ドラゴンヘッド(漫画・映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ドラゴンヘッド』とは、望月峯太郎によるサバイバル・ホラー漫画で、1994年より「週刊ヤングマガジン」にて連載された。1997年に、第21回講談社漫画賞一般部門を受賞している。
単行本としては、全10巻が講談社より発売され、累計発行部数は650万部にものぼる。2003年には、妻夫木聡、SAYAKA主演で映画化された。
修学旅行の帰りの車中で、突然起こった衝撃。運よく死を免れたテルが、同じく生きていたアコと共に、地獄のような世界を通じて、実家のある東京を目指す、サバイバルストーリー。

『ドラゴンヘッド』の概要

『ドラゴンヘッド』とは、望月峯太郎の長編漫画で、連載された当時は、突然世界が悲惨な状況となる非現実的なパニック漫画と捉えられたが、連載開始の翌年に阪神淡路大震災が起こり、現実的な物語として、より一層人気を博した。

望月峰太郎は、過去には「バタ足金魚」「鮫肌男と桃尻女」といった人気作品を描いていて、いずれも人気で映画化された。どちらも青春漫画として多くの支持を得た彼だったが、「ドラゴンヘッド」の前に描いたホラー漫画「座敷女」は、単行本では1巻完結という短い内容ながらも、恐怖の描写が斬新で、新たな一面を垣間見せた。「ドラゴンヘッド」の恐怖感は、「座敷女」で築いた望月峯太郎の恐怖の描写の上手さが流れとしてきており、さらに実際に起こりうるような内容に、読者はどんどんのめり込み、人気が高かった。

「ドラゴンヘッド」は、修学旅行帰りの中学生が、とてつもなく大きな事故に巻き込まれた場面から始まる。主人公のテル(青木照)は、数少ない生存者のアコ(瀬戸憧子)とノブオ(高橋ノブオ)と遭遇する。真っ暗なトンネルの中、遺体だらけの現場で、なんとか生き延びようと、そして衝撃の原因を探ろうと、右往左往する。

トンネルから出たテルが見た外の世界は、想像以上にひどかった。人は見当たらず、テレビからは、緊急放送が流れていた。とにかく、テルとアコは、自分達の住んでいた東京を目指すことにする。

絶望的な状況の下、人々は恐怖心や喪失感から、人間の本能がむき出しとなり、暴徒と化す。あらゆる困難を乗り越え、テルとアコは、手を取り合い、共に前に進もうと、がむしゃらに生きるさまを描いた大作だ。

富士山の噴火が原因の一つとされているが、東京からも大きな爆発が起こったりし、それが核兵器の爆発ともとれる箇所もみられる。ストーリーが、あまりにも壮大で、かつ人気があったため、作者本人が、展開に行き詰ったとも言われている。前半、中盤の盛り上がりに比べて、次第にまとまりがないような後半と、曖昧な完結は、落胆する読者も多かったが、また一方で、完結の曖昧さが作者の狙い、話の趣旨は、大地震の原因ではなく、人間の性、闇を描いた作品だと、支持する人も少なくなかった。

『ドラゴンヘッド』のあらすじ・ストーリー

修学旅行の帰りの新幹線で空の異変に気付く主人公のテル(右)

修学旅行の帰りの新幹線の中、クラスメイトと楽しみながら過ごしていた主人公テル(青木照)は、突然の衝撃で気を失う。目覚めた時は、暗くて誰の声もしない車内。見つけたライターの火で灯した車内は、崩れた座席と、散らばる荷物、そして、クラスメイトや先生たちの無残な息絶えた姿、信じられないほどの悲惨な状況だった。仲間の遺体の山をくぐり抜け進むと、かろうじて息のあるアコ(瀬戸憧子)を見つける。アコを背負い、さらなる生存者を見つけるため移動する途中で、もう一人の生存者であるノブオ(高橋ノブオ)と出会う。とりあえず新幹線のビュッフェに向かい、水や食料を確保したテルとノブオ。テルは、アコの傷の手当をして回復することを祈った。

原因不明の大惨事に巻き込まれた新幹線のあるトンネルは、出口が閉ざされているとわかり、絶望と死の恐怖におびえる三人。次第にノブオの様子が変化しはじめる。体中を奇妙なペインティングで装飾し、自分の考えに従わないテルとアコに敵対心を向けるようになる。ノブオは、この暗闇をもたらした「闇の主」に生贄として捧げると言い、ミニラの遺体を運び、槍で刺し燃やす。その光景を見たアコが、ノブオが狂っていると思い逃げる。ノブオに追いつかれ、殺されそうになるアコを助けるテル。そこでテルとノブオが、殺し合いの喧嘩を始める。その時、大きな余震が起こり、テルはノブオを置き去りにして、アコだけを連れて通気口を通り、外の世界へと脱出する。

トンネルの外は浄水場だった。外に出たはいいが、信じられない光景が広がっていた。建物の中はどこも崩れめちゃくちゃ、人は誰一人見当たらない。テレビでは、慌てるキャスターの悲痛な声が流れ、そのあとは、緊急放送のテロップが表示されるだけとなった。絶望に打ちひしがれるテルとアコは、浄水場から外を見る、するとぼんやり人影を見つける。テルは、急いで人影を追うために外へと出る。人影は、近くの大きな建物に入った。テルは、必死で助けを求めるが、ドアの前で気を失ってしまう。目が覚めると、ガスマスクをしている若者(橋本)がいた。その横に、女性の美川が現れた。気を失ったテルとアコは、そこが病院跡だったこともあり、美川に傷の手当をしてもらっていた。他に2人の仲間が現れた、彼らは、自分たちの周りで生き延びたのは4人だけだと告げる。彼らにもこの惨事の原因はわからず、東京に向かう途中にこの病院跡に寄った者たちだった。噂では、東京は暗黒の世界で都庁だけ明かりが灯っているという。その噂を確かめに東京へと向かっているのだ。

彼ら4人は、床にまじないのような絵を描き、花火をあげて、まるで雨乞いをするかのように踊ったりしていた。美川は、恐怖心からこういった宗教のような儀式をするようになったとテルとアコに説明する。テルとアコは、彼らとの一緒の行動を避け、二人だけで東京を目指すことにする。ガスマスクと洋服と少しの食糧を分けてもらい、彼らと別れた。

テルとアコが歩みを進めると、頭上にヘリが飛んでいるのを見つける。自衛隊らしきヘリの集団は、テルとアコに気づくことなく通り過ぎて行った。テルとアコはヘリを諦め、廃墟と化した町に着いた。

自衛隊の集団から抜け出した1台のヘリがあった。傲慢で自分勝手な性格の仁村は、自衛隊から抜けることを提案し、自由奔放にしていた。CDを聞いて雑誌を読んで、女を連れてこいとヘリの操縦士の岩田に命令する。一緒に隊を抜けた仲間に山崎と大池がいた。燃料や食料さがしで、廃墟の町を歩いていた山崎は、女のアコを見つけて、自衛隊員だと言い近づく。そして、テルは、仁村、大池、岩田に出会い、助けを求める。助けを断る仁村は、女がいれば助けるとテルに提案するが、テルはアコの事を言わなかった。その時、山崎はアコを襲っていた、アコは大声をあげた。そのアコの声を聞いたテルは、すぐにアコを探しに駆け出し、また同じく仁村と大池も、女を手に入れるため、声がしたほうへと動き出す。

アコを探すテルの姿を見つけた仁村は、テルに向かって崩れそうな円柱を蹴って、テルを負傷させる。いったんアコに逃げられた山崎は、再度アコを見つけるが、大きな火災を見つけて慌てて逃げようとする。その時にアコが逆に山崎を襲って拳銃を奪い、テルを一緒に探せと命令する。アコを探していた大池は、傷を負ったテルに暗闇で遭遇し、テルの持っていた火炎瓶を奪うことに失敗して、全身に火が燃え移ってしまった。その場を逃げたテルは、再度仁村と出会う。

テルを探すと嘘をつきヘリの場所に戻ってきた山崎とアコは、大火災の火が燃え移った竜巻を見る。炎の竜巻に驚き立ち尽くした山崎は、一瞬のうちに火だるまとなってしまう。ヘリで飛び立った岩田とアコだったが、アコがテルを探さないと殺すと拳銃で脅して、岩田は仕方なく、炎の町の中、テルを探す。運よくテルを見つけたヘリは、再度陸地に近づき、テルと仁村を乗せる。

濃い灰の中を飛ぶヘリは、大きな活断層を見つけて、巨大地震が起こったことを確信する。その先に海を見つけ、沿岸の崖に降り立つが、地盤がもろく、すぐに飛び立たねばならなかった。燃料が切れそうな状態で、やっと見つけた陸地に降りる。そこは、水浸しで、地面は緩かった。そこに一人で暮らす中年女性(おばさん)に出会う。おばさんの家は、もともと伊豆半島の真ん中の山の町で、津波によって伊豆半島は半分が水没してしまったとわかる。おばさんは、国語の教師をしていたが、実家が病院だったので医療に関しての知識があった。高熱で寝たままのテルは、頭の傷はたいしたことはないが、傷からの感染で破傷風を起こしていて、助かるには、ワクチンを手に入れるしかないと、おばさんは言った。ヘリは燃料がないので、アコがワクチンを、仁村が燃料を手に入れるために、二人で山を越えた病院に行くことを決める。おばさんは、街の人間は暴徒と化しているので、くれぐれも気をつけるようにと二人に告げた。

伊豆の山に入ると、いくつかの死体を見つけるアコと仁村。死体はいずれも災害が原因ではなく、刃物によって死んだものだった。進んでいくと人間の足跡を見つけ、あたりに人がいると確信する。すると、一人の帽子をかぶった男が現れた。問いかけに答えず、自分の手に火をつけたりする男を仁村は蹴った。男は倒れて帽子がとれる、すると頭に手術跡のような傷がついていた。彼は、自分の頭を指して「りゅうず」と呟いた。
近くにもう一人男がいて、彼らは友達同士で東京の災害から逃げてきたが、街の暴徒らに殺されそうになり山に逃げてきたのだった。彼らを追ってきた暴徒は、頭に傷がある男のことを傷頭(きずあたま)と呼んでいた。暴徒らは、山の中傷頭らを血眼になって探していた。暴徒らは、仁村とアコを見つけると、殺そうと意気込んだ。警官の服を着た男に撃たれた仁村は、自分も持っている銃を打ちまくった。

傷頭と呼ばれる男は、菊地と言う名で、もともとものすごい臆病だったらしい。菊地とその友達は親友だから一緒に逃げてきたが、菊地は以前の菊地とは変わってしまったと、菊地の友達は言った。その時、彼らに追いついた警官の男が、拳銃で菊地の友達を殺す。菊地は、親友が死んだというのに、微動だにせず、一切感情がでることはなかった。

急に眠ってしまったアコは、目を覚ますとそこは町の中だった。一緒にいたのは、菊地だけだ。2人で歩いていると市民ホールを見つけた、ホールのドアを開けると、そこには大量の焼死体があった。市民ホールを後にして、引き続き町を歩いていると仁村と出会った。その後ろには、町の人間が多数揃っていた。どうやら町の人間たちは、全員で心中しようとしているらしい。仁村とアコと菊地は3人でその場を逃げるが、彼らはすぐには追ってはこなかった。町の周りを見ると、逃げ出せないようにがれきで町の出口が閉ざされていた。町の人々は全員で死のうと決断したにも関わらず、死にたくない数名が町を逃げ山に入っていたのだった。山にいた暴徒たちは、仁村とアコの荷物を奪っていた。その中に無線機があり、岩田に連絡をして、ヘリが存在することを知られてしまう。

仁村とアコと菊地の3人は、屋上からまるで血のように赤いペンキが塗られた市役所のビルにたどり着く。中に入ると、各階に燃料が大量に置かれてあった。屋上に出たアコは、病院の場所を見つける。下の階からは、町の人間達が暴徒と化し3人を捕まえようと追ってきていた。アコと仁村と菊地は、暴徒らを避け3階まで降りて窓から飛び降りて逃れることに成功した。

たびたび町の暴徒らに襲われながらも、何とか病院にたどり着いた3人。アコはケガを負った仁村を手当してから、テルの薬を手に入れるため病院内を歩き回った。菊地を見失ったアコは、ピアノの音が聞こえるほうに行ってみる。そこは小児病棟で、ピアノをひいているのは菊地だった。菊地は笑っていて、アコに話し始める。自分は脳の偏桃体と海馬がほとんどなく感情がないことをつぶやく。そしてこの世がこんなことになった時、ホクサイの絵、あれとそっくりなものを東京でみんなで見たという。大地に宿るエネルギーを龍にたとえ、りゅうみゃくの源は東京にあり、流れは国で一番高いところからと途切れ途切れに呟いた。アコは菊地の話していることが理解できなかった。

その時、暴徒らが病院にやってきた。アコは逃げ道を考えるが、病院の案内図を薬の部屋に忘れてきたことに気づく。菊地にその場で待っていろと告げ、案内図をとりに薬の部屋に向かう。しかし菊地は、暴徒に見つかってしまい棒でさんざん殴られるが、何度も起き上がる。アコもまた、暴徒の一人に包丁で腕を傷つけられる。アコは、手元にあった薬品を暴徒に投げつけるが、暴徒はさらにアコを追い詰める。その時、仁村がやってきて、銃で暴徒を撃ち殺した。銃声の音で、病院周辺にいた暴徒らが押し寄せる。仁村とアコは、必死で逃げる。

ヘリを修理し終わった岩田は、ヘリで町へと向かう。山にいた暴徒らがヘリの姿を発見し、仁村の無線を使い岩田に仁村とアコが一緒にいるから、真下に降りてこいと命令する。山の暴徒らの中には、仁村とアコはいなかったが、岩田はヘリを降下させた。すると、山の暴徒らが一斉にヘリに乗り込んで来ようとする。暴徒らを振り払いながら、岩田はヘリを上昇させるが、一人乗り込んできてしまった。岩田は、ヘリを下ろせと命令する暴徒に耳を撃たれてしまう。岩田は、やむなく地上にヘリを下ろした。地上には、山の暴徒らが大勢集まってきたが、全員がヘリに乗れないため、仲間同士で言い争いがはじまった。そのすきを見て、岩田は持っていたロケット砲を暴徒らに向けて撃ち、すぐにヘリで逃げることに成功した。

外は、濃い塵の黒雲が迫ってきていた。仁村とアコは、病院内で暴徒らと戦っていた。暴徒らから逃げ出口を探す2人だったが、非常口が見つからないので、二手に分かれて出口を探すことにした。一人になったアコは、廊下で傷だらけの菊地に遭遇する。菊地は、恐怖も痛みも感じないとアコに言う。その時、おいついた暴徒に菊地は銃で撃たれてしまう。バイクでアコを助けに来た仁村は、アコをバイクに乗せて外に出る。黒雲の中、ヘリの音が聞こえた。仁村とアコは、岩田に気づいてもらうため、発煙筒をつけてバイクを走らせる。それに気づいた岩田に、仁村は、市役所のビルの屋上に行くように指示する。屋上で仁村とアコは、岩田のヘリに乗ることができた。追ってきた暴徒がビルの中の燃料に火をつけ、市役所のビルはどんどん燃え始める。間一髪で離陸したヘリから病院も燃えているのが見えた。病院の屋上には、火だるまになった菊地がヘリを見つめているようにアコには見えた。

アコが手に入れたワクチンのおかげで、テルは一命をとりとめた。元気になったテルはアコと二人っきりで話す。そして、テルは東京の自宅の鍵をアコに渡し、絶対に一緒に東京に帰ろうと誓う。菊地の呟いていた事が気になるアコは、書店に行き北斎の書物をあさる。そして、アコは、テルに北斎の富士山の絵を見せて、菊地が言っていた事を話す。菊地は、この異変は北斎の絵だと言い、そして大地のエネルギーはリュウミャクで、そのリュウミャクが国の一番高いところからどうこうしたと、言っていたと、アコは説明した。テルとアコは、この大災害は富士山の噴火が起こったのかもしれないと、この時はじめて気づいた。

濃く厚い黒雲がどんどん迫っていたが、岩田はこの黒雲の中ヘリを出発させて東京へと向かうと決める。仁村とテルとアコもそれに従うことにする。おばさんは、生まれた町を離れたくはないと、一人残ることを選ぶ。黒雲の中、ヘリは東へと向かうが、突然大きな衝動が来てヘリは降下する。すると、黒雲から抜けた地面は、一面溶岩に覆われていた。しばらく行くと、溶岩に埋もれているたくさんの自衛隊のヘリを発見する。場所からして、富士の駐屯地のあたりと岩田と仁村は推測する。そして四人は、富士山の噴火が起きたことを確信する。

ヘリを進ませると、大きな切り立った崖を見つける。崖の先に、真っ暗な巨大な穴があった、まるで噴火口のようだった。四人は、恐る恐るその巨大な穴にヘリを降下させていった。巨大な穴の中は、真っ暗な闇のみだった。四人は恐怖を感じ上昇して再度黒雲の中ヘリを飛ばした。
黒雲から抜けたところは、辺り一面が雪で覆われたような白い世界だった。しかし、よく見るとそれは雪ではなく灰だった。灰が深く積もる町のかなで、大きなショッピングモールのビルを見つけ、その屋上にヘリを着陸させる。ショッピングモールの中は荒らされてはいたが、食料や衣類などを手に入れることができた。様子がおかしいアコにテルは病気なのかと聞くと、アコは嫌なことが続くと眠気におそわれると話す。そしてアコは、両親とも一年半前に死んでしまったことを打ち明ける。その時、大きな地震が起こる。ビルは、今にも崩れそうに壊れ始める。四人は屋上へと向かった。屋上から、東京の方角に大きな火柱がたっているのが見えた。火柱の後で大きな光が見えた。四人は危険を察知しすぐにヘリに乗り込み離陸した。すると光の後で噴火が起き、地震によってショッピングモールのビルは傾き一部が崩れた。ショッピングモールのそばの陸地にヘリを着陸させたが、遠くで竜巻が見え大雨が降ってきた。塵の雨はまるで泥水でヘリを離陸させることができず、四人はショッピングモールで雨をしのいだ。テルとアコは、東京でお互いの家に帰った後で必ず会おうと約束する。

雨はひどくなり、地面は川のようになっていた。岩田はヘリを離陸させたがヘリは壊れていた。とにかく陸地は水浸しだったので屋上へと向かい、そこでヘリに乗ろうとした時、屋上の一部が崩れてテルはがれきと共に落ちてしまう。アコは必死でテルを助けたいと岩田に懇願するが、竜巻も近づいていて壊れかけたヘリを着陸させるのは不可能。ヘリは無残にもテルを残したまま飛び立ってしまう。
絶望を感じながらもテルは、ビルのエレベーターに乗り込むがビルは崩れ落ちる。テルはエレベーターから放り出されて、がれきだらけの濁流の中何とか生き延びていた。かなりの距離を流されたテルは、陸地にたどりつくがそこはすべてのものがめちゃくちゃに崩れている状況だった。陸地を進むとヘリの残骸を見つける。テルは、アコを探すがいなかった。そしてヘリの残骸のそばには、岩田の墓らしき土のふくらみがあり、テルは少し土をほると岩田の死骸が確認できた。ヘリの中に入ると飲み物が置かれていた。アコが置いてくれたと思ったテルは、アコと仁村は生きていて東京に向かっていると信じた。

火柱を目指して歩くテル。途中で包帯だらけの人物に会う。彼は東京から逃げてきたというが、本当は東京は天国でまた戻りたいんだと言う。テルは、意味がわからなかった。だんだんと高いビルが目立つようになってきた。そして、見たことのある場所にもたどり着いた。しかし、町はほぼ崩壊していて海が近くまで来ていた、津波にやられたのだ。そしてボロボロの都庁や、曲がった東京タワーを目にする、やっと東京にたどり着いたテルだった。

東京についたテルは疲れた体を休めた後、とりあえず自宅を目指そうと歩き出す。すると地下鉄の駅の奥から音が聞こえてきた。テルは、地下鉄の駅を降りていく、すると人の声が聞こえる気がした。声の聞こえる方向を目指し、地下鉄の線路をどんどん進むテル。するとところどころにラジオが置かれていて、そのラジオからは人の声が流れていた。ラジオに導かれるかのように先に進んでいくテル、そして行き止まりのがれきの隙間の奥から音が聞こえる。のぞいてみると、そこには溶岩流が流れていた。東京のど真ん中に火山帯があるとは、いったいどういうことなのか、テルは動揺した。テルはどんどん地下の道に進んでいった、すると壁一面に奇妙な落書きがしてある場所へとたどり着く。

さらに進むテル。そして明かりが灯る場所へと到着する。そこは今まで来た道とは違い建物はきれいで崩れている箇所もほとんどなかった。関係者以外立ち入り禁止の張り紙が貼られている。その先のトンネルを抜けたところに扉を見つける、そしてテルはドアを開ける。ドアの先は広い空間で、段ボールがたくさん置かれていた。段ボール箱には、災害救援用と書かれていて、中には食料や飲料水、薬などが入っていた。テルは思わず、その箱の中の水を飲み、食料を食べた。すると遠くの箱の陰に人がいるのを発見する。テルは、人のほうへ近づいていった。その人間は、頭に手術跡のような傷があった。アコが「傷頭」と呼んでいた、伊豆の町であった人物の仲間なのだろうかとテルは思った。「傷頭」は、ほかにも二人いた。「傷頭」と話しはじめたテルは、急にめまいがしてきた。段ボールの中に入っていた飲食類はすべて「試」のマークがついていた。「傷頭」はここにある食べ物を食べると、平安が得られると言った。

テルは、目を覚ますと広い部屋にいた。目の前には、眼鏡をかけた男がソファに座っている。彼の声は、ラジオから聞こえる声と同じだった。彼は、テルに「ようこそ、地下の王国へ」と話しかけた。テルのいる部屋の扉のところには大勢の人がおり、みな包帯だらけだった。彼らは、自分で自分を傷つけたという。包帯を巻いた人間たちは、みな段ボール箱の食糧を食べ、”恐怖心”が感じなくなってしまっていた。すると恐怖を味わいたいがために自分を傷つける行為をするというのだ。恐怖に襲われた人々が、この地下へと平安を求めにやってくる、そういう人々に恐怖心を消す食料を与える、それが地下の王国だった。眼鏡の男は、テルに、ここにいるのも地上へ戻るのも好きにしていいと、言った。

地下の王国には、もっとたくさんの人々がいた。包帯だらけの者もいれば、ノブオのように体にペインティングをしている者もいた。頭に手術跡があり、食糧倉庫でテルに話しかけた男は、脳の手術をした自分たちは「リュウズ」と呼ばれていると話した。テルは、アコに会いたかった。おばさんに言われたんだ、「アコを助けてあげて」と。テルは、アコに会うために地下の王国から出ることを決意する。地上に出て自宅を目指した。そして、自宅に着いたテル。テルの自宅は、すべて崩れてめちゃくちゃだった。家族は誰もいなかった。

自宅の壁に、「おかえり テルくん アコ」と書かれていた。その下には、水とノートが置かれていた。ノートには、テルと別れた後すぐ、ヘリは墜落し、岩田が死んでしまったこと、アコの家は潰れておばさんとおじさんも死んでいたこと、仁村と行動していること、そして、学校で待っていると書かれていた。テルは学校へ向かった。
学校で、アコに再会したテル。仁村は、テルが生きていることに驚いた、そしてテルに銃口を向け、アコをよこせと叫んだ。仁村はこんな世界に自暴自棄になっていたが、アコといる時だけは自分がまともだと思えたと言い、アコが必要だとテルに銃口を向けたまま話した。テルは、死ぬことへの恐怖が感じなくなっていた、死ぬことに対してに鈍感になっていたと話した。死に鈍感というのは、生にも鈍感になっていることだ、だが、それは、間違いだ、生きている意味はある、生き延びてきた価値はあるんだと言った。そのテルの言葉を否定するかのように、仁村はテルに、テルの家族はみんな死んだと告げる。それでも生きている価値があるのかよとテルを絶望させる。テルの家族が死んだことを黙っていたアコは仁村にとびかかり、その拍子に銃は仁村の手から離れテルが奪った。テルは、銃口を空に向け、弾をすべて空へと撃ち放った。

傍らのラジオから、流れてきたのは、諸外国間で交わされた極秘文書の内容だった。異変の起きた日本について、原因も定かでなく現状を把握するものはいない、政府関係者との連絡も途絶えてしまっている。外国は、以前から日本に「核」の所有を進めていた。従って日本には複数の「核」が存在する。この異常事態の中、「核」の回収へと向かったが、いくつかの「核」の所在が不明だ。東京には、通常の難民とは違う、何か目的をもった集団が出来ていて、彼らが「核」を所有しているかもしれない。長い極秘文書の内容は、テルにはいくつか気づかされる点があった。難民とは違う集団とは、地下で出会った人々がすぐに思い浮かんだ。テルは、地下の落書きに核のマークがあったこと、地下の奥の部屋の空っぽになった缶がたくさんあったことを思い出した。あれは、放射性物質だったんだとテルは思った。「核」を取り返すために、集団に対していかなる対応もとらざる得ないといった内容も流れていたことから、テルは、地下の集団を助けなければならないと、地下に向かおうとする。動き出したテルに、アコも続いた。アコは、その場で仁村に別れを告げる。大きな地震はたびたび起こり、そのたびに東京のビルは崩壊する。頭上から崩れてくるビルのがれきを避けながら、テルとアコは進むと、黒雲の切れ間から、富士山そっくりの山を見る。東京に富士山と同じ山が出来ていて、噴火活動が起こっていた。地下の傷頭は、噴火の火が龍に見えた。テルは思った、闇の中に悪魔を見れば、世界は悪い世界へと変わってしまう、未来を想像するんだ、新しい世界がはじまる未来を。黒雲に包まれた真っ暗なシーンで、「ドラゴンヘッド」は幕を閉じる。

『ドラゴンヘッド』の登場人物・キャラクター

テル(青木照)

主人公。ごく普通の中学生である。両親と姉と東京に住んでいる。修学旅行の帰りに被害にあい、数少ない生存者の一人となる。アコを心の支えに、家族のいる東京を目指して、危険な目にあいながらも、とにかく前に進もうとする。同じく生存者だったノブオと対立し、トンネル内に残してきたことが、トラウマとなり、たびたびノブオの悪夢にうなされる。

アコ(瀬戸憧子)

テルと同じ学校の生徒。テルと共に行動をする。数少ない女性の登場人物の一人だが、テルを助けるためなら、どんな危険にも立ち向かう、男性にも劣らない行動力を持つ女性。恐怖や不安がつのると、眠気に襲われる持病がある。

ノブオ(高橋ノブオ)

テルとアコ同様、学校内の生存者の一人。クラスメイトの生存者1人を見殺しにしたことに悩まされる。トンネル内では、時間がたつにつれ、異様な行動を起こすようになってくる。体中に奇妙なペインティングをし、宗教染みた行動まで起こす。テルとアコとの、思想の違いから仲間割れしはじめる。テルと衝突を起こした時に、大きな余震が起こり、崩れ始めたトンネル内で一人残される形となった。

ミニラ

テルたちの学校の生活指導員。生徒たちに口うるさい先生で、テルも目をつけられていた。修学旅行帰りの大惨事により死亡。遺体は、ノブオにより動かされたり、槍で刺されたりした。

橋本(はしもと)

テルとアコが、トンネルを抜けてはじめて出会った外の人。4人グループのリーダー的存在で、宗教じみた行動をして平静を保っている。

美川(よしかわ)

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