伊藤潤二『マニアック』(アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『伊藤潤二「マニアック」』とは、伊藤潤二のホラー漫画を原作としたオムニバスアニメで、2023年1月からNetflixで配信された。伊藤潤二の『首吊り気球』、『墓標の町』、『恐怖の重層』、『富江』といった人気の高い短編作品をアニメ化している。櫻井孝宏や朴璐美などの人気声優を起用し、高いクオリティの演技力と作画で伊藤潤二の世界観を表現している。
配信開始前から伊藤潤二ファンを中心に注目され、高い評価を得た。

伊藤潤二『マニアック』の概要

『伊藤潤二「マニアック」』とは、伊藤潤二のホラー漫画を原作としたオムニバスアニメで、2023年1月からNetflixで配信された。伊藤潤二の『首吊り気球』、『墓標の町』、『恐怖の重層』、『富江』といった人気の高い短編作品をアニメ化している。櫻井孝宏や朴璐美などの人気声優を起用し、高いクオリティの演技力と作画で伊藤潤二の世界観を表現している。
配信開始前から伊藤潤二ファンを中心に注目され、高い評価を得た。

伊藤潤二『マニアック』のあらすじ・ストーリー

怪奇ひきずり兄弟 降霊会

両親の亡くなった引摺(ひきずり)家の長男、一也(かずや)はある日、美しい女性・サチヨと出会う。怪奇現象に学術的な興味があるという彼女の気を引くために、一也は引摺家で両親を呼び出す降霊会を開くことにする。サチヨも参加した降霊会で、一也の弟の四五郎がエクトプラズムのような物質を吐き出し、父親の霊が乗り移る。父親は一也が本当は働いていないこと、兄弟に横暴に振舞っていることを非難し、「今日から四五郎を家長にする」と宣言する。
その日から四五郎は家の中で王様のように振舞うようになるが、サチヨは四五郎が吐き出したものがエクトプラズムなどではなくただのうどん粉であったことを知る。真実を知った一也は怒り狂って四五郎に迫るが、そのとき三男のヒトシに本物の父親の霊が乗り移る。パニックに陥る引摺の前で、父親の霊は何も言わずに墓の中へと消えていった。

トンネル奇譚

小学生の五郎は幼い頃、母親が町のトンネルで自殺したという悲しい経験をしていた。ある年の冬、妹のマリがたびたび無意識のうちにトンネルへ行ってしまうという怪現象が起きる。吹雪の夜、帰ってこないマリを父親が探しに行くが、いつまで経っても戻らない父親を心配した五郎はひとりでトンネルへ向かう。五郎はマリを見つけるが、トンネルの仲を大量の霊魂が光の乱反射のように飛び交う姿を目撃する。マリはまるで実態がなくなったかのようにトンネルの壁の中へ消えていってしまった。

アイスクリームバス

妻と離婚したシングルファザーの園原(そのはら)は、やんちゃなひとり息子の友樹に手を焼いていた。友樹は週に一度マンションにやってくるアイスクリームバスに夢中だ。そのバスは子どもたちにアイスを売るだけでなく、アイス食べ放題のバスに子どもたちを乗せて町内を一周するというサービスも行っていた。
アイスクリームを通して友達ができ、友樹は楽しそうにしていたが、園原はバスに乗り込んだ子どもたちが床に出来たアイスの山にこぞって顔を突っ込んでいるところを目撃する。自分の見た物が信じられない園原だったが、ある日帰宅すると友樹がアイスクリームになった友達を貪り食っていた。園原が友樹を止めようとすると、友樹の首がごとりと落ちる。その断面は色鮮やかなアイスクリームなのだった。

首吊り気球

人気絶頂のアイドル、藤野輝美(ふじの てるみ)が首つり自殺を遂げた。輝美と同じ高校に通う友人の森中和子(もりなか かずこ)は葬儀に出席し、輝美の恋人だった白石晋也(しらいし しんや)を励ます。
輝美の自殺にショックを受けたファンの後追い自殺が話題になると同時に、奇妙な噂が流れ始めた。輝美の巨大な顔の幽霊が各地で目撃され始めたのだ。和子は信じていなかったが、ある夜、晋也と共に輝美の幽霊を目撃する。それは気球のように大きな輝美の顔をしており、胴体のかわりに紐が垂れ下がっていた。すると輝美の気球と同じような晋也の気球が現れた。紐の先は輪っかになっており、晋也は気球に首を吊られて死んでしまう。
それ以降、気球は次々に現れてあっという間に日本中を埋め尽くした。気球は自身と同じ顔の人間を狙って吊り上げ、空は首吊り死体をぶら下げた気球でいっぱいになる。和子の家族も吊られてしまい、和子はひとりで家に閉じこもっていたが、窓の外から弟が自分を呼ぶ声を聞き、窓を開けてしまう。そこには弟の死体をぶらさげた、弟の気球があった。和子の眼前に輪っかが迫る。

四重壁の部屋

小学生の双一(そういち)は、周囲の人間に悪意を振りまいて生きる少年だ。双一の兄の公一は、弟が勉強の邪魔をすることに悩んでいた。公一の話を聞いた父親は、知り合いの工務店に頼んで公一の部屋に防音工事を施すことを決める。工事にやって来たのは互須(たがいす)という怪しい男だった。互須は双一を気に入り、工事の手伝いをさせ始める。
工事が終わった日、公一が部屋へ行ってみると、部屋は四重の壁に囲まれた奇妙な構造になっていた。かろうじて机と椅子だけがある狭いスペースで公一は勉強をはじめるが、静かなはずの空間に双一のたてる騒音が響き渡った。双一は部屋と部屋の隙間の空間に入り込んでセミの鳴きまねをしていたのだ。公一は双一を捕まえようとするが、工事を手伝ったことで構造を把握している双一に追いつけない。公一は仕方なく部屋から出ることにする。双一は大喜びでセミの鳴きまねを続けるが、狭い空間で大声を出し続けたことで酸欠を起こして倒れてしまうのだった。

睡魔の部屋

平野雄二(ひらの ゆうじ)は恋人のマリに、連日みている奇妙な夢のことを相談する。夢の中にいるもうひとりの自分が、夢を通じて現実の自分と入れ替わろうとしているというのだ。雄二は不眠で酷い顔色だった。マリは雄二の話のすべては信じなかったが、彼のアパートに行き、彼が眠っている間、手足をガムテープで縛って見張る役割を引き受ける。手足にガムテープを巻きつけた雄二はあっという間に眠ってしまい、マリは雄二のガムテープを剥がしていった。すると、雄二の腕がとつぜん内側へ裏返った。骨も筋肉もないかのようにどんどん内側へ巻き込まれていく腕にマリが愕然としていると、雄二が目を覚まし、格闘の末に腕を元に戻す。
夢を通じて現実へやってこようとしているもうひとりの雄二は、雄二を裏返そうとしているのだ。完全に裏返ったとき、夢の雄二と現実の雄二は逆転する。そして夢の雄二が不便な現実へやってこようとしているのは、恋人のマリを欲しているためだった。それを聞いたマリはガムテープで雄二の腕と自分の腕を繋ぎ、しっかりと手をつなぐ。眠気に耐えられず雄二が意識を失うと、裏返しが始まった。マリは抗うことなく雄二の裏返しに巻き込まれていき、雄二と共に現実を去った。アパートには夢からやって来た雄二だけが残されるのだった。

侵入者

部屋数を把握できないほど広大な屋敷にひとりで暮らしている押切トオル(おしきり トオル)は、家の中でたびたび何者かの気配を感じることに悩んでいた。図書室でオカルト系の本を読んでいた押切に、同じような趣味の3人組が声をかけてくる。押切が自分の家にまつわる悩みを彼らに話すと、押切の家に全員で行ってみようということになった。
屋敷で押切と3人組が話していると、窓から見える庭に押切が現れた。もうひとりの押切は死体を埋めており、押切たちに気付くと指をさして大笑いする。全員で庭に出てみるともうひとりの押切は消えていたが、死体が残っていた。その死体は3人組のうちのひとりと同じ姿をしていた。庭を掘り返してみると、残りの2人と同じ姿の腐乱死体が出てくるのだった。

屋根裏の長い髪

長い髪が自慢のチエミは、長い間付き合っていた平塚(ひらつか)に一方的に別れを告げられる。もともとチエミはショートカットだったが、平塚に勧められて髪を伸ばし始めた。傷心のチエミは家に帰ると、妹のエリに髪を切るように頼む。エリが鋏を探しに部屋を出ていると、チエミの叫び声が響き渡った。母と共にチエミの部屋に向かったエリが見たものは、首から上が忽然と消えたチエミの死体だった。
チエミの葬儀が終わってからしばらくして、エリの家は屋根裏でネズミがたてる騒音に悩まされていた。心臓を悪くしているエリの父が様子を見てこようと屋根裏に上がるが、いつまでたっても降りてこない。心配したエリが屋根裏へ向かうと、父は恐怖の表情のまま心臓発作を起こして死んでいた。父の視線の先には、長い髪が天井の梁に蜘蛛のように絡みついた、チエミの首があった。それはエリを気にするそぶりもなく、髪を蠢かせてエリの入ってきた入り口から出ていった。成すすべもなく姉の首を見送ったエリは、動いているのは首ではなく髪なのだと悟った。
後日、平塚は部屋を埋め尽くす髪に絞め殺されていた。

サラリーマンの赤坂(あかさか)は、1年間の海外出張を終えて日本に帰ってきた。赤坂の家は建てたばかりの新築だったが、兄の海外出張を聞いた弟の誠二(せいじ)が、勝手に恩師の呂木の一家に貸す段取りをつけてしまった。赤坂は断ろうとしたが、強引に押し切られて貸すことになってしまった。
赤坂が帰ってきた家はひどいことになっていた。台所では食べ物が腐り、浴室では水が腐り、壁も床も天井も、家具までが黴で埋め尽くされていた。呂木の一家の姿はない。赤坂は激怒して誠二に連絡する。誠二は家にやってくるが歯切れが悪く、どこか怯えている様子で家に入ろうとしない。誠二は赤坂が旅立った後、様子を見に訪れた家で、まるで黴が動いているかのような呂木の赤ん坊を目撃したという。
赤坂は家の中で、黴に浸食されて死んでいる呂木とその家族を発見した。そして赤坂もまた、黴の餌食になろうとしていた。

蔵書幻影

白崎五郎(しらさき ごろう)は人里離れた屋敷で恋人の香子(こうこ)と共に、山のような本に囲まれて暮らしている。五郎は蔵書に異様な執着があり、本が決まった場所にないと取り乱したり、特定の本に対して異常に怯えることがある。情緒不安定な五郎は香子に支えられて暮らしていたが、徐々に精神の均衡を失っていく。
本に取りつかれた五郎は本から解放されるため、すべての本の内容を覚えようと決心する。五郎は狂気に囚われたまま本に埋もれ、倒れた燭台から燃え広がった火に呑まれて死んでいく。
そして一連の出来事もまた、本に取りつかれた老人の妄想に過ぎないのだった。

墓標の町

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