルに止められても軍に戻る意志はなかった。ジュノを殺害してでも捕まえたいジャウンら上層部に対し、ホヨルはジュノの身の安全を守るために内部告発と言う形でジャウンらに条件を突き付けた。ジャウンに命令を下された部下に、汚職にまみれた軍の内情を吐かせ、それを録音してジャウンに聞かせたのだ。
その後軍対軍人権センターの裁判が始まり、ホヨルは必至にジュノの行方を捜していた。ウンはUSBを持つジュノの到着を待つ形で元夫のジソプに証言をさせるも、「国に非はない」とするジャウンらと激しく対立していた。ジソプは、ルリの銃乱射事件において、大腿部を撃たれた兵が即死ではなかったこと、1時間以上も生きていたこと、緊張状態の続く38度線に近い現場にヘリを飛ばすには現場を知らない司令部の許可が必要だったこと、そのために救助が遅れケガを負った兵が命を落としてしまったこと、彼はもしかしたら命を落とさずに済んだかもしれないこと、軍人であるがゆえの命令待ちのせいで人が死んではならない、といったことを証言した。それでもなお「個人の過失」と反論するジャウンに対し、「国を守るために軍隊に入った兵士は、命を落とせば『国に責任はない、個人の過失』と突っぱねられる。彼らはそんな国の何を守りに軍人になったのか」と問いただした。
加害者や被害者、関係者が裁判の行方を見守る中、ジュノではなくボムグがUSBを持って現れる。内部告発と言う形で証拠品としてUSBを提出したボムグは、あらかじめジュノと連絡を取って自分の元にUSBが届くように手配していたのだ。動かぬ証拠をつきつけられたジャウンらは国の責任を問われ敗訴して賠償責任を取ることになった。
ボムグは機密漏洩かつ国家保安法違反の容疑で逮捕されてしまう。彼の想定外の逮捕に泣き崩れるジュノだが、そんなジュノにボムグは「任務を最後まで全うしろ」と励ましの声をかけた。

『D.P. -脱走兵追跡官-』の登場人物・キャラクター

主要人物

アン・ジュノ(演:チョン・ヘイン)

陸軍103歩兵師団憲兵隊の二等兵。兵役義務で入隊した後にD.P.として配属される。ボクシングの経験があり検挙率No1の実績を持つ。先輩でありバディのホヨルとともに脱走兵を捕まえるため日々奮闘する。最初の任務で捕まえるはずの脱走兵が自殺をしたことにより、以降自責の念に駆られながら必死に任務を遂行する。ソクポンの事件以降苦しみはより増していき、脱走する兵士1人1人の過酷な現実を目の当たりにする度に心が締め付けられる。

ハン・ホヨル(演:ク・ギョファン)

kuni
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