3月のライオン / March Comes in Like a Lion

『3月のライオン』とは、2007年14号から『ヤングアニマル』(白泉社)で連載された、羽海野チカによる青年漫画である。本作品は羽海野のデビュー第2作目となる。コミックスは16巻が刊行され、累計発行部数は300万部を突破した。
物語は主人公の桐山零(きりやまれい)が、辛く厳しい将棋の世界で生きていく様を描いている。
2010年に「第1回ブクログ大賞」でマンガ部門大賞し、2011年には「第4回マンガ大賞2011」と「第35回講談社漫画賞」マンガ大賞を受賞した。2014年には「第18回手塚治虫文化賞」でマンガ大賞を受賞し、2021年には「第24回文化庁メディア芸術祭賞」のマンガ部門で大賞を獲得した。
テレビアニメはNHK総合で第1シーズンは2016年10月から2017年3月まで、第2シーズンは2017年10月から2018年3月まで放送された。実写映画は前編が2017年3月18日、後編が同年4月22日に公開された。桐山零役を神木隆之介が好演した。

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3月のライオン / March Comes in Like a Lion
9

可愛さと厳しさと

『3月のライオン』は羽海野チカ原作のアニメ作品で、現在は第2期まで放映されている。
「漫画のほんわりとした絵が好き」という原作ファンも納得できる、可愛らしい柔らかな絵と実力派声優陣の気迫のこもった演技が楽しめる作品だ。

主人公の桐山零は15歳でプロ棋士となった高校生だ。零は両親を亡くしており、引き取られたプロ棋士の家では二人いる実の子よりも将棋の才能があったため、妬まれてしまう。その家を出て一人暮らしを始めた零はある日、明るく可愛い三姉妹と出会う。

棋士の話なので将棋の対戦シーンも出てくるのだが、将棋の知識がなくても楽しめるように工夫されている。その上、将棋の監修をプロ棋士の方が行っているので、将棋を指す人にも見ごたえ十分だろう。将棋を知っている人も知らない人も、これから知りたい人にもぜひお勧めしたい。
そして可愛らしい登場人物たちがそれぞれ抱える苦悩、プロ棋士という孤独な戦いを続ける者の心情を見事に描き切っている。厳しい世界だからこそ、この作品が魅せる“人の優しさ”がじんわり沁みる。
白黒はっきりと悪者を描かないのも魅力の一つだ。『3月のライオン』には、育て親であるプロ棋士の娘やその娘の不倫相手の棋士などがいるのだが、回を追うごとに彼らには彼らの事情があったり、一体どんな人間なのか掴みきれないように良い面も悪い面も描かれている。特に大人の視聴者には深い印象を与える登場人物だと思うので、ぜひダークな登場人物にも注目してほしい。