光が死んだ夏(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『光が死んだ夏』とは、モクモクれんによる漫画で、高校生の少年よしきと親友・光(ひかる)の姿をした得体の知れない「何か」の交流を描く青春・ホラーストーリー。「次にくるマンガ大賞2022」Webマンガ部門でGlobal特別賞を受賞し、「このマンガがすごい!2023」オトコ編では第1位に選ばれた。
モクモクれんが描いた短編BL漫画が元になっており、連載版でもよしきと「何か」の関係を主軸に物語が進行する。舞台となる田舎町に「何か」が現れたことをきっかけに、次々と怪事件が起きていく。

『光が死んだ夏』の概要

『光が死んだ夏』とは、モクモクれんによる漫画で、高校生の少年よしきと親友・光(ひかる)の姿をした得体の知れない「何か」の交流を描く青春・ホラーストーリー。KADOKAWAのWeb漫画メディア「ヤングエースUP」に連載された。
「次にくるマンガ大賞2022」Webマンガ部門でGlobal特別賞を受賞し、「このマンガがすごい!2023」オトコ編では第1位に選ばれた。YouTubeチャンネル「エースこみっくチャンネル」にて、序盤のエピソードがボイスコミック化されている。
モクモクれんが描いた短編BL漫画が元になっており、連載版でもよしきと「何か」の関係を主軸に物語が進行する。舞台となる田舎町に「何か」が現れたことをきっかけに、次々と怪事件が起きていく。

『光が死んだ夏』のあらすじ・ストーリー

親友の死と「何か」

ヒカル(右)に縋りつかれるよしき(左)

ある田舎町の夏、高校生のよしきは親友の光(ひかる)とアイスを食べていた。ふと、よしきが「お前やっぱ光ちゃうやろ」と呟くと、光はおぞましい「中身」を溢れさせながら「お願い、誰にも言わんといて」と涙ながらによしきを抱きしめる。光になりかわった「何か」にとって、初めての学校、友達と食べるアイスのおいしさ、そして何より初めての友達であるよしきの存在はあまりにも大きかった。よしきもまた、無二の親友・光を失った現実に耐えられず、光として生活する「何か」を光ではないとわかっていながら、ずるずると受け入れてしまうのだった。
よしきが光と下校していたある日、たまたま遭遇した松浦という老婆が光を見て「ノウヌキ様」「ノウヌキ様が山から下りてきておる」と叫び出した。その晩、老婆は不審な死を遂げる。

光やクラスメイトと夏を過ごすよしきは、あるときスーパーで暮林理恵(くればやし りえ)という主婦に出会う。霊感があるという理恵は、よしきをひと目見ただけで彼がよくないものと関わり合いになっていることを見抜いた。光が死んでいるとわかっていながら光との関係を断ち切ることができず、悩んでいたよしきは理恵に自分の状況を話す。すると理恵もまた、過去に亡くなった夫が「帰ってきた」ことがあるという。しかし夫の帰宅はよくない結果を招いた。理恵はよしきが「それ」と長く関わればよしきもまた人間ではいられなくなると忠告し、よしきに前を向くように促した。
後日、よしきはもう光がいないという事実を受け入れようとし、光を拒絶する。よしきを好きな光はよしきの拒絶にショックを受け、「中身」を吹き出させてよしきを呑み込む。光の中身が流れ込んできたよしきの脳裏に、誰かが人間の生首を抱えている光景が流れ込んできた。光の癇癪はよしきが幻を見ただけで収まったが、光はよしきに涙ながらに謝り、「嫌われたくない」と懇願する。生前の光とはかけ離れた幼さを目の当たりにしたよしきは、危険であることを理解しながらも「光は何も知らないだけかもしれない」「だったら俺が教えなければ」と考え、理恵の忠告を無視する口実を見つけてしまった。

忌堂家とウヌキ様

光の中にいる何かは、集落の年寄りや上役は承知している、昔からそこにいるものだった。光の生まれた家である忌堂(いんどう)家は代々それを「ウヌキ様」と呼び、管理する役目を負っていた。しかし光の父である晃平(こうへい)が事故で死に、正式な後継がいなくなってしまう。忌堂家以外の者はウヌキ様の管理方法を詳しくは知らず、どうすることも出来なかった。あるとき光はなんらかの「儀式」をするためにひとりで山に入り、そこで事故にあって死んだ。大人たちが行方不明になった光を探して大騒ぎする中、よしきは無断で家を飛び出して山に入り、既に冷たくなっている光を発見する。しかし親友の死を受け入れられなかったよしきは誰にもそのことを言わずに家に戻り、その一週間後、光は帰ってきた。
光に入ったそれが山を下りてきたことで力の均衡が崩れ、集落の中では悪霊とも妖怪ともつかない悪いものがたびたび現れるようになっていた。村の上役たちは「クビタチの業」と呼ぶそれが山からいなくなったせいだと理解しており、ふたたびそれを封印するため、「田中」という人物に連絡をとる。
よしきは光がそばにいることで様々なよくないものを引き寄せるようになり、光はそれらからよしきを守るのだった。

よしきの包丁と光の半分

村の上役が呼びよせた青年「田中」は、村の上役たちと会う前に山に入り、小さな鞄を見つけた。それは光の父・晃平が生前使っていたもので、光が行方不明になった日に持っていったものだった。中には魔除けの力が宿った品が入っていた。
田中が山を見回った結果、山に充満していた「ケガレ」がかなり薄くなっていた。そして、田中が安置として張った結界に外側からたくさんの傷がついていた。これらのことから、田中はノウヌキ様が「山から下りてきている」「どこかに潜伏している」と判断した。それは村の上役たちが何より恐れていたことだった。田中はノウヌキ様を炙り出すため、上役に案内させて神社の外れに向かった。そこには石を組み合わせて作られた、小さく古びた祠があった。とうの昔に打ち捨てられて、上役も何が祀られているのかわからないその祠を、田中は乱暴に蹴り崩してしまう。そして「まだ下にいるな」と呟くと、自分の血をつけた鈴を放り投げる。田中はその祠から引きずり出した「ケガレ」を猟犬にして、ノウヌキ様を見つけさせるつもりだった。上役は「この男に任せていては大変なことになるかもしれない」と思いつつ、「自分は心のどこかでそれを望んでいるのかもしれない」とも考えるのだった。

よしきと光の友人のひとりである朝子(あさこ)は、小さい頃から少しだけ霊感があった。人ならざるものを見ることはできないが、発する音や声を聞くことができた。朝子は経験上、そういったものに積極的に関わらないことにしていたが、必ずしも悪いものとは限らないことも知っていた。
よしきは友人の巻(まき)、ユウキ、そして朝子と共に、光の家に泊まり込みで遊ぶことになる。ゲームをしたり花火をしたりと、楽しい時間を過ごしていた。途中、花火に使っていたチャッカマンが切れてしまったので、光と朝子が貰いに行くことになる。その途中、光とふたりきりになった朝子は「あなたは一体、誰ですか?」と問いかけた。「ばれてしまった」と思った光が朝子を殺そうとしたとき、追いかけてきたよしきがそれを止める。誰かを害したわけでもない友人の朝子を光が殺そうとしたことに、よしきは愕然とする。光は「さすがに朝子はあかんよな」と言って反省する素振りを見せるが、光にとって命とは生死に関わらず同じ物で、「魂が消えるわけではないのだから、生きていても死んでいてもどっちでもいい」と考えているのだった。
朝子は短時間気絶していただけで、無事に済んだ。朝子は「光が幽霊に取りつかれている」と考え、その幽霊とコンタクトを試みたに過ぎなかった。
光はよしきを失望させてしまったことに悩んでいたが、登校日の朝、よしきは何食わぬ顔をして光を迎えに来た。それだけでなく「今日は一緒にサボろう」と言って光を誘う。光は戸惑いながらもよしきとふたりで遊びに出かける。映画を観たり買い食いをしたりして過ごし、よしきの家で漫画を読む。いつもの調子で光が他愛もない話をしていると、ふと立ち上がったよしきが光の腹に触れた。光が見ると、腹から包丁の柄が生えていた。友達の朝子を何のためらいも悪意もなく、虫のように殺そうとした光を見て、よしきは「こいつとは絶対に相容れないのだ」と思いつめ、殺そうとしてしまったのだ。しかし光の死体に宿ったそれは、腹を刺された程度では何ともない。光は思いつめて憔悴したよしきを見て必死に考え、自分の「中身」を半分ちぎってよしきに差し出す。そうすることで簡単に人を殺すことができない程度に自分を弱体化させたのだ。
光は光になるまで、自分が何者なのか知らず、感情もなく、ただ漠然と「居場所がない」という感覚だけがあった。そんな光の居場所になってくれたのがよしきだった。光は何よりもよしきを失いたくないのだった。自分とあまりにも違う光に、よしきは「たとえ自分の何かが壊れても、どこまでもこいつに付き合おう」と決める。そして光の「半分」を受け取り、「お前が何者なのか調べよう」と提案した。

『光が死んだ夏』の登場人物・キャラクター

主要人物

辻中佳紀(つじなか よしき)

CV:大野智敬

『光が死んだ夏』の主人公。作中では概ね「よしき」と平仮名で表記される。閉鎖的で一面的な価値観を住民に強いる村に嫌気がさしている。両親の仲が良くないこと、妹が不登校なこと、母が都会出身であることを事あるごとに噂され、陰口を言われる。
光とは幼い頃からの親友で、集落の中で唯一、光が光ではないことを知っている。光の死を受け入れられず、光ではないとわかっていながらも光として生活する「何か」に依存している。
光が側にいることで様々なよくないものを引き寄せるようになり、身の回りで大小さまざまな怪事件が起きる。

光になった何か/ノウヌキ様

CV:根岸耀太朗

光の遺体に入って光として生活する、得体の知れない何か。山中で事故にあって死んでいた光の遺体を発見し、中に入った。光の記憶を受け継いでいるが、人格は光とは全くの別物。
長い間山中にひとりでいたため、人間らしい心の機微がわからない。よしきを愛しているが、「好き」に種類があることは理解していない。よしきから離れること、よしきに嫌われることを何よりも嫌がり、恐れる。
光の家である忌堂(いんどう)家が代々封じてきた、あるいは管理してきた「ノウヌキ様」と呼ばれる存在。村の重役や年寄りはノウヌキ様のことを知っているが、子どもたちはほとんど知らない。ノウヌキ様が山から下りてきたことで力の均衡が崩れ、集落内に悪いもの・よくないものが現れるようになる。

忌堂光(いんどう ひかる)

CV:根岸耀太朗

よしきの幼い頃からの親友で、物語の開始時点では故人。なぜかひとりで山に入った日に事故にあって死亡する。死に際にノウヌキ様に遭遇し、よしきをひとりにしないように願った。
ひょうきんで明るい性格で、よしきにとって何よりも大切な人間だった。

よしきと光のクラスメイト

巻(まき)

shuichi
shuichi
@shuichi

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