火ノ丸相撲

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火ノ丸相撲
10

熱く、運命に負けない愚直な少年の物語

大相撲の頂点・横綱を目指す少年、潮 火ノ丸の物語。彼はとても小柄で大相撲の身長制限に届かず。当然勝利も得られなかった。
中学相撲では地獄を味わう程、相撲の神様から見放された少年だった。しかし、諦めずに3年先に実を結ぶ稽古と己を磨き、愚直に努力して高校相撲の舞台にて、ようやく恵まれた環境と巡り会うことができた。

信頼出来る仲間との出会いや立ち塞がる強敵達、圧倒的な敗北を味わって、一度は心が折れかけても支えてくれる者達と、何より努力を重ねて戦い抜くその在り方。
彼の相撲は良い。小さい奴がでかい奴を投げ飛ばすのだから心躍らないわけがない。
何より味があるのは、彼だけじゃない。彼を取り巻く環境が全て尊い。

高校相撲の頂点、大横綱の息子、規格外の長身の力士。小さな彼へ立ち塞がる、あまりにも大きな強敵達。
それでも、支えてくれる仲間がいる。努力を許してくれる者達がいる。
歯を食いしばって死に物狂いで努力し続けて、どうにか乗り越えるその様は、運命だとかを投げ飛ばす力強い熱量を宿している。

仲間達の勝利、敗北。現実味が強くご都合主義に欠けるこの物語は、一勝の重みと尊さを実感させてくれる。
最後に漫画内で出てきたフレーズの中で最も好きなものを。

相撲。土俵上で廻しのみをつけて戦う、日本古来の武道であり。数少ない無差別級の格闘技。
故に、「大きく」「重く」ある者が絶対優位。高校相撲において。体重100キロを超える巨漢がひしめく中。横綱を目指さんとする彼の体はあまりに小さく、逞しく——気高い。