MONSTERS（尾田栄一郎読切）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『MONSTERS』（尾田栄一郎読切）の概要

『MONSTERS』（モンスターズ）とは、日本の漫画家・尾田栄一郎が1994年に発表した読切漫画。作者の尾田栄一郎が連載作品『ONE PIECE』を連載する前に発表した作品で、『週刊少年ジャンプ』1994年Autumn Special号にて掲載された。『ONE PIECE』の前身と言われる『ROMANCE DAWN』も収録されている、1998年に発売された尾田栄一郎短編集『WANTED!』にて読むことができる。
『ONE PIECE』と同じ世界線を持つ物語であり、『MONSTERS』の世界は『ONE PIECE』の約400年前という設定。主人公の侍・リューマは『ONE PIECE』にも登場しており、ワノ国の伝説の侍とされている。
2021年9月に『ONE PIECE』の単行本100巻が発売された記念でボイスコミック化されており、2023年7月22日に開催されたイベント「ONE PIECE DAY’23」で、TVアニメの制作発表があった。

最強の剣豪「キング」との戦いを夢見る侍・リューマは、旅の途中で立ち寄ったとある町で竜（ドラゴン）の襲撃事件に巻き込まれることになった。そして事件の黒幕である剣豪シラノと戦う。

『MONSTERS』（尾田栄一郎読切）のあらすじ・ストーリー

侍・リューマと剣豪シラノ

世界最強の剣豪「キング」と戦うことを夢見る主人公の侍・リューマは、5日間飲まず食わずという極限の状態でとある町を訪れた。そしてレストランの前で野垂れ死んでいるところを、レストランのウエイトレス・フレアに助けられる。リューマはフレアを恩人として、恩は命に換えても返すという約束をする。フレアはそんなリューマを放っておいて、レストランで食事をしていた一流剣士・シラノに話しかけた。フレアは7年前に山に囲まれたある町が竜（ドラゴン）によって壊滅させられた”大奇襲”の唯一の生き残りであり、その時まだ幼かったフレアを救ったのがシラノだったのだ。

引き止めるフレアに優しく声をかけたシラノは、レストランを出ようとする。するとシラノの剣の鞘とリューマの剣の鞘がカツンと当たってしまった。リューマはこれに激昂。「鞘当て（さやあて）」は果たし状に値するとして、リューマはシラノに勝負を仕掛けた。シラノは世界に名を馳せる剣豪。リューマの一太刀をサッとかわしたシラノは、リューマの喉元に剣先を突きつけた。勝負はシラノの勝ちだった。

竜の角笛

リューマは食事を終えてレストランを出た。するとリューマの剣の鞘がすれ違った剣士の鞘とカツンと当たった。剣士の名前はディーアール（D・R）。リューマは「鞘当て」にまたしても激昂し、ディーアールの肩を掴んで引き止めた。するとディーアールが急に悲鳴を上げる。見るとその腹には短刀が突き刺さっていた。ディーアールはリューマに刺されたことを大きく主張し、自分が持っている「竜の角笛」は渡さないと叫びだした。そして町ごと道連れにしてやると呪いの言葉を吐き、ディーアールは持っていた黒い角笛を高らかに吹き鳴らして角笛を破壊すると絶命した。リューマは何が何やらわからず立ち尽くす。

ディーアールが死んだのを見て、周りにいた町の人々が悲鳴をあげながら各々逃げ出した。中にはリューマに激怒する人間もいた。ディーアールが吹いた「竜の角笛」とは、この世に2つとない特別なもので、竜を操る道具だった。かつては警護の騎士団に守られて厳重に保管されていたが、10年前に警護の騎士団が皆殺しにされて何者かに持ち去られたのだ。その場に駆けつけたフレアはリューマを厳しく批判。7年前に竜の恐ろしさを間近で体験したフレアにとって、この場に再び竜が現れるのは恐怖でしかない。

混乱し続けるその場に現れたのは、シラノだった。シラノは破壊された「竜の角笛」が本物であることを断定した。そして町にやってくる竜と戦わせてほしいと町の人に願い出た。いくら一流の剣士のシラノでも、竜と戦うなんてことは無謀だ。フレアはシラノを止める。しかしシラノはこれはケジメであるとフレアに返した。10年前に「竜の角笛」を護衛していた騎士団はシラノが率いていた騎士団で、死亡した兵士は皆、シラノの部下だったのだ。シラノは「竜の角笛」が盗まれた責任を取って竜と戦うこと決め、町の人間は全員避難するように促し、1人町に残るのだった。

最強の剣豪「キング」

町の人間が避難した後、フレアはやはりシラノを止めようとシラノの元へ向かった。それにリューマも付きそう。するとそこで信じられない光景を目にした。シラノが死んだはずのディーアールと一緒に町中の宝物を集めて下卑た笑いをあげていたのだ。シラノは最初からディーアールとグルで、「竜の角笛」を使って町を襲わせ、その町で火事場泥棒をしていたのだ。10年前に「竜の角笛」を警護していた騎士団を皆殺しにしたのもシラノ。7年前に大奇襲を引き起こしたのもシラノ。世間はシラノにまんまと騙されていたのだ。

それを見たフレアは絶望して町と共に死ぬことを決意。リューマはフレアの泣き叫ぶ声を聞き、シラノとディーアールの元へと走った。シラノを一太刀で斬り伏せたリューマは、やってきた竜の首も一閃で斬り落とした。竜が死んだことで町に人が戻り、シラノの悪行が人々に知らされる。竜を倒すほどの異様な強さを持っているのに、リューマという名の剣士なんて聞いたことがないとフレアは首を傾げた。するとレストランのマスターが思い出したように「リューマ・ド・キング」という名を口にする。リューマの正体は最強の剣豪と謳われる「キング」だったのだ。ただリューマが助けた人々がリューマのことを勝手にそう呼ぶようになったので、リューマは自身こそが「キング」であることを知らない。

そんなリューマは、今日も「キング」と相まみえるために旅を続けるのだった。

『MONSTERS』（尾田栄一郎読切）の登場人物・キャラクター

主人公

霜月リューマ（しもつき リューマ）

CV：細谷佳正（ボイスコミック・TVアニメ）

『MONSTERS』の主人公。作中では苗字は登場しないが、後に『ONE PIECE』のワノ国編で明らかになる。「兵の魂（つわもののこころ）」を重んじる侍で、最強の剣豪「キング」と戦うことを夢見ている。自身が「キング」その人なのだが、リューマが助けた人々がリューマのことを「リューマ・ド・キング」と呼ぶようになったため、本人は自身が「キング」であることを知らない。

『ONEPIECE』の作中では、あらゆる相手との手合いも一閃の内に勝利し続けたと語られており、後世では「生涯無敗だった」とも伝えられている。

その他

フレア

CV：花澤香菜（WEBアニメ）／坂本真綾（ボイスコミック）

とある町のレストランでウエイトレスをしている女性。7年前の大奇襲で唯一生き残った人物である。その時助けてくれた剣士・シラノを尊敬していたが、シラノが大奇襲の黒幕だったことを知り、住んでいる町諸共心中しようとした。しかしリューマに助けられて生きながらえる。

マスター

CV：野村勝人（WEBアニメ）／寺島拓篤（ボイスコミック）

フレアが働くレストランのマスター。メガネをかけた人の良さそうな男性である。

シラノ

CV：東地宏樹（WEBアニメ）／大塚芳忠（ボイスコミック）

一流と名高い剣士。羽根付き帽子とマント、毛先がくるんと巻いた長い口ひげが特徴である。「竜の角笛」を守る騎士団の団長を務めていたが、10年前に部下達を皆殺しにして「竜の角笛」を強奪。7年前にフレアの故郷の町を竜に襲わせた張本人である。世間はシラノの正体を知らず、剣士達の鑑だともてはやしていた。クズではあるが、剣の腕はいい。