グランド・ブダペスト・ホテル / The Grand Budapest Hotel

グランド・ブダペスト・ホテル / The Grand Budapest Hotel

『グランド・ブダペスト・ホテル』は、ウェス・アンダーソン監督、レイフ・ファインズ主演で製作された。ズブロフカ共和国にあるグランド・ブダペスト・ホテルが物語の舞台である。コンシェルジのグスタヴと部下のムスタファを主人公に、常連客をめぐる殺人事件と遺産争いに巻き込まれた二人が、ホテルの威信のためにヨーロッパ中を駆け巡り事件解明に奔走する。本作は1930年代、1960年代、1985年、現在と4つの時間軸で展開されていく。

グランド・ブダペスト・ホテル / The Grand Budapest Hotelのレビュー・評価・感想

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グランド・ブダペスト・ホテル / The Grand Budapest Hotel
10

遊び心たっぷりで、スピーディな展開の奇妙奇天烈なお話

この映画は、ハリウッドと一線を画し、独特な映像世界を築く、奇才ウェス・アンダーソン監督が、目を見張らんばかりの造形美(特に左右対称の造形美)を存分に生かし、遊び心溢れた、心ときめく大人の童話に仕上げてくれましたね。

ナチズムや共産主義のパワーバランスに右往左往する、不安定な東欧の歴史に弄ばれながら、コンシェルジェとベル・ボーイの波乱万丈の物語が展開し、不思議な運命の巡り会わせの結果、気が付けばゼロ氏は雇われベルボーイからホテルのオーナーになって、めでたし、めでたしという摩訶不思議なお話でしたね。

とにかく、遊び心たっぷりで、スピーディな展開の奇妙奇天烈なお話に魅了された1時間40分でした。

グランド・ブダペスト・ホテル / The Grand Budapest Hotel
10

センス溢れる衣装と美術の世界。ウェス・アンダーソンの最高傑作!

ウェス・アンダーソン制作、監督、脚本作品。第87回アカデミー賞最多4部門受賞。

高級ホテル「グランド・ブタペスト・ホテル」のコンシェルジュ、グスタフ・H(レイフ・ファインズ)はホテルの常連マダムD(ティルダ・スウィントン)殺害事件の罪を着せられてしまう。刑務所を脱出したグスタフは、見習いコンシェルジュのセルジュ・X(マシュー・アマルリック)とともに事件の真相を探るのだが…

『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』、『ダージリン急行』の名匠ウェス・アンダーソンの作品とあって、著名な俳優が多く出演しているのが見どころです。主演のレイフ・ファインズから、ジュード・ロウ、エドワード・ノートン、ハ―ヴェイ・カイテル、シアーシャ・ローナン、エイドリアン・ブロディ、更に監督の作品に常連であるビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソンも、顔を出しています。映画批評サイトのロッテントマトでは、92%の高評価を獲得しています。
本作は、監督の持ち味であるミニチュアや色彩豊かな衣装、美術(アカデミー賞衣装賞、美術賞受賞)によって絵本のような温かみのある作風となっています。その画面の美しさだけでも、一見の価値ありです。ぜひご覧ください。

グランド・ブダペスト・ホテル / The Grand Budapest Hotel
10

グランド・ブダペスト・ホテル

この映画のタイトルやイメージ画像を見て何を思うかといえば、まず見た目のきれいさだ。この映画は100分間ずっときれいだ。まるで甘ったるいお菓子で出来ているようだ。だが、その中身はどこかブラックで不穏な空気が漂い、キャラクターのセリフや動作、描写にフッと笑ってしまうシニカルな滑稽さがある。
たとえば、ホテルを取り仕切るこの映画の主役であるムッシュ・グスタヴは、老婦人殺害の罪をふっかけられ監獄に放り込まれるのだが、同房の坊主で上半身裸の囚人(演じているのはハーヴェイ・カイテル)がおもしろい。彼は脱獄計画のため刑務所の見事な見取り図を描く。しかし、彼の体に彫られているタトゥーはどれも陳腐でまるで子供の落書きみたいだ。そういった描写になんだかフッと笑ってしまう。
また、ムッシュ・グスタヴ役のレイフ・ファインズは、これまでのシリアスな役柄と異なりダンディなんだけどどこか抜けたようなキャラクターを見事に演じていて、まさにはまり役だと思う(彼が崖から落ちかけるシーンがクソおもしろいのだけど、それはぜひ自分で見て確認してほしい)。
この映画の魅力の一つは息をつかせる間もないスピーディーなめくるめく展開なのだが、エンディングはそれまでの話が嘘のように(実際嘘だけど)突然訪れスパッと終わる。でも「人生そんなもんか」と納得できてしまう。好きな映画です。