復讐を希う最強勇者は、闇の力で殲滅無双する(ラノベ・漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『復讐を希う最強勇者は、闇の力で殲滅無双する』とは、斧名田マニマニによるライトノベル作品、及びそれを原作とする坂本あきらによる漫画。勇者として魔王を打ち倒したラウル・エヴァンスが、自分が命を懸けて救ったはずの人間達に裏切られ、全てを奪われ殺されたことから始まる壮絶な復讐劇を描く。復讐方法は極めて凄惨だが、その方法を敢えて選択した理由や、正義感に溢れ心優しかった勇者がいかにして復讐者へ変貌したのかが物語が進むにつれて判明していく。

『復讐を希う最強勇者は、闇の力で殲滅無双する』の概要

『復讐を希う最強勇者は、闇の力で殲滅無双する』とは、斧名田マニマニによるライトノベル作品、及びそれを原作とする坂本あきらによる漫画である。
元々は斧名田マニマニが『小説家になろう』にて小説として連載していたが、2018年10月12日に書籍化とコミカライズ化が決定された。
2019年02月12日は“小説家になろう”週間総合ランキングで第1位を獲得している。しかし、作品の過激性が規約に抵触しかねないとの懸念から、『小説家になろう』からは原作が既に削除されている。
主人公である勇者ラウル・エヴァンスは、世界と人々を救うために大魔導士ヴェンデルや聖女クリスティアナとともに魔王に戦いを挑み見事打ち倒すも、謂れのない罪を着せられ捕縛されてしまう。
その首謀者こそラウルが魔王から救ったクルツ国の王女ヴィクトリアや、パーティを組みともに魔王と戦ったヴェンデル、クリスティアナなど信頼していた仲間達だった。
自分の無事を祈ってくれていた姉や慕ってくれていた少年兵を無残に殺され、自身も火あぶりの刑に処され全てに絶望したラウルは女神に闇の力を解放させ、「やられたことをやり返す」という自ら決めたルールの下で、かつて勇者として救った人々や仲間達への復讐を開始する。
主人公はもとより、復讐対象者達も極悪非道なキャラクターばかりで、人間の善意や思いやりが悪意や裏切りで踏みにじられる救いようのない展開が多いのが本作の特徴。
復讐シーンの描写は残酷だが、絵の綺麗さや各キャラクターの心境が丁寧に描かれている点など、読者からは高評価を得ている。

『復讐を希う最強勇者は、闇の力で殲滅無双する』のあらすじ・ストーリー

序章

愛の女神によって異世界から勇者として転生し、人間達を救うために魔王を打ち倒したラウル・エヴァンス。
しかしその後、彼を待っていたのは人々の笑顔ではなかった。自分が救った人間達によって家族と無実の人々は無残に殺され、その濡れ衣を着せられた上に火炙りの処刑を宣告された。
復讐を誓ったラウルは愛の女神へ強引に迫り、自身の奥底に眠っていた闇の力の封印を解放させ、現世への復活を果たす。

ラウルの処刑から1年後、魔王と勇者が死んだクルツ国では、ラウルを嵌めた首謀者の1人である王女ヴィクトリアが、婚礼の日のパレードを迎えようとしていた。
ひと月前に王国の門兵達が不可解な死に方で全滅する事件や、国の重鎮達が原因不明の病で倒れて高熱にうなされながら「王女殿下に祝福を」と繰り返す事案が発生しており、王立騎士団長サンドラはパレードの取り止めをヴィクトリアに提言するも、「騎士や民衆が自分の盾になって守ればいい」と意に介さない。
予定通りパレードは開催され、ヴィクトリアは結婚相手のエミール公爵のマザコン具合に辟易しながらも、「男児を産み玉座に据えて自分が国の実権を握る」という大願を叶えるため、婚礼の儀を終えようとしていた。
だが、目の前の神官から放たれたのは予定されていた祝詞ではなく、サンドラが報告していた「王女殿下に祝福を」という言葉。
直後、他の神官達が惨殺されその血を浴びたヴィクトリアの前に現れたのは、神官に扮していた勇者ラウルだった。
ラウルは斬りかかってくる騎士団をいとも簡単に殺しつつ、ヴィクトリアの悪行を白日の下に晒す。彼が懇意にしていた村の住人達を虐殺するという恐ろしい行為。
これを実行したサンドラを誘導尋問し、民衆の前で自供させるとともに、男児を産み国の実権を握るというヴィクトリアの野望を潰えさせるために、生殖器を魔法で破壊する。
激痛に絶叫しつつ騎士団に命じてラウルを剣で串刺しにさせるも、彼は「これくらいじゃ死なない」と平然としていた。信じられない様子で彼を見るヴィクトリアと民衆に対して、また来ると踵を返し、「王女殿下に祝福を」の言葉を残し姿を消した。

それ以降、王都にはラウルの手によって魔法がかけられて、王都の外へ出ることはできず、人を殺すこともできなくなってしまう。
ヴィクトリアは怒りに震えながら失態を犯したサンドラを捕らえて拷問し続け、兵士達に全力でラウルを探し出し殺すことを命じる。
そしてラウルに対抗すべく、国一番の剣豪と称されるブラウン将軍のもとへ使者を出向かせる。

第2章 禁じられた謝肉祭

ブラウンは妻と、息子であるアダムとコニーと食事をしながら、勇者討伐のために王都へ発つことを告げる。そしてメイドに運ばせてきたメインディッシュの、人間の顔面の肉・骨と両眼を、興奮しながら食す。
ブラウンが王都へ出発したのを見届けたアダムとコニーは、狩の練習と称して魔法で小さい魔物をいたぶっていた。その背後にラウルが現れ2人を縄で捕縛し、使用人達に命じて庭に大きな穴を掘らせる。
そこから出てきたのはおびただしい数の人骨と、ブラウンのもとに訪れた使者の解体された死体。ブラウンは人間を殺しその肉を食べ、使用人はその後片付けで自らの懐を潤していた。
妻はラウルの死角から毒矢を放つも、魔法で反射された矢は彼女の腹を貫き、あっという間に死に至らしめた。泣き喚くアダムとコニーを尻目に、ラウルはブラウンへの復讐を果たすため準備を整える。

一方ブラウンは付き添いの兵士達とともに王都へ向かっていた。しかしその道中、突如光の玉が彼の目の前に出現し、そこからブラウンが殺したはずの使者が姿を現した。
ラウルが自分の子ども達と家で待っていることを告げられ、急ぎ戻った彼を待っていたのは、ラウルと死んだ妻が木に吊るされている姿。
怒りに震えるブラウンだが、これはかつて自身がラウルの村を襲い彼の母親を殺し、同じように見せしめとした行為の再現だった。
ブラウンは自身が最強であることに自負を持っており、勇者として持て囃されていたラウルが気に食わなかったのだ。
激突する両者だが、ラウルはブラウンを圧倒し、彼の剣と両手を魔法で破壊する。
気絶したブラウンが目覚めると、椅子に括りつけられた状態で食卓につかされ、アダムとコニーは妻の家族が開発した薬で精神を狂わされていた。
ラウルはアダムを目の前で解体し、その肉を強引にブラウンに食わせる。
命乞いするブラウンに向かって、ラウルは母も同じように命乞いしていたことを引き合いに出し殺害。ブラウンへの復讐を完遂させるのだった。

第3章 勇者と遊ぼう!〜命がけのかくれんぼ〜

静養地アルマトンにある国立薬学研究所では、ダ・コスタ卿とその息子ヨハネス、女性研究家リーネと軍事司令官輔佐のルーカスの4名が部屋の一室に集まっていた。王都から勇者の復讐に対する警告文が書かれた手紙が届いたのだ。
ルーカスが3人に復讐される心当たりがあるか問いただすと、ダ・コスタ卿は兵士に薬を盛ったと返答する。詳しく話を聞こうとした時、突如窓越しにブラウンが骸骨の状態で姿を現し、夜の12時までに逃げ切れたら見逃すというゲームの開始を告げる。
研究所に保管されている薬を奪われることを危惧した一同は保管庫に行くも、既にラウルに先を越され盗まれた後だった。
一方ラウルはその薬を研究所の職員に投与し次々と狂戦士化させていた。凄まじい怪力を発揮させる狂戦士達を圧倒し、最期は自滅する彼等を満足気に眺める。そしていよいよ一同への復讐を開始する。
とにかく時間が来るまで隠れて助かろうとするダ・コスタ卿とヨハネスに対して、リーネは勇者が見つけ出せない部屋に行くことを提案する。
コーヒーで一息入れようとルーカスが言うと、リーネは自分が淹れると言い4人分のコーヒーを準備するが、この時点で彼女はあることに気付いていた。
ルーカスが自分達に渡されたコーヒーに何か盛られたのではないかと問い詰めると、彼女は笑いながらラウルはルーカスに化けていることを見抜いていたと話す。彼を倒すためにダ・コスタ卿とヨハネスのコーヒーに狂戦士化の薬を盛っており、高らかに勝利宣言をする。

しかし全てはラウルの手中にあった。
実はダ・コスタ卿とヨハネスはずっと前にラウルに殺されており、リーネは既に孤立していたのだ。
自慢の頭脳で練った策略を破られたリーネは、ラウルが操る狂戦士達に自ら開発した毒薬を飲まされ続ける。
下痢と嘔吐が止まらなくなったり、魔物のような浅黒い皮膚になり激しい痒みに襲われるなど、毒薬によって彼女は地獄のような苦しみを味わい続ける。
ラウルは初めからリーネを逃がす気はなく、自力で解毒薬を作ればその分助かるが、彼女がこれまでに実験で殺した数えきれない人の数分だけ、毒薬を飲ませるというルールを作っていたのだ。そうして42本目の毒薬を飲んだところで、ついにリーネは力尽きた。
こうしてラウルは、リーネ・ダコスタ・ヨハネスへの復讐を完了した。

第4章 勇者と遊ぼう!~因果応報の遠足~

国境付近にあるノール村。
一見平和な村で、難民や旅人が迷い込んだ際も手厚くもてなすが、実は村ぐるみでそんな人達を殺し身ぐるみを剥いで金を稼いでいた。
病気の父に代わって街へ商品を卸した帰りに、道に迷ってしまった幼い姉妹も、その犠牲となってしまう。

そこへ復讐に訪れるラウル。村長をはじめ村人達は身に覚えがないとはぐらかすも、闇魔法で全てを把握している彼には通じない。
実はラウルが魔族の襲撃から命を救った少年は、その後補給兵として軍に所属し、ラウルの役に立ちたいと意気込んでいた。しかしヨハネスに騙されて例の薬を飲み狂戦士化してしまう。ヨハネスから水を飲めば元に戻れると聞いた彼は、周辺の魔物を倒しつつノール村へ助けを求めるも、村人達は彼に「金を払え」などと弱みに付け込み、そのまま見殺しにしていたのだ。
言い逃れできず怯える村人達。村長はラウルに「自分達に何をする気だ」と聞くと、ラウルは「楽しい遠足の始まりだ」と言って、村人達を魔法で永遠と歩かせる。
隣村のモルトケ村がゴールだとラウルは伝えていたものの、実際はゴールに着くと魔法によって元いたノール村まで戻ってしまう現象を作り出す。
喉の渇きを訴え、「1杯だけでいいから水をくれ」と言う村長へ、ラウルは水を飲みつつ「どこかで聞いたセリフだな」と冷たく言い放つ。
それを聞いた村長は、かつて狂戦士化した少年兵に言い放った言葉だと気付く。
せめて子ども達は見逃せと訴える村人へ、ラウルは見殺しにされた少年兵も子どもだったとし、魔法で彼等の子ども達を殺す。泣き叫ぶ村人達だが、実は魔法で幻惑を見せているだけで、本物の子ども達は村に閉じ込めていた。
泣き叫ぶ彼等をさらに歩かせ、いよいよ心身の限界に近付いたところでようやくモルトケ村へ到着。しかしこの時点で余裕がない彼等は、モルトケ村の門へ押し迫り水をよこせと口々に怒号を並べる。それでも心優しいモルトケ村の人々は水を渡そうとするが、ラウルが村人に紛れてこれまでの悪行を告白する。さらに証拠となるものを身に付けていた村人から魔法で奪い取ると、元の持ち主である男性の手へ渡す。それは殺された幼い姉妹がつけていた髪飾りで、男性は彼女達の父親だった。ノール村の悪行を知ったモルトケ村の人々は怒り心頭に。ダメ押しで魔法によって門に突撃させられる村長達へ、この村まで略奪はさせないと投石攻撃が開始される。
村人達は全員死亡し、瀕死ながら水を求める村長へ、ラウルは少年兵へ村長がしたのと同じように金を求める。最期まで因果応報を味わわせながら、ノール村への復讐を完遂させた。

第5章 愛多ければ憎しみ至る

クルツ国の地下牢に捕縛されていたサンドラは、拷問によって精神を崩壊させられていた。
ラウルは魔法でヴィクトリアへ成りすますと、サンドラを唆して彼女に甲冑と剣を与えて、国王の側近達と兵士達を殺させる。
怒り狂ったヴィクトリアはサンドラを罵倒し捕縛させ、立場が悪くなる一方の自分がどうすれば再起できるかを思案する。
そこで勇者を捕らえて処刑し、国を脅かす存在を排除した英雄となり王となることを計画。
笑いが零れる彼女を見つつ、密かに側近に変装していたラウルは邪悪な笑みを浮かべていた。

そして3日後、処刑場に吊るされたサンドラを前にして、ヴェンデルとクリスティアナを引き連れたヴィクトリアはこれまでの自分の罪を全てサンドラへ擦り付けて、民衆へ石つぶてを配布。
ストレスの限界を迎えていた民衆は、一斉に投げつけていたぶった挙げ句、女騎士団によって処刑場から落とされた彼女を犯そうとする。
その時、ラウルが再びヴィクトリアと民衆の前へ姿を現した。
自身が処刑された時と全く変わらないことをしているヴィクトリアを嘲笑いながら、見世物を開始すると宣言するラウル。
魔法でヴェンデルやクリスティアナ、そしてヴィクトリアの醜態といえる過去を民衆へ見せていく。
怒り狂うヴィクトリアは、クリスティアナへ聖魔法でラウルを殺すよう命令し、国民達へ堂々と勝利宣言を行う。

しかしクリスティアナは笑みを浮かべながら、反逆者になりたくないので命令には従えないと言い放った。
意味の分からないヴィクトリアに対し、彼女の父である国王の側近を殺したことなどから、国王より目障りとされ「廃棄処分」を下されたことをクリスティアナから教えられる。
信じられず詰め寄るヴィクトリアへ、ラウルは国王からの物証を渡すようクリスティアナへ言う。
そこには国王のものである証の紋章で封をされた手紙があった。
震えながら手紙を読むヴィクトリアの背後から近付いたラウルは、魔法で拡声し内容を読み上げると、その命をもって勇者の怒りを鎮めろと書かれていた。
それでもなおヴィクトリアは作り物だと手紙を破り捨て、騎士や兵士にラウルとクリスティアナを捕らえるよう命ずるも、もはや誰も彼女に従わない。
ラウルはかつて自分が味わった「信じていたもの全てに裏切られた気持ち」を見事にやり返し、彼女を絶望の淵へ追い込む。
最早逃げ場もなく、味方もいないヴィクトリア。
そこでサンドラが、瀕死の状態でありながら嬉しそうに「もう王女様の味方は私だけだ」と呟くのを、ラウルとヴィクトリア、そして民衆は聞いた。
ラウルがそんなサンドラに魔法をかけて動きやすくさせると、剣を持ってヴィクトリアに近付いていく。
誰にも守られず瞬く間にサンドラへ組み伏せられたヴィクトリアの腹部へ、サンドラは苦しみから解放すると言いながら容赦なく剣を突き立て、自身の首を短剣で掻っ切り自害した。

その後ラウルはヴィクトリアを魔法で死なない状態にすると、見晴らしのよい丘へ連れていき十字架へはりつけにする。
死肉を求める動物や虫に全身を喰われながらも死ぬことができないヴィクトリアは、今後永久に苦しみを味わうことに。
こうしてヴィクトリアとサンドラへの復讐を完遂した。

第6章 奴隷魔族の反乱

ヴィクトリアとサンドラへの復讐が終わってから1ヶ月後。
クルツ国の領土にあるホラーバッハ国の魔族奴隷収容所には、商人アリンガムとヴェンデル、そしてラウルの姿があった。
しかし同時刻、クルツ国の闘技場では、ラウルの故郷をブラウン将軍と焼き討ちした兵士達が、彼の指導のもと処刑されていた。
国王に呼ばれたラウルは、彼の偽物が魔族の奴隷売買に関わっていることを話し、アリンガムとヴェンデルの処刑を命令する。
国王に「邪魔だけはするな」と警告し、ラウルは模写魔法で自身の偽物として行動している少女エイダ・テイラーへ接触。
彼女がわざわざ偽物を演じている理由など全て調べ尽くしていたラウルは、魔法でその復讐心をさらに焚き付けた。
彼女の父であるチャールズはアリンガムのもとで会計士として働いていたが、新事業という名目で魔族の奴隷売買をしていることに気付いてしまった。それを国の役人へ密告しようとしたところを捕えられ、全身バラバラにされてエイダ達家族のもとへ送られたのだ。
ラウルはそんなエイダに魔法で自分の身体に彼女の魂を憑依させ、力を貸し与える代わりに復讐の実行をするよう指示する。

奴隷魔族をいたぶる守衛達を次々に殺して回るラウル(エイダ)は、ついにアリンガムとヴェンデルのいるホール最奥に到達。
怯えるアリンガムだが、ヴェンデルは余裕の表情を崩さない。
目の前にいるラウルは偽物であり、恐れるに足りないと思っているのだ。
しかしラウルは強大な魔法を使い、紛れもない本物であることを見せつける。

ここで回想に入り、ラウルとヴェンデルの関係がどのように構築されていったのかが明かされる。
幼く純粋なラウルは、同級生からイジメを受けていた。そこへヴェンデルが魔法でラウルを助けたことをきっかけに、2人は親友となる。
しかし実は、ラウルへのイジメを仕向けたのはヴェンデルだった。彼がラウルに信頼されるために芝居を打とうと、同級生に金を払ってイジメを依頼していたのだ。
その後大人になった2人は魔王を倒したが、王女ヴィクトリアから届いた手紙であっさりとラウルを裏切ることを決めると、自身は捕まったふりをしてラウルを王国軍に捕えさせる。
そしてラウルに真実を明かし、用済みとなったラウルを見捨てたのだ。

ここで現在に戻り、ラウルは魔法で闘技場を作ると、ヴェンデルを特等席に座らせ、アリンガムへの復讐を始める。
アリンガムはラウルへ直接的な被害を与えたり裏切ったわけではないので、「やられたことをやり返す」というルールを設定しているラウルには手出しできないが、代わりにこれまで散々いたぶられてきた奴隷魔族達へ復讐の機会を与える。
ラウルは主導権をエイダに渡し、奴隷魔族達を複数人で交代してアリンガムへ制裁を加えていく。
息も絶え絶えになってきたところで、エイダは魔法で作り出した道具を使い、アリンガムの生殖器を削り落とした。
その後も魔族達の復讐は続き、アリンガムは見るも無残な姿で最期を迎える。

その様子を見物していたヴェンデルは、そろそろお暇すると去ろうとするが、ラウルに次はお前の番だと告げられる。
ヴェンデルはラウルの「やられたことをやり返す」ルールがあるから自分に手出しはできないとタカをくくっていたが、そんなルールを律義に守るのは生前の勇者だった時のラウルであって、今の俺ではないと笑みを浮かべ話す。
ヴェンデルは焦り魔法を使って逃亡を試みるも、ラウルの魔法で再び闘技場へ戻されてしまい、さらにヴェンデルが取引相手としていた貴族達や彼を慕う女性達に魔法でこちらの様子が中継されており、戦わざるを得なくなってしまう。
ヴェンデルはいきなり最上位の炎魔法でラウルを殺そうとするも、ラウルは簡単にこれを防ぎ、ヴェンデルの魔力を奪う魔法を使う。
再び魔法を使おうとしたヴェンデルだが、既に魔力はほぼ残っておらず、使うことはできなくなっていた。
追い詰められたヴェンデルはヤケになって殴りかかるも、当然ラウルには通じず反撃を喰らう。
そしてヴェンデルは、妊娠させた女性を貴族へ売り飛ばし殺させるという悪行をラウルに暴かれ、貴族達や女性達からも見捨てられる。
全てを失ったヴェンデルは、ラウルの幻惑魔法によって精神世界で殺され続ける無間地獄へと陥った。
終わりのない死の連続にとうとうヴェンデルの精神は崩壊。ここに大魔導士でありかつての親友でもあった仲間への復讐を完了した。

第7章 魔女裁判

アリンガムとヴェンデルへの復讐から2ヶ月後。
クリスティアは牢獄に幽閉されていた。
ヴィクトリアへの復讐の際に彼女が聖魔法で欲望の解放を行い操ったことが公となったのを皮切りに、民衆からも同じことをされたという声が多く報告され、罪に問われているのだ。
そんなクリスティアのもとに現れたラウルは、これまでヴェンデルやブラウンなどへも聖魔法で操ってきたことを暴く。
次の復讐対象は自分だと気付いているクリスティアは、ラウルがどんな方法で復讐してくるのか楽しみにしていると笑みを浮かべながら言い放つ。
そして開始された断罪裁判では、彼女の叔母によるクリスティアが実の両親を自殺に追い込んだことへの告発をはじめ、兵士同士を殺し合わせたことや一国を破滅に追い込んだことなどが次々に明かされた。
しかし当のクリスティアは、あれは全て救済であり、主に選ばれた聖なる存在である自分が死ぬことで民衆の罪が許されるなら、喜んで死ねると宣言する。
早く殺すべきだと騒ぎ立てる傍聴していた民衆だが、クリスティアの弁護士シムがいずれの証言も物的証拠はないとして民衆を黙らせる。
国王が聖女の力を失うのが惜しくなり、裁判において証拠を捏造して無敗記録を持つシムを送り込んだのだ。
ラウルは全て想定内だと、新たな証人として裁判へ参加。
シムを上回る証拠の捏造をし返して、これまでのシムの証拠捏造も暴いていく。
追い詰められたシムはクリスティアに助けを求めるも、クリスティアは「救済」としてシムに魔法をかけて、彼は飛び降り自殺をする。
クリスティアにとってシムへの救済は、彼自身が死ぬことで裁判の無敗記録を永遠のものとすることだったのだ。
これによりクリスティアの罪は確定となり、火炙りの刑に処されることに。

その5日後、民衆の前でクリスティアは業火に焼かれるが、一切苦しむことなく逆に快楽を覚えつつ死んでいった。
ここから、ラウルによるクリスティアへの復讐が始まる。
ラウルはテオドールが自分の命を狙っていることに気付いており、わざと光魔法の加護がついた矢をその身に受けて彼女に殺させた。
再び白い世界にいる愛の女神のもとに来たラウルは、自分を地獄に連れていくことを命令し馬車を用意させる。
そしてあの世で魂の行き先を決めてもらうために行列に並んでいるクリスティアを強引に馬車へ乗せ、地獄へ行くことを話す。
自分は神の国で主の愛を受けると地獄へ行くことを断るクリスティアだが、ラウルは彼女が救済した人達が地獄へ行っていないか確かめ、もし神の国へ全員言っていたら自分を好きにして構わないと賭けを提案する。
自身の救済を疑っていないクリスティアは、その賭けに乗り地獄の扉を通り、地獄へと向かう。
しかし、そこにはかつて救済したはずの傭兵達や両親がおり、両親からはお前のせいだと糾弾されてしまう。
それでもなお救済を信じるクリスティアへ、ラウルは彼女が信仰している神様である愛の女神の醜態を魔法で見せて、彼女の信仰心を揺さぶっていく。
ついに追い詰められたクリスティアは、初めてラウルへ殺意を向けて聖魔法を放とうとする。

しかし、地獄では聖魔法を使うことができなくなっており、もはやクリスティアナには何の力もなかった。
ラウルはそんな彼女へ、聖女ではなくただ1人の痛い女だと笑いながら言い放つ。
さらにそこへ、クリスティアナが救済と称して操り死んでいった人達が、地獄の灼熱の業火に焼かれながら彼女に詰め寄ってきた。
クリスティアナの救済を信じていたのに地獄で永遠の苦しみを受けている彼等は、再び救済を求めている。
それを目の前にしたクリスティアナは、とうとうこれまでの信仰を全て捨てて、馬車で去ろうとするラウルへ助けを求める。
ラウルは愛の女神が馬車へ乗せていた長い鎖を垂れ流し、これに掴まれた奴だけ助けてやると言う。
するとクリスティアナに詰め寄っていた人達が、次々と鎖を掴もうと押し寄せてきた。
クリスティアナはこれまでに見せたことのない凄まじい表情でそんな人達を蹴落として、自分だけが助かろうとする。
だが、その瞬間鎖は千切れ、クリスティアナは完全に地獄へ落ちた。
元々クリスティアナは地獄へ落ちることが決定しており、地獄への扉を通れたことがその証拠となっていた。
かくして、ついにラウルはクリスティアナへの復讐を完遂させたのだ。

『復讐を希う最強勇者は、闇の力で殲滅無双する』の登場人物・キャラクター

主人公

ラウル・エヴァンス

本作の主人公。
もとは異世界にいたが、愛の女神によって現世に転生し、勇者として人々を救うため魔王を打ち倒した。
元来は正義感に溢れる心優しい性格だったが、彼を手中に収めんとする王女ヴィクトリアをはじめとする者達に裏切られ、家族や周囲の人間を殺された挙句、無実の罪を着せられ処刑されてしまう。その経緯から「やられたことをやり返す」という独自のルールのもと、復讐対象者達に次々と復讐を行っている。
復讐のために、愛の女神から自身の中に眠っていた「闇魔法」の力を解放させており、他者を寄せ付けない圧倒的な実力を誇る。

ラウルの元パーティーメンバー

ヴェンデル

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