けいおん! / K-ON! / けいおん!! / K-ON!!

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『けいおん!』とは、かきふらいによる日本の4コマ漫画、およびそれを原作とするアニメなどのメディアミックス作品である。
『まんがタイムきらら』にて2007年から2010年まで連載。単行本は『けいおん!』全4巻、大学編の単行本『けいおん! college』と高校編の単行本『けいおん! highschool』各1巻が発売され、シリーズ累計発行部数は335万部を突破している。
舞台は、部員がおらず廃部寸前の桜が丘女子高等学校軽音部。音楽経験の全く無かった高校生の平沢唯が、個性的な仲間達と共にゼロから部活動を行っていく学園漫画。本格的なバンド活動よりもメンバーたちの緩やかな日常が描写されており、音楽に詳しくない読者や視聴者にもヒットすることになった。
京都アニメーションでアニメ化され、劇中でキャラクター達が結成するバンド「放課後ティータイム」の楽曲のクオリティの高さも相まって社会現象となる。作中の舞台のモデルとなった学校を訪れるファンや、登場した楽器が品薄になったことでも話題を呼んだ。

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けいおん! / K-ON! / けいおん!! / K-ON!!
10

それは青春の忘れ物

誰もが通り過ぎてきた学生時代。
未来がその先にあることがわかっていながらも、‘今’が永遠では無い事を知りながらもそれはどこか朧気で、その毎日がいつまでも続くとでも言いたげに、時に怠惰に時間を掛け流していた。
だからこそ、ふとした瞬間、ふとした時に、過去に大きな忘れ物をしてきてしまった事に気づく瞬間があるかもしれない。
そして朧気だった視界に、はっきりとした世の中の輪郭を形作られて行く。
‘今’が永遠ではなくて、未来がその先にあって、そして過去には決して戻れないという実感と共に。

‘けいおん!’という作品にドラマ性は無くて、また登場人物に絶世の美少女や超能力を持つような者もいない。
そして日常を壊すような事件が起こる訳でもない。
ただその青春時代が穏やかに進んで、囁かに流れるだけ。
だから登場人物達も気付かない。
‘その時間が有限である’という事に。
この物語で唯一彼女達の心理を大きく狼狽えさせるのが、‘卒業’と言うまさに‘未来’という朧気だった存在への入口。
そして視聴者に同時に訪れる‘物語の最終回’という出口。

過去に大きな忘れ物をしてきてしまった事に気づく瞬間。

この作品を見ていると、それが何度も何度も訪れる。
青春時代というかけがえの無い時間を贅沢に使う彼女達を眺めながら、過去の自分と重ねながら。

だけど物語は大団円で終わる。
過去がかけがえの無い時間なら、それは今も、未来も同様だからだと思う。

‘けいおん!’という作品はとても平坦で退屈で、真っ白な物語。
だからこそ、そこにそれを見ているそれぞれの心が浮き上がってくるのかもしれない。