フルーツバスケット / フルバ / Fruits Basket

フルーツバスケットとは高屋奈月による少女漫画。1998年から2006年まで白泉社の「花とゆめ」にて連載。2001年にはテレビ東京でアニメ化され、更に2019年にもキャストを変えて再びアニメ化された。原作コミックは全23巻で完結済み。主人公は父親が病死、母親が事故死してしまい孤独となってしまった少女「本田透」。透はひょんなことから高校の同級生の「草摩由希」「草摩夾」と同居することになる。由希と夾は呪いによって女の子に抱き着かれると動物になっていしまうという特殊な体質だった。そんな透と由希、夾を中心としたギャグあり、恋愛あり、シリアスありの青春ストーリー。透は呪いに戸惑いつつも、次第に呪いを解く決意をする。物語前半はギャグ要素多め、後半に行くにつれてだんだん物語はシリアスになっていく。設定は現代の学園ものだが、登場人物が動物になってしまうなどファンタジー要素も含まれている。2009年と2022年の二度にわたり舞台化された。

yuki12momoのレビュー・評価・感想

レビューを書く
フルーツバスケット / フルバ / Fruits Basket
9

心に響く「絆」の物語

『フルーツバスケット』は、母親を事故で亡くした女子高校生・本田透が、十二支の物の怪憑きに縛られた草摩一族と交流していく中で本当の「絆」を問う物語です。何度読んでも発見があり、感動する作品です。

■この作品の3つの魅力
①人物描写が濃密であること
登場人物が多いにもかかわらず、それぞれの生い立ちや性格など設定が緻密に作り込まれています。そのため、誰の立場に立っても感情移入できます。

物の怪憑きの呪いがあるために、さまざまな過去と運命を抱えて生きる草摩家の人たち、家族を亡くすが明るさを失わない透と透を見守る友人たち―。
一人ひとりの言動や想いに理由があり、読めば必ず好きになるキャラクターに出会えます。
また、読む時の自分の気持ちや状況によって、共感できる人物が変わることもこの作品の魅力です。

②物語の展開の面白さ
1巻から伏線が張られていて、読み進めていくうちにちょっとした台詞や場面にも大きな意味があることに気付きます。
十二支や呪いという一見ファンタジックな設定から生じる境遇や苦悩のつなげ方がリアルで、物語構成の秀逸さを感じます。
また、ところどころギャグが盛り込まれてあり、シリアスな話に彩りを添えています。

③心に残る言葉が多くあること
「どんな思い出もちゃんとこの胸に抱いて信じていきたい いつかそれすらも超えて尊い記憶となるように」など印象的な言葉が多く出てきます。

うまくいかないことを親や家のせいにしていたこと、拒絶を恐れていたこと、悲しい気持ちと向き合うことなど、つらい記憶を持つ登場人物たちだからこそ、紡ぐ言葉が心に刺さるのでしょう。
悲しい時やつらい時、強くなりたい時に寄り添ってくれる言葉がきっと見つかります。

■まとめ
奇抜な設定とそれに翻弄される多くの登場人物を描いた『フルーツバスケット』。
時を経て自分も変わっていくことで、前に読んだ時には登場人物の気持ちや行動に理解できない部分があったとしても、再読して分かることもあります。その時、この作品の奥深さ複雑さ、人の心の難しさとおもしろさを感じます。何度読んでも色あせない作品です。