ペンギン・ハイウェイ / Penguin Highway

ペンギン・ハイウェイ / Penguin Highway

『ペンギン・ハイウェイ』は、2010年に角川書店から刊行された森見登美彦のSF小説。第31回日本SF大賞受賞。
研究熱心で気になったことはとことん解明する小学4年生の男子「アオヤマ」は、自らの住む町に突如大量発生したペンギンたちの出現の理由について、調査していく。「ウチダ」「ハマモト」「スズキ」らクラスメイトと調査を進めた「アオヤマ」は、ペンギンの謎が憧れの歯科医院のお姉さんと関係していることを突き止め、謎の解決のために奔走する。小学生の自由研究の延長で起きるSFチックな冒険や、小生意気な「アオヤマ」とそれをかわいがる「お姉さん」の微笑ましい関係性が面白いと話題になり、人気となった。
2018年にはスタジオコロリドの石田裕康監督によりアニメ映画化、屋乃啓人の作画で漫画化されている。アニメ映画は第22回ファンタジア国際映画祭今敏賞(長編部門)と、第42回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞した。興行収入5.4億円。

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ペンギン・ハイウェイ / Penguin Highway
9

かつて「アオヤマ君」であった大人の方へ

本や映画が好きな人なら「何回読んでも/観ても感動する」という作品の一つや二つあるのではないでしょうか。私にとってはこの作品がそうでした。

原作者は「夜は短し歩けよ乙女」「四畳半神話大系」「有頂天家族」など、アニメ化作品も多い森見登美彦先生。京都を舞台にした作品を多く書かれているのですが、今作は一味違う、郊外の新興住宅地に住む小学生を主人公としています。
早熟で少し生意気な小学四年生のアオヤマ君を主人公とし、彼の憧れる歯科助手の「お姉さん」、それと彼の友人が関わっていく一夏の冒険譚です。
原作の大ファンであったため、はじめアニメ映画化と聞いたときは、他の作品の原作ファン同様に嬉しい反面、不安がありました。しかし予告編で流れたコーラ缶がペンギンに変化していく映像を観た瞬間、それは期待に変わりました。原作では文字の表現で細かな描写で、読み手は非現実的な事象でもぼんやりと頭の中でイメージを描くことができます。そんなぼんやりとしたイメージが、見事にアニメーションとして表現されていたのです。登場人物のビジュアルや声も、賛否はあるかと思いますが、個人的にはイメージ通りで全く違和感はありませんでした。

なにより、私が最も好きな最後の場面を、見事に映像とモノローグで表してくれていました。冒頭でも述べましたが、原作は何度読んでも最後で泣いてしまいますが、映画でも映画館でこんなに泣いたのは初めてではないかというくらい、感動してしまいました。
アニメーション映画ですが子どもだけでなく、ぜひかつてアオヤマ君であった大人に見てほしいと思う作品です。