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kouのレビュー・評価・感想

来る
3

何かをはき違えたホラー映画

来るとは中島哲也監督作成、出演は岡田准一, 黒木華, 小松菜奈など豪華キャストの日本のホラー映画です。
以下はあらすじになりますが、結婚した男性が一人娘に恵まれるところから物語は始まります。
完璧な夫、イクメンを目指す男性は、自分のことや子供のことを細かにブログやSNSにアップしたりしていますが、実際には、子育てや家事は妻に任せきりという典型的な自称イクメンで、妻の思いは無視されておりやがて家庭は崩壊していきます。
それでも男性は、ある不安を抱えていて家族を守りたいという思いを持ち続けていました。
それは幼馴染だった女の子から言われた“それ”という、何かしらの存在が自分を連れ去り来るという話でした。
そして、やがて“それ”は男性も連れ去りにやってくると言うのでした。
ここまでがあらすじですが、非常にわかりにくいです。
まず、「それ」が来ると言われる原因などもあまり言及されておらず、唐突に「それ」におびえる結婚生活が始まったような描写からしてよくわかりません。また、妻である女性が急変していく描写もあるのですが、リアルすぎる人間心理を描きすぎた故に、「それ」に影響を受けた結果なのかどうかがわかりにくいです。
ただ、霊媒師の人がいうセリフは名言ですので、それを見るために見るのもありかなと思います。

フルーツバスケット / フルバ / Fruits Basket
8

本当の優しさとは

花とゆめ(白泉社)で連載された「フルーツバスケット」、作者は高屋奈月です。2001年にアニメ化され、2019年にリメイクされました。主人公の本田透は平凡な普通の女子高生ですが、不慮の事故で母親を突然に亡くしてしまい、訳あって一時テントで一人暮らしをすることに。しかし、そのテントを張った所が草摩家が所有する土地だと透は知る由もありませんでした。ストーリーは透が草摩紫呉と、同級生の草摩由希の家を近所に見つけるところから始まります。土砂崩れでテントを失ってしまい、しかも風邪で倒れてしまった透は、それがきっかけで草摩家に居候することになります。そこで透は、草摩一族の最大の秘密を知ってしまいます。その秘密とは草摩家は代々十二支の物の怪が生まれながらに憑いており、その12人(猫を合わせると13人)は異性に抱きつかれたり、体が弱ると憑かれた獣に変身してしまうという体質でした。普通にはないストーリー構成は読者や視聴者の関心を引きます。草摩家はその秘密について呪われている、決められた宿命と言いますが、ストーリー自体はそこまで暗い印象はなく、まるでラブコメディーのようにストーリー展開をしていきます。キャラクター(登場人物)、一人一人の個性や性格がはっきりしていて、次に透が出会うのは誰かと思わず期待してしまいます。また透のやさしさや温かさが、出会う草摩家の人々をさりげない言葉や行動で救っていくところも魅力的です。本当のやさしさは人を信じられる勇気や信念や情熱なのではないだろうか、また人のために涙し、行動できる強さこそ本当のやさしさなのではないだろうかと考えさせられる作品です。

魔王の始め方
7

人の身でありながら魔王となる男の人生

小説家になろうR18部門から連載が始まり、ソーシャルゲーム化もされた同タイトルのコミカライズ作品です。
ゲームはすでにサービスを終了しているためプレイヤーとしてその物語を追うことは出来ませんが、ノベルとコミックスという形で楽しめることは嬉しいです。

なんだか和やかさを感じるタイトルで作中にもコミカルなシーンはいくらか登場するものの、本作は基本的にダークファンタジーで、主人公のオウルは魔王と呼ばれるにふさわしい力と悪事を行使していきます。

オウルは戦略や魔法技術だけではなく性に関する技術も飛び抜けているようで、元々敵であった女性達を性的快楽を用いた洗脳などによって従順な配下とします。一方で同性愛の嗜好を持たないために敵であった男性は即座に殺害するか、女性を洗脳するために利用、あるいは絶望に落とした上で強力な魔物に変えて配下に加えます。

ただの暴力的な支配だけではなく、支配した村は税を収める代わりに豊作の呪いをかけたり脅威からの保護を行うなど「逆らえば地獄を味わい、従えば得をする」という状況を作り、見事に人心を掌握していきます。

現在の知識や技術を習得するまでにオウルはすでに80歳を超える老年となっていますが、召喚し契約を結んだサキュバスの能力によって20歳前後の若さを取り戻しています。

いつしかオウルとサキュバスの間には契約者以上の絆が生まれ、その不思議な関係の正体ものちに語られます。

タイトルの印象から軽い気持ちで触れ、その物語の作り込みとのギャップに驚かされました。

ファントム・スレッド / Phantom Thread
5

愛という名の猛毒 ポール・トーマス・アンダーソン監督「ファントム・スレッド」

服作りに没頭する神経質で完全主義のデザイナー、レイノルズ。彼は毎日決められた通りのルーチンを繰り返す生活を頑なに守っており、集中を乱すものは恋人であっても容赦無く追放する。その上面倒なことは店の経営から人付き合い、果ては別れ話まで姉のシリルに任せきりという自己中心的な人物。
そんな彼がひょんなことから出会ったのがアルマ。レイノルズにとって完璧なプロポーションを持つが自由奔放で、レイノルズとは対照的な人物である。
ある日、レイノルズが丹精込めたドレスを着た客が結婚式で酔いつぶれて寝てしまう。アルマはレイノルズが服にかける情熱を知っているので、「彼女にあなたの服を着る資格はない」と涙ながらに憤慨する。そんなアルマの姿を見てレイノルズは心を許すが、神経質で自己中心的な性格は変わらず、アルマもレイノルズの支配を甘んじて受けるつもりはない。衝突を繰り返す関係に不満を募らせ、アルマはある日紅茶に毒キノコを混入する……。

本作は1950年代のイギリスファッション業界を舞台にしているが、主題はファッションではなく、自己中心的な愛情が人を支配していく過程にある。煌びやかなようではあるが、実際にはサスペンスホラーのような作品だ。見所は、レイノルズとアルマの力関係が徐々に入れ替わっていき、終盤では完全に逆転するところ。その鍵となるシーンはいずれもレイノルズが疲労や毒の影響で無力に横たわっている場面だ。
クライマックスであるオムレツを食べるシーンではアルマを思い通りに動かせる「マネキン」程度にしか見ていなかったレイノルズを、毒を盛って強制的にアルマに頼らざるを得ない存在にしようとする狂気が支配し、レイノルズがそれを受け入れるという衝撃的な展開を描いている。
レイノルズが嫌いと言っていたバターを大量に入れた毒キノコ入りオムレツ。料理のシーンから、二人の目線のやり取りの捉え方、咀嚼音、何かを悟ったような微笑みまで、圧倒的な引力を持って観客を巻き込んでいく。
特に、頑なに自分の殻にこもり人を受け入れることを拒んでいたレイノルズの微笑みは、ぞっとするほど明るく、優しく、吹っ切れている。
執着してやまないドレスをきっかけに、レイノルズはアルマに単なるモデル以上の愛着を持つようになる。同じように「譲れない生きがい」を受け入れることが、彼らにとっての愛だということなのだろうか。自分を犠牲にしてもいいとすら思えるような愛、羨ましいような、要らないような。